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16話 お弁当づくり。

今回の章はルークにデレている魔女、フレイヤ視点のお話です。

「お弁当って……作るの難しいよぉ……!」


 思わずそう叫んだとき、すぐ近くにあるカーテンから弱々しい光が差し込まれ始めていた。

 そして私は今、ひとりで目の前のキッチンの惨状とにらめっこをしている。

 キッチンの作業台の上には見開きの雑誌やまな板、ボウルなどが乱雑に置かれており、シンクの中にも卵の殻や野菜の切れ端が散らかっており、外にも水滴がいたるところに飛び散っている。

 身につけているエプロンにも水滴がついて、シミになりかけている。


 ……我ながら、ずいぶん汚したなって思う。

 ママだったらこんなには汚さないし、もっと手際よくパパっとやれるはずだ。いつも起きたときには、朝ごはんが用意されていて、お昼に学校で食べるお弁当も用意されていて、そして、トイレはいつもピカピカで……。

 仕事をしているママでもこんなにこなせるのだから、私でも出来ると思っていた。

 …………でも、実際にはお弁当のおかずの一品も満足に作れないなんて……。


 世の中には、冷凍食品というとても便利な食べ物もある。

 でも、せっかくなら手作りのお弁当でルークの胃袋をつかんで、あわよくば私のことを好きになってもらって……。でも、こんな有様じゃあ…………。


 情けなくて悔しくて……目から熱いものが流れてくるのを感じる。

 ……そして、手作りのお弁当を作るきっかけになったキッチンの作業台の上にある見開きの雑誌を眺めながら、昨日の昼にあった出来事を思い出していた。


 ────────


「ねえねえ……これ見て!」


 昼休みのこと。

 お弁当を食べ終えて、アリアの机があるところに集まってサリエラと3人でおしゃべりをしているときに、私はとある雑誌を机の上に置いた。

 その雑誌の表紙には、私よりもキレイでメイクをした同い年くらいの女の子2人が、お互いにピースのポーズをとって笑っている。


「…………『キュンキュン♡』……?」


「……この雑誌がどうかしたの~?」


「いやー、このキュンキュン♡でいいものを見てさー!」


「『いいもの』って〜?」


「ほらっ、これこれ!」


 そう言って、私は一回机の上に置いた雑誌『キュンキュン♡』を手にとって、興味を持ったページを開いて、またアリアの机に置く。


「…………『コレで気になるカレのお腹もココロもわしづかみ♡』……?」


「……フレイヤってこんな雰囲気の雑誌好きなんだ〜」


「んっ、意外だった?」


「イヤ〜、結構想像どおりってカンジ〜」


「…………これがどうしたの?」


「私がこれに載ってることを実践すれば……ルークのお腹とココロを鷲掴み……。つまりは……私のことを好きになるってことだよねー!?」


「…………お腹はともかく……」


「すでにルークはフレイヤのことをス……」


「ねっねっ、これどう思うー!」


「……人の話は最後まで聞くべきだと思うな〜」


「…………うん、ルークは()()()フレイヤのことを好きになると思う」


「だよねだよねー!!」


 ────────


 ……このあと、トイレから戻ってきたルークに『明日、手作りお弁当を作ってくるから楽しみにしてて!』と言い、それに対してルークも『楽しみ!』的なことをちょっと顔を赤くして言っていた。


 ルークも楽しみにしてくれているし……私だってルークに満足してもらいたい。

 でも現状は……。


 私には無理だったのかな。お弁当を作ることも、ルークを好きにさせることも……。

 自分の至らなさがとても悔しい。……そんなことを思っていると……。


「……あらあら、フレイヤ。……どうしたの、そんな……」


 ……ママだ。料理をしているときの物音か、それともさっきの声で起きてしまったのか。

 ……いや、もともとこの時間に起きているのか。……なんにせよ、こんな姿は見られたくなかった。


「……料理をしていたのね。だからこんなキッチンが……。…………ねえ、ちょっとママがアドバイスしてあげようか?」


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