17話 アドバイス。
「ア、アドバイス……?」
「ええ……。フレイヤが悩んでいるみたいだからの力になりたくって。それに……」
「で、でもコレは私の問題だから……。ひとりでやらなくちゃ……」
昨日の夜に、『明日は私が学校に持って行くお弁当作るからっ!』と見栄を切って言ったのは私だし、キッチンおよびシンク、コンロをここまでの惨状にしたのも紛れもない私のせいだ。
ママがいくら私の力になりたい、アドバイスをしたいと言ってもそこに頼るのはなにか違う気がする。
「心配かけてごめんねっ!……なんとかするか──」
「フレイヤ」
話を遮られ、名前を呼ばれて振り向くと、そこにはいつもの朗らかで優しい雰囲気のママの姿はなかった。
代わりにあったのは、ちょっと圧があって凜とした表情をしたママの姿。いつ見てもちょっと怖くなって、体が反射的にビクッとするものだけど……でも、この表情と様子の時には……
私の中のなにかを変えてくれる──。
「『なんとかする』……。そうは言っても、もとの状態に戻すほうが大変だったりするの。それに、フレイヤってこうしてお弁当を作ったり、料理をしたあとの片付けってしたことがないでしょう?」
「うん……。いつもママがやってくれるから……」
「やり方が分からないのにやっても大変だし、同じ失敗をしそうで……。だから、こうしてママ流のアドバイスと手伝いをしようと思って……」
「そうだけど……」
「今、フレイヤは『私の起こしたことだから……』って思ってるのかもしれないね。ママに迷惑はかけられないって。……でもね、こういうことを繰り返さないためにもアドバイスや手伝いを求めることは大切だと思うな」
「ママ……」
「それに、アドバイスや手伝いを求めることは悪いことじゃないの。そうやって人は学んで成長していくのだから……。……ママだってそうよ?」
「ママも……?」
「うん。ひとり暮らしを始めたときのことを思い出すなあ……。」
「ひとり暮らしって……パパと暮らす前の話?」
「そうよ〜。初めは魔法で何とかなるって思ってたんだけど、そんな家事に特化した魔法もなくて、料理や洗濯、掃除……全部失敗続きで……。まあ、家でも手伝いをそんなしてこなかったから、当たり前のことではあったんだけど……」
「ママにもそんなことが……」
「……でも、その後に私はお父さんやお母さんにアドバイスを貰ったり、時には手伝ってもらったり……助けてもらってここまでやってきたの」
……意外だ。
しっかり者のママにそんな過去があったなんて。ずっと難なくテキパキとこなしてると思ってた。
圧なんてものはもうない。昔の話をするママはどこか懐かしげで……。
いつもの朗らかで優しい雰囲気に戻って話すママを見て、つい私も顔が緩む。
「……つまり私が言いたいのは、初めてやることで失敗しても仕方ない。そのことで、アドバイスや手伝いを求めるのは悪いことじゃない。むしろ、成長するためには必要なこと。あんまり自分を責めなくていい。あと、どんどん頼ってほしい。……こんなところかなっ!」
「……頼っていいの……?」
「そんなの当たり前でしょ〜。なんたって、フレイヤはママとパパの子なんだから!」
これらのママから紡がれる言葉で、どこか救われた気がする。
そんな気持ちからか、涙が一粒、二粒とほっぺを伝う感触がする。
「フレイヤに涙は似合わないよ」
そう言って、ママはテーブルの上にあったティッシュ箱から1枚ティッシュを取り出して、涙が伝った私のほっぺを拭く。
ティッシュの上からではあるが、ママの手の温かさがほっぺに伝わり、とても安心する。
「もうちょっとしてから、頑張っていこう!」
「うん……!」
そう答える私に、ママは微笑み返した。
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