14話 特別な場所。
私の選んだ特別な場所──。
それは、学校の裏にある山だ。もっと細かく言うのならば、その山の山頂から見る夕日を見られる場所のこと。
私……いや、私たちにとっての思い出の場所だ。
ここは、フレイヤとアリアの3人で初めてテレポートした場所。紆余曲折あって偶然たどり着いた場所。
そこから見た、大きくてまん丸としたあの赤い夕日は永遠に忘れないと思う。
そんな場所に、私はフレイヤとルークをテレポートさせた。あの初々しくて好き合っている2人にとっては、とてもロマンチックな場所だと思う。
……私にとっては、フレイヤとアリアの仲が深まった特別な場所であるが、フレイヤにとってはルークとの思い出の場所になってしまうのだろうか。
──私たちとの思い出を上書きして。
…………でも、私はそれでもいい。だいたい、この関係がずっと変わらないなんてありえないことなのだ。
気持ちも当然変わってくる。……いつか必ず起こることだった。それが今だったってだけだ。
……ちょっぴり寂しいことだけれども、それでもやっぱり私は2人の恋路を応援したい。だから、この場所を選んだんだ。
2人がテレポートをしてから早20分ほど。
気持ちにケリをつけるまでちょっと時間がかかってしまったが、私もアリアと一緒に、2人がいる場所にテレポートしてきた。
ここで、フレイヤとルークの2人をもとの校舎裏にテレポートさせる役割がある。私たちもテレポートでもとの場所に戻ることを考えると、この魔法を使うのはあと2回。
フレイヤには大丈夫だと言ったが……まあ、頑張るしかない。……明日、動けるかなあ。
そんなこんなで、私たちは今、フレイヤとルークの2人の近くにある木の後ろに隠れている。
この木、前来たときにはまだそんなに大きくなっていなかった気がするのに……。不思議なものだ。
耳をすませば、風が木の葉を揺らす音やいろんな虫の鳴き声が聞こえてくる。
……もちろん、2人の話し声も例外ではない。
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「……いやー、残り10分ってところか。案外短いもんだなー」
「こんなにじっくり話したのって初めてじゃない?……楽しかった……?」
「ああ……楽しかったぞ……。思い返して見ればいろんな話をしたなあ。お互いの趣味のことや好きなもの。嫌いなもののことだったり……。逆に、今まで話してこなかったことを不思議に思ったな」
「確かに!……こうやってお互いのことを知っていくんだね……」
「いやーしかし、フレイヤの好きなものが"ルーク"って……ド直球だな……。……うれしいけど」
「まあ、事実だもんねー!私も、"フレイヤ"がルークのイチバン好きなものになるように頑張るね!」
「そんなこと言っても俺はとっくに……」
「んっ、なんか言ったー?」
「な、な、なんでもねえよっ」
「……まあ、いいや。ムリに詮索するのはシュミじゃないし……って、ルーク顔赤くなってるー!」
「……いきなり、恥ずかしくなっちゃってな」
「いきなり……なんかあったの?この一瞬で……。まるで夕日と同じ……いや、それ以上に赤いかもね!」
「そ、そうか……。…………し、しっかし、夕日と言えば、サリエラってこんな場所知ってたんだな。こんなに夕日がキレイに見える場所……学校の近くにこんなところがあるなんて思わなかった」
「……ここはね、私の思い出の場所なの。サリエラとアリアの3人の……」
「へぇ……思い出の場所ねえ……」
「……うん、1年くらい前だったかな。2人と友達になって、初めて一緒にテレポートした場所がこの山だったの。その時はちょっとテレポートに失敗しちゃって……」
「失敗って……どう失敗したんだ……?」
「もともと、私たちは学校の宿題の材料を見つけるためにこの山にワープしてきたんだけど、とんでもなく暗い場所にテレポートしちゃったんだよね。もともと、山頂の予定のはずだったんだけどねー」
「山頂っていうと……この近くか。あの一本のデカい杉がある……」
「そうそう、そこそこ!でも、そこではない別の場所にテレポートしてしまった。まあ、もう一回テレポートすればいい話ではあったんだけど……"反動"が来ちゃってこれ以上魔法が使えない状態になっちゃったんだよね~」
「それで……無事だったのか……?」
「やだなールークったら。無事じゃなかったらここにいないでしょっ!……あのあとはひたすら山頂に向かって歩いていったよ。宿題の期限は翌日だったし……。あの時は大変だったんだぞー?足場が悪いところがあって転びそうになったり……」
「それで、その山頂に行く途中で来たのがここの……」
「うんっ、その通り!陽が落ちかけているときにここに来たの。大きくて、まん丸で、赤くって……。いつも見ている夕日のはずだけど、神秘的で忘れられなくって……」
「それで、思い出に残ってるってワケか……」
「だから、ルークと今日この場所に来ることが出来て良かったと思ってる。ルークとこの場所を共有出来てうれしいよ」
「俺もうれしいが……でも、良かったのか?そんな場所を俺に共有して……。もし、ここに来たことでサリエラとアリアの2人との思い出が上書きされるようなことがあったら……申し訳なくて……」
「…………?なんで上書きされるの……?」
「……いや、それは……」
「別に思い出は1つにまとまったりしないよっ!サリエラとアリアと3人で見た夕日の思い出と、ルークと一緒に夕日を見た思い出は別のもの。どっちもかけがえのないもので、2つの思い出が一緒になったり上書きされるようなことはないよ」
「……それならいいんだが……」
「ありがとうねっ、心配してくれて!……うれしいよ。2人のことも気にかけてくれて……」
「フレイヤの友達なんだ。……当たり前じゃないか」
「私はルークのそういうところにも惹かれたのかもね。…………えいっ!」
「……って、フレイヤ!?ど、どうした、いきなり……。体をくっつけて、手は……これは恋人つな……」
「ふふっ、いきなりでびっくりした?……ルークの手、あったかいな。ほっぺと耳はすっかり赤くなっちゃて……カワイイ」
「そういうフレイヤだって、ほっぺたと耳、赤いぞ。手もちょっと赤くて……俺と似たような感じだな。……俺とルーク、どっちのほうが赤いんだろうな、今」
「……私のほうかもね。今、心臓がドクドクしているのが聞こえるもん。………こうやって、思い出っていうのは創られていくんだね……」
「……なあ、もうすぐ約束の時間でサリエラとアリアがここにテレポートしてくるだろ?……帰る前に、4人でこの夕日を見ないか……?」
「……うん。4人でこの夕日を見る……絶対に忘れられない思い出になるねっ!」




