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ヴィランレコード~落ちこぼれ魔法陣術士が神をも超えるまで~  作者: 夜月紅輝
第5章 旧友との再会

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第130話 変装

 僕達がヨナ救出のために準備に取り掛かること翌日、ネルドフ大迷宮には僕と蓮だけがいた。

 少数の方が動きやすいというのと、康太達にはアリバイ作りのために行動してもらうということで。


 それにこの中は洞窟だ。

 未知の洞窟の案内は方向感覚に優れている魔物を使うべきだろう。

 というわけで、蓮の小蜘蛛が絶賛大活躍中。


「ヨナは無事なのか?」


 蓮があまり心配していない声色ながら尋ねてくる。

 深く心配していないのは恐らくヨナという人物を信用しているのと僕が常に確認してるとわかってるからなのだろう。


「うん。常に<念話>のチャンネル繋いでるから。

 前は地下と地上で魔力伝達率が悪すぎてダメだったけど、さすがに同じ洞窟内ならいけるっぽい。

 ただ、それでもだいぶノイズ混じりだけど」


「つまりそれがクリアに聞こえてきたら近づいてるって合図か」


「そう思ってくれていいと思う」


 話しながら洞窟内を失踪していく。

 蓮の育てた小蜘蛛が強すぎるせいか目の前で接触する魔物達が一瞬にしてバラバラに。

 う~ん、快適! 余計な戦闘を挟まなくていいってのは楽だね。


 そして、あっという間に下の階層へ。

 当然階層ごとに転移魔法陣を設置しているけど、多すぎて管理しきれるのだろうか。ま、帰る心配は後か。


「それじゃ、もう少しペース上げるよ」


「あぁ、わかった」


****


―――花街薫 視点―――


「二人はどこまで行ったんだろ?」


「さぁ、前回行った場所が十階層でそこに移動用の魔法陣設置したから、そこから移動を開始して数分......今は二十階層ぐらいじゃない?」


「そこまで早くないと思うよ......さすがに中は迷路だし」


 僕が康太君と話していればネルドフ大迷宮の入り口に立っている教師が僕達の立ち入り許可証と()()()()ことを確認して「気をつけろよ」と通してくれた。


 僕達がネルドフ大迷宮に入って少しすると律君と蓮君もといメイファちゃんとミクモさんがホッと胸をなでおろしていく。さすがに緊張しすぎじゃない?


「大丈夫だって。そうそうバレないよ」


「そ、そうは言ってもよ......」


「どないな男性かは理解してるけど、そやさかいといってちゃんと振舞えるかは別なんよ」


 少し声の高い男勝りの口調と京都弁のような癖の強い口調をしている二人の姿は現在傍から見れば律君はメイファちゃんに、蓮君はミクモさんに見えている。


 二人は律君の<幻惑纏い>によって他人から姿を誤魔化しているのだ。

 そうじゃないと僕達がこうして迷宮に入れないわけだし。


 二人にはこれから僕達が無事に迷宮を出て行くまでの間、律君役と蓮君役として演技してもらうことになっている。


 それは律君と蓮君のアリバイ作りであり、ヨナがいない今迷宮に入れない二人の唯一の入る方法なんだ。

 それに迷宮に入れなきゃいざって時にあの二人の助けにも入れないしね。


 とはいえ、妙にぎこちなさがあって心配だな~。

 メイファはドワーフ特有の男勝り口調があったけど、ミクモさんはぶっちゃけ癖強いし。


 いくら律君に<変声>の魔法陣をかけてくれてるからとはいえ、それで変わってるのはあくまで声色であって口調は本人が意識しないと出し......そもそもミクモさんって標準語言えるのかな?


 そんな心配をしていると僕の代わりに康太君がメイファちゃんとミクモさんにアドバイスを送っていく。


「そんなに心配ならザックリ意識しとけばいいことを教えておくよ。

 まず、律だけどアイツは基本人前だと丁寧語で低姿勢だから、初対面と教師陣には基本丁寧な口調で言っておけばいい。

 後、じゃっかん卑屈になるのもポイント高め。それからメイファの場合は魔法じゃなくて魔道具を使うけど、それについての説明は“道具に魔法陣を刻んで魔道具にして使ってる”とか言っておけばいい」


「なるほど.....」


 まぁ、間違ってはないんだけど......なんだろう、このあまりにも特徴的の無い地味さ。

 いや、これが普通なんだけど康太君からそう見えてるのなら......うん、華がないんだなぁ。

 頭おかしいレベルで魔法鍛えてるのに。


「後はもし魔法を使いたいなら陣魔符を使えばいいと思うよ。確か渡されてるでしょ?」


「あぁ、それなら懐に......あった! なになに<火球>に<水球>、<麻痺>、<突風>、<衝撃>、<暗闇>、その他にも色々あるけどこれ全部初級用じゃんか」


「まぁ、律がそれを使っていた時期はまだ魔法陣の転写すら使えなかった時だしね」


「他は魔力温存とか。でも、その陣魔符はメイファちゃんに渡される前にだいぶ魔改造されてるからただの初球魔法と思わない方がいい。もし暴発なんてさせたら僕達タダじゃ済まない。これガチ」


 もとの世界でも読んだ異世界現地主人公による「初期魔法鍛えすぎて極大魔法になりました」的な典型例だからな~律君。


 その状態でまだ勝てない相手がいるってんだからこの世界はだいぶ強さにインフレがかかってる気がする。


 メイファちゃんに真面目な忠告をしてみたもののイマイチ疑ってる様子だ。

 恐らく本人の強さ自体は疑ってないだろうけど、ただの魔法陣が描かれた紙にそれだけの威力が? って所で疑ってるのかも。


 まぁ、律君が陣魔符を使ってるのなんて相当初期だし、僕達も予備で渡されてはいるけど魔力切れを起こしたことないからほとんど使ったところ見せたことないし......仕方ない、百聞は一見に如かずってことで。


 僕はメイファちゃんに「それじゃ実際に見てて」と言って<麻痺>の陣魔符を取り出すと小学生ほどの大きさのサソリの魔物を見つけたので陣魔符に魔力を流して投げる。


 紙なのにやたら真っ直ぐ飛ぶその陣魔符はサソリの体にペタッと張り付くと一瞬のビクッと反応とともに靴から泡を吹いて倒れた。ははっ、やっぱし。


「なんだ? ただ麻痺して体が動かなくなっただけじゃねぇか」


「それだけじゃ泡は吹かないよ」


 ミクモさんからも「とりあえず、近うで見てみて」と促されてメイファちゃんがそのサソリに近づくとすぐに気づいた―――死んでるじゃん、と。


「えーっと、アレ? 麻痺で魔物って死ぬっけ?」


「あるっちゃあるよ。体だけの麻痺じゃなくて心臓も麻痺してそのまま絶命。

 といっても、それが起きるのは魔物の魔法抵抗値と発動させた術者の魔法があまりにもかけ離れてる場合のみだけど。

 ましてや、優秀な魔術師でも出来て手のひらサイズにもかかわらず、律はこんなサイズの魔物に対して一秒足らずで麻痺死させる」


 康太君が全部言ってくれた。そう、<麻痺>はあくまで状態異常魔法で相手の行動を制限するのが役割であって決して殺せる威力は無い。

 さっき出してくれてた優秀な魔術師の例だって麻痺死を起こせるのはかなり珍しいことだ。


 しかし、律君はそれが出来てしまう。ごく自然に。それに日を増すごとに能力が上がっていく。加えて、彼が過保護というのも問題だ。


 村での出来事や最近だとエルフの森(フォレスティン)でのことも相まって、自衛用として渡してくるバージョンアップした陣魔符が殺人道具過ぎて......。


 つい最近だと「相手の魔法抵抗値下げるデバフ魔法陣の試作一号出来たんだけど体験の感想貰っていい?」って言われた時はさすがに「ヤバァ」と思ったね。そんでもって確かにほんの少し下がってた。


 もしこれが陣魔符の効果に乗るようだったら普通の人でも<麻痺>による確定死が生まれてしまうのではなかろうか。うん、これは本当に気をつけないと。そよ風生み出しただけで人が死ぬ。


 チラッと見ればメイファちゃんが手に持ってる陣魔符を見てワナワナと震えている。

 一つ息を吐くとそっと内ポケットにしまった。

 その顔は「絶対に使わない!」と言ってるようだ。うん、それでいい!


「それで......ウチはどないしたらええ?」


 メイファちゃんの律君講座が一段落着いた所で今度はミクモさんの番だ。

 それに対しても、康太君が答えていく。


「蓮の場合は一見すかしたクール男子って感じだけど、意外と面倒見いいしノリもいいから。

 例えば、今の言葉も蓮っぽく答えるなら―――はい、薫!」


「えー、ごほん、普通に褒めてくれるなら一回ディス入れる必要あったか?」


「という風に主においら達のツッコミ担当です」


「一人だけ明らかに紹介が違う」


 康太の蓮君紹介に思わずメイファちゃんがツッコんだ。

 うん、間違ってはないけど明らかに身内ノリの紹介だねそれ。

 後、ミクモさんも「ツッコミは苦手......」って呟きながら悩まなくていいから。


「真面目な話に戻すと、蓮は基本口数が少ないから人が来たら黙ってればいいと思うよ。

 とりあえず、俺カッコいいだろ的なポージングで立ってれば大丈夫。

 それに何かを言う時は短く終わらせる。極端な話、『わかった』だけ言っておけばそれっぽくなる。

 後、付け加えていうなら一人称は『俺』だね」


「俺、わかった」


「そうそうそんな感じ」


「こんなんでいいのか? アイツの紹介」


 メイファちゃん、そんなこと聞かれてもわからないよ。

 まぁ、確かに若干適当感は否めないけど、そこまで大きく離れてるってわけでもないって思えてしまうがなぁ。

 なんでか若干カッコつけてるように見えてしまうんだよ。これ不思議。


「ザックリとした二人の説明は以上だけど、基本的には誰かに会った際の会話はおいらと薫が担当する。

 それにおいら達の間には<念話>があるから困った時はそこでチャンネル開いて助けを求めてくれていいから」


「そういえば、<念話>があんじゃん。なら、ここまで気負ってガチガチの演技しなくていいってことじゃんか」


「とはいえ、いざ不測の事態起きたら中身露呈してまうものやで」


「だから、意識は常に持っといてって感じ」


 この話に一段落がついたタイミングで突然後ろから「おい!」と声をかけられた。

 振り返ってみればいつぞやの白服を着た生意気君に太っちょ君、のっぽ君の三人組であった。げ、まさか因縁つけに来た感じ?


 その予想通り、その三人組は僕達に向かって告げる。


「よう、クソ雑魚黒服ども、俺達と勝負しようぜ」

読んでくださりありがとうございます(*'▽')no

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