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22話 魔女のメイデー。(前編)

「……ね、ねえルーク……。侵略戦争の後に結成された2つの指定組織って……何だっけ……?」


「えっ……。う、うーん……。指定組織って"めっちゃ危険で迷惑なことをする"ってカンジのところだったっけ?ひとつは解放部隊ってところで……もうひとつは…………」


「ねえねえっ!もうひとつの組織ってWKKじゃないの〜?こっちは魔女が中心の組織だったような気がする!」


「あ、ありがとう……。メイデー……」


「いえいえ〜!あっ、あと言っとくと『侵略戦争の後』っていうよりかは、『戦争の後の教育改革の後』って言ったほうが良いかもね〜!」


「…………メイデーってもしかして結構勉強してたりするのか……?」


「……う〜ん、どーだろ!でも、伊達に図書委員をやってないと思ってるよ!私、それなりに勉強は出来るしっ!」


 ……。


 …………。


 ……なんだろう。教えてくれるのはありがたいのだが、イマイチ集中できない。


 クラスメイトで魔女のメイデーが突然目の前に現れて俺たちの向かいの席に座ってから十分ほど……いや、五分も経っていないのかもしれないが、なんか3人で一緒に勉強している流れになっている。


 ……いや、さっきみたいに分からないところを教えてくれるのはいいんだ。けどな……俺たちのことを『なんかお礼して!』と言いたそうな雰囲気を醸し出して変にニコニコして見つめてくるのはやめてくれっ!集中出来るものも出来ない。

 …………もともと、俺が思い出に浸ったりして脱線したのが始まりかもしれないけど……でも……。


 ……俺が蒔いた種だ。俺が、なんとかしなくちゃ……。


「……なあ、メイデーって図書委員なんだろ……?」


「……うんっ、そのとおりっ!ルグロリュー中等学校の2年、図書委員のメイデーちゃんだよっ〜!いやー懐かしいな〜、あれは学年が上がっていかにも『春っ!』ってカンジのあったかい日の……。いや、その前に私が生まれたテオレーマ暦1811年の話から──」


「…………そんな図書委員のメイデーに質問があるんだ。大切な……。……ごめんな、話遮って」


「…………んっ、別に大丈夫だよ〜?ってか、なになに〜!魔法書のある場所とか知りたいの〜?……まっ、それはないか〜!ルークにか──」


「……今、メイデーはテレポート・マジックを使ってここにいるだろ?……カウンターは無人だ。こっちに構ってていいのか……?貸し出しに来る人がいるかもしれないのに……ここにいていいのか?」


「……ん〜。……別に良いんじゃない?カウンターに人が居なければ『すいませーん』とかって私のことを呼ぶだろうし!」


「そ、そうか……」


 ……目の前の魔女・メイデーは『お前の目的は分かっている!』と言わんばかりのいたずらな微笑みを俺たちに向ける。

 混濁のない明るい赤の瞳で俺の心の中を見透かしているかのようだ。右手で頬杖をついており、伴って首を傾けているからか、純黒のへんてこりんな帽子もやや傾いている。

 また、左手の人差し指で深みのあるダークレッドの色をした髪をクルクルと回しており、"余裕さ"が感じられる。


「……ねえ、メイデーって本当に私たちがイチャイチャしてるとこを見たいの……?」


 突然、フレイヤがつぶやくように言う。


「うんっ、そうだよっ!……でも、なんで疑問に思ったの?私、どこか変だった?」


「ちょっとね……。…………わざとじゃないのかなって……」


「わざとって……いったいどういうこと?」


 横を見てみると、フレイヤは神妙な面持ちでメイデーと話す。メイデーもさっきまでの『余裕たっぷり!』という状態ではない。

 また、メイデーの赤い髪のほうを見ると、さっきとは逆の手である右手の指でクルクルと回わしており、さっきよりも髪を回す速度が速くなってどこか焦っている様子だ。

 ……それにしても、フレイヤの言う『わざと』というのはメイデーだけでなく俺も気になる。


「フレイヤ、わざとってどういうことだ……?メイデーは俺たちのイチャイチャしているところを見るためにここにいるんじゃ……?」


「ううん……たぶん違うよ」


「……そうなのか……?」


 独り言のようにボソッと言って右横と前を交互にキョロキョロと見ることしか出来ない俺を尻目に、2人は威嚇にも似た目つきで見合っている。

 

 ……正直、怖い。


「メイデーは……逆に私たちがイチャイチャするところを見たくないんじゃないかな。悪くいえば『嫌がらせ』のためにここにいると思うの」


 …………えっ、そうなの……?あんなにニコニコして俺たちと接してくれたのに……?

 『2人のイチャイチャしてるところを見たい』っていうのは嘘だったのか……?


「……私は──」


 さっきまで教えてくれた明るい姿のメイデーはもうどこにもない。メイデーが再び口を開く一瞬の間さえも永遠に思える。

 真剣で、でもどこか不安定で危うい姿だ。

 答えがどっちにせよ、今のメイデーをこんなふうにしてしまったのは紛れも無い俺の責任。波乱となっているテスト勉強会はまだ始まったばかりで、続いていく。

後編に続きます。

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