13話 テレポート・マジック!(後編)
続き
「…………サリエラなら大丈夫」
ここにきて、アリアが初めて口を開く。みんなの集中がアリアに集まる。
その横顔はいつになく凛としていて頼もしい。
……流石は私たちの友達。この流れを私がつなげていかなくちゃ。
「うんうん、たぶんダイジョーブ!なんたって私は普段から体力づくりしてるし〜」
「そ、そうなの……?は、初耳……。でも昔は……」
「初めて言ったからね〜。それにフレイヤ、昔は昔だよ〜?」
……そう、昔はこの魔法の"反動"で疲れ果てることが多々あった。
"反動"が大きいことも、それによって私に起こることもフレイヤとアリアは知っている。そのため、この魔法は近い距離で使うことが多かったのだが……。
私はこの魔法でルークとフレイヤの2人を遠い場所に飛ばそうと考えている。
それは、薄々フレイヤも気づいているだろう。だから、こうして難色を示しているわけだ。
…………でも、私はどうしてもテレポート・マジックを使いたい。どうにかして安心させたいが……。
「……あんま心配しなくていいよ〜。だから、大船に乗ったつもりで任しといてよ〜。」
私は胸のあたりをドンッと叩いて言う。……この姿はみんなにはどう見えているのだろうか。
頼もしく見えるのか、はたまた虚勢を張っているように見えるのか……。前者だとありがたい。
「うーん、まあいいんじゃないか?俺たちを応援してくれるっていうなら、ありがたくそのテレポート・マジックをかけてもらっても!」
「…………何かあっても私がついてるから……。ルークとフレイヤは心配しなくていい」
「……みんながいいって言うなら……。……サリエラ、無理はしないでね……?」
「……任しといて〜。じゃあ早速魔法をかけていこうと思うけ……」
「あっ!1つ質問……」
ルークがいきなり大声をあげて、みんながちょっとビクッとする。
そして、ルークと目が合った。険しい目つきではない。
「なにかな〜ルーク。いきなり大声あげて……」
「おい、帰りってどうなるんだ……?テレポート・マジックってのはたぶん行ったっきりだろ?自力で帰らなくちゃいけないのか……?」
……いけない。そのことについて言い忘れていた。フレイヤやアリアは私がこの魔法を使うときの勝手が分かってるけど、ルークは知らないんだった。
「もちろん行ったっきりにはならないよ〜。まずは2人を送って、時間になったら私たちも移動する。そこでまた2人をもとの場所に移動させて、最後に私たちが戻るってカンジかな〜。ちょっと長いね〜」
「私たちって……アリアも一緒なのか?」
「…………私がいたらまずい?」
「いや……まずいってわけじゃないんだが、魔法を使うときの負担にならないのかなって……」
「うーん。……まあ、フレイヤも含めて大体はいつも一緒に移動してきたし、みんな一心同体みたいなカンジだから……ねえ……?」
「…………まあ、そういうこと。だから心配しなくていい」
「コホン……。それじゃあ改めて……フレイヤとルーク、2人で手繋いで!」
『えっ……!』
相変わらず、2人は息ぴったりだ。
まあ、自分も突拍子のないことを言っている自覚はある。コレも魔法のためもあるが、2人の初々しいところをみたい気持ちもちょっとはあったり……。
「だーかーらーっ、手繋いで!そのほうが魔法をかけるときにちょっと楽になるの!」
「サリエラ……それも初耳。もしかしてだけど……」
「あーあーっ、最近分かったんだよね~。うんっ、本当だよ〜。…………たぶん」
「最後になんか聞こえたような気がするけど………。ルーク、いいよね……?」
「えっ……あ、ああ……もちろんいいぞ……!」
想像どおりの反応だ。……いや、想像以上かも、これは。
手に触れる前からこんなに2人ともデレデレでモジモジしているとは……。
「…………2人とも、もしかして手繋いだことないの?」
「う、うん……」
「じゃあコレが初めてになるのか〜。……めでたいね!フレイヤとルーク、どっちから手を……」
言い終わる瞬間だった。
ルークの方から、フレイヤの手を握った。2人の手はほんのりと赤くなってきているように見える。ほっぺや耳は言うまでもなく赤い。
2人とも照れ隠しからかそっぽ向いちゃって……この初々しい光景に、私は慣れるものなのだろうか。
私も照れてのか体中がちょっと熱く、また、何か込み上げてくる感情を覚える。
「ほ、ほ、ほらこれでいいのか……?」
「……うん、バッチリ〜!」
私の見たいものも見れたし……準備は万全だ。失敗するわけにはいかない。
私のためにも、フレイヤやアリア、ルークのためにも……。
……。
……。
「サ、サリエラ……?……本当に大丈夫なの……?」
「なんか考え事をしてたみたいだが……。大丈夫か?」
「もうっ!2人とも同じこと言っちゃって〜。大丈夫だよ〜。この魔法は私の得意なものだから〜!」
いけない、いけない。ちょっと考え込んでしまった。気を取り直して……。
「……じゃあいくよ〜。今から2人が移動するのは私が選んだ特別な場所。2人の仲がもっと深まること間違いなし!迎えにいくのは30分後 ……せーのぉ……」
杖を振りかぶってありったけの力を、そして想いを込める。
『転移の魔法──テレポート・マジック!』
あたりが一瞬青白く輝く。髪が逆立つような、圧がかかるような強い感覚も同時に押し寄せる。
……やっぱり、複数の人を遠くにテレポートさせるのはとても疲れるな。
そして、この場にフレイヤとルークの姿はどこにもない。つまりは……。
「…………おつかれさま」
アリアの優しい声が疲れている私を包み込む。そんな感覚がした。
────────
「…………2人をどこにテレポートさせたの?」
「私が選んだ特別な場所だよ〜。ちょっと前にも言った気がするけどな〜」
「…………本当にそこにテレポートさせた?別のところにテレポートさせてない……?」
「……なんでそんなこと思うのかな〜」
「…………ただの勘。間違ってたらごめ……」
「……いや、半分当たりってカンジかな〜。流石はアリアだね〜。初めはメチャクチャなところに飛ばそうかとも思ってたんだけど……。2人を……特にルークを試す意味でもね〜」
「…………なんでそんなことを……」
「ちゃんとルークが魔女であるフレイヤのことを守れるかを確かめたかったんだよね~。私たちは2人のことを応援してるケド……世の中ではこの2人の関係を好ましく思わない奴も多く存在する。そんな奴らからフレイヤを守りきれるか……確かめたくって」
「…………それだけ?」
「………………自分では認めたくないけど……もしかしたら2人への羨ましい気持ちや寂しい気持ち、妬む気持ちがあったのかもしれない」
「…………もうひとつ……半分不正解な理由はなに?」
「結局は私の選んだ特別な場所にテレポートさせたってこと。やっぱり、私は2人を応援したいと思ってたんだろうね。どんな感情が渦巻いてもそこだけは変わらなかった。あんなに初々しくて好き合ってる人を見たら、メチャクチャなところへテレポートさせるなんて、やっぱりそんなことはできなかった。……今は、2人とも学校の裏の山で夕日でも見てるんじゃないかな〜」
「…………別に今までと変わらない。ルークが来たことでこの関係に亀裂が入るわけじゃない。……大丈夫。フレイヤもルークも、私だっていなくならないから……」
「どうだろうね〜。……でも、ありがとう。…………ちょっと楽になったよ」
「…………どういたしまして」




