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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第3章 砂漠の鉱山

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第67話 メイファという人物

―――ヨナ 視点―――


 私達は地下に続く階段を降りていきました。

 そこに続く通路は真っ暗でほとんど何も見えない感じですが、しばらく降りていくと一番下に辿り着き、その前には分厚そうな金属の扉がありました。


 そして、私がその扉をノックしようと手を近づけるとその前に扉の前から光りが飛び出し、そこにメイファさんらしき人物の顔が浮かび上がりました。


「親父、急に何の用だ......ってあれ? 違った。う~ん、どちら様?」


「私達はこの場所にやってきた旅の者です。

 実はメイファさんに折り入って頼みごとがあります」


「頼み事か~。まぁ、親父がここに通すってことぐらいだから信用できる人物は確かなんだろうな。

 だったら、失礼な対応も出来ないか。んじゃ、入って来てくれ」


 そう言うと、突然メイファさんを映していた光が消えるとともに目の前の扉が左右に開いていきます。


 すると、その奥には何やら二メートル程の球体状の魔導具らしきものの前で裸足で胡坐をかきながら、別の魔道具を作っているローツインテールのメイファさんがいました。


 地下というには広々とした空間で、その左右には山積みになったいくつもの魔道具や武器があります。


「散らかってて悪いな。悪いが上がる時は靴を脱いでくれ」


「はい、わかりました。お邪魔します」


 言われた通り靴を脱いでいきます。

 すぐそばには散らかったメイファさんの靴があったのでついでに並び直しておきました。


 昔の鬼人国でも建物で靴を脱ぐ文化があったんですが、その時に靴が揃ってないと気になるんですよね。


 私達はメイファさんの前で座ると自己紹介しました。


「私達は旅の者でヨナ、こちらの女性がミクモさんで、この子がアイちゃんです」


「よろしゅう」


「アイなの!」


「親父からすでに聞いてると思うけど、改めて自己紹介するとアタイがメイファだ」


 ふ~む、街の人達からの情報とロゴフさんからのミファさんに対する情報ですでに大きな認識の違いがありましたが、実際に会ってみると思ったより元気で可愛らしい子のような印象に受けます。


「にしても、同じ女なのにその身長は羨ましいな~。

 アタイは種族柄いくら頑張っても大きくならないのに」


「ふふっ、女の魅力はそんなんで決まるものちゃうさかい安心したらええのに。

 確かに、人にとって好みはあるかもしれへんけど、それねじ伏せる魅力を出したらええだけやで」


「そうですよ。それに好きになってくれる人は身長は気にしないと思いますよ」


「まさか会って数分で慰められるとは思ってなかった。

 ま、そもそもこの話題を出したのがアタイなんだけど」


 すると、キョロキョロと周りに置いてあるメイファさんの作品が気になっていることにメイファさんが気付くとアイちゃんに声をかけていきます。


「気になるものあったら貰ってって良いぞ。どうせここにあるほとんどが試作品かガラクタだしな」


「他の職人さん達は武器しか作ってなかったのに、どうしてメイファお姉ちゃんは魔道具も作ってるの?」


「メイファお姉ちゃん......!」


 メイファさんはアイちゃんの自然なお姉ちゃん呼びにだいぶ強烈な一撃を貰ったようですね。

 わかります。アイちゃんはただ可愛い。それだけのことです。


「すまない、基本男しかいないから感動に浸っちまった。

 で、魔道具を作ってるのは完全に趣味だな。

 アタイは<錬金術師>でな、それにもともと色んなものを作るのが好きでそれが武器という範疇に収まらなかっただけさ」


「ほな、後ろの魔道具も一人で作ったってこと?」


「あぁ、これはだいぶ時間かけて念入りに作ったもんだ。

 これは周囲に魔力の波動を流して、それによって反射したものを計測できる魔導具なんだ。

 というのも、これには魔力結晶を組み込んだ板にいくつもんの線を繋いで―――」


 そこから熱が入ったようにその魔道具の説明を始めていくメイファさん。

 すみません、専門用語らしきものが多くてあまり理解できてません。

 しかし、わかるところで話題を修正していきましょう......序盤だけですが。


「それはなんだか地図を作る時に役立ちそうですね」


「そうだな。その他にも魔物の位置とか......」


 その時、メイファさんの顔が一瞬暗くなりました。

 しかし、すぐに気を取り直したように言葉を続けていきます。


「ま、とにかく色んなものが測れんだ。

 とはいえ、これの最終目標は持ち運びできるほどの小型化だから、現状これも試作品としか言えないな」


「それじゃあ、アレは完成品なの?」


 そう言ってアイちゃんが指さす方向には他の魔道具の山とは隔離されてまとめられた魔道具が箱の中に置いてあります。


 見えている魔道具の中には中心の球体から棒が伸びてその棒が隙間を開けて一つの外枠に繋がるような特殊な形をしているものも見受けられました。


「違うよ。アレは修理するもんだ。危険だから触れないようにな」


「わかったなの!」


「くっ、可愛い! こんな妹が欲しい!」


 やはりアイちゃんは魔性の子みたいですね。

 どんな人にも兄性や姉性を感じさせてしまうあたり。

 これが素であるから尚更恐ろしい。けれど、よし。


 すると、メイファさんは「んじゃ、そろそろ」と呟くと私達に本題を尋ねてきました。


「あんた達の用はいったいどんなんだい? 内容によっては引き受けなくもない」


「そうですね。メイファさんがこれだけ魔道具政策に長けているのなら砂嵐をどうにか出来る魔道具を作れませんか?」


「砂嵐......?」


 私の言葉にメイファさんは一瞬ピクっと反応させると答えてくれました。


「あぁ、外で鉱山に向かう道でたくさん発生しているあれね。

 さすがにアタイの魔道具でも砂嵐はどうにもならないかな」


「そうですか......」


 まぁ、これは想定していた可能性の一つなので、切り替えて別の安全策を考えていきましょうか。

 すると、今度はメイファさんが私達に向けて質問してきました。


「にしても、鉱山()()にしかないその砂嵐がどうして気になってんだ?」


 「だけ」? これは少し引っかかりますね。

 というのも、事前に集めてきた情報ではどの職人さん達も砂嵐が鉱山に続く道にだけあるとは言っていませんでした。


 まぁ、メイファさんが私達と同じように砂漠を調査した上でそういう言葉を発してる可能性もありますが。


「私達は困ってる人を放っておけない性分でして。

 加えて、ここで良い武器を鋳造してもらうにも鉱石が必要とのことですので、困りごとを解決できれば互いに利があると思いまして手伝おうかと」


「なるほどな。確かに、鉱石が枯渇してることに関しちゃアタイ達職人にとっちゃ死活問題だろうな。

 だが、それは言っちゃ悪いがよそ者に心配されることじゃないな。

 手伝ってくれることはありがたいが、これはアタイ達ドワルゴフの民が解決すべき問題だ」


「そうですか......」


「アタイ達を本気で助けてくれようとしてるのは見てわかるよ。

 そう思ってくれてるだけで感謝してる。

 だけど、大丈夫! なんとかなるさ!

 きっとそのうちもっと安全な鉱山が見つかるだろうし!」


「わかりました。ですが、私達はもう少しこの場所に滞在する予定ですので、もし手伝って欲しいことがありましたら気兼ねなくお声掛けください」


「ありがと。んじゃ、何かあったら頼らせてもらうわ」


 そして、私達は扉を出ると階段を上がっていきます。

 その時、ミクモさんが話しかけてきました。


「何やらよろしゅうあらへん雰囲気がするわね」


「そうですね。ですが、何か悪いことをしているという感じではありませんでした」


「アイもそう思うの! 悪いこと考えてる時の嫌な気配を感じなかったの!

 それどころか悲しい雰囲気を感じたの......」


「悲しい雰囲気、ですか」


「そういった感性はアイちゃんの方敏感かもしれへんね。

 ともかく、この件の解決はもう少し別の情報か証拠があらへんと厳しいかも」


「そうですね。この続きはウェンリさん達の意見を聞いてからにしましょう」


 階段から上がるとそこには酒瓶に口をつけて飲んでいるロゴフさんの姿がありました。

 アイちゃんは初日の酒場以来お酒臭いニオイに敏感になったのか私の後ろに隠れていきます。


「娘の様子はどうだった?」


 最初に聞いてくるのが娘さんの様態ですか......やはり心配なのでしょうね。


「元の様子を知りませんので比較はできませんが、私達の見解からすれば十分に元気な様子でした。今も精力的に色々作ってる様子です」


「そうか。そいつは良かった」


 ロゴフさんは安心したように笑みを浮かべていくと酒瓶に口をつけて飲んでいきます。

 そして、再び質問してきました。


「それで、お前さん達の用件は聞いてくれたのか?」


「残念ながら。砂嵐に関してはメイファさんの魔道具であってしても解決できなさそうです」


「そうか。メイファならもしかしたらと思ったが......仕方ない、俺もそろそろ覚悟を決めるか」


 ロゴフさんは神妙な面持ちでそう呟きました。そのことにミクモさんが尋ねていきます。


「なにやら良うない雰囲気がするんやけど。良かったら何するか聞いてもええんやろか?」


「何単純なことさ。第三次救護出動隊を組むだけさ」


「救護出動隊? ということは、鉱山にいる人達を助けにいくということですか?」


「助ける......まぁ、助けるだな。第二次が戻って来なくなってからすぐに第三次を組もうとしたときに、それを阻むかのように現れた砂嵐によって今の今まで伸びちまったが、もうこれ以上は待ってられないだろう」


「しかし、そのままでは前と同じ結果になってしまうのでは?」


「かもしれないし、そうならないかもしれない。

 それにそうじゃなくても俺達はどの道その鉱山へ鉱石を調達しないといけないんだ。

 別に鉱山があれば別だったんだがな......」


 その顔は元気があまりないように見えます。

 どうやらこの問題はそう時間をかけてられないみたいですね......ん? アイちゃん?


「どうしたの?」


 アイちゃんの様子を見てみるとなぜか先ほど通って来た階段がある地面を見つめています。

 そして、アイちゃんは私の顔を見ると答えました。


「なんでもないの」


 しかし、どこか微妙に様子が変な感じにミクモさんへと目を移してみると何やら意味深なウインクをされました。ん? どういうことでしょうか?

読んでくださりありがとうございます(*'▽')

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