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マモレ課~捜索任務遂行中  作者: 2991+


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1/22

プロローグ



 これは環境汚染や自然破壊のツケ、地球からの逆襲なのだと誰かが言った。


 真実なんてわからない。

 ただ、突如として植物は異常発生した。

 理由もわからず、爆発的に植物が増える。それだけのことなのに。


「もう、おしまいだ」


 祖父の顔が思い出せない。


「ミチカ。すまない」


 ここを離れたくはないと、彼は言った。

 それは即ち、死を意味した。


 植物はただ、急激な成長と共に爆発的に増えるだけ。

 人を襲う意思があるわけじゃない、毒を出すわけでもない。


 見渡す限りの蔓草に、祖父はそっと手を触れた。

 岩壁を隠していたそれが一部だけ持ち上がり、ぽっかりと洞窟が口を開ける。


「じいちゃんは」


 僕が言いかけると彼は、ぐぅと小さな呻きを漏らした。

 これ以上、何か言ってはいけないのだと理解した。


 大きな自治体は、定期不定期に植物の駆除を繰り返すことができた。

 しかし、金もなく住民のほとんどが老人であるような過疎地に、そんな体力があろうはずもない。ましてや、田舎とは自然に取り囲まれているのだ。


 道を奪い、建物を奪い、畑を奪い…。瞬く間に集落は陸の孤島となった。

 電柱が倒れ、ダムが詰まり、水も食べ物も情報も手に入らない。

 植物だらけの家屋を諦めて、住人達はとっくに逃げた。長く悩めるほどの時間はなかった。刻一刻と植物は迫る。けれども、彼だけは逡巡を繰り返し…。


 今や故郷は、緑に飲まれた。


「お行き。もはやここ以外に脱出路はない。恐らくこの先には、この道を守り続けるだけの力を持つ何物かがいる。人かも獣かもわからないが…どうか、無事で」


 祖父の手が、背負ったリュックを優しく叩いたのを覚えている。




 A16。

 飲まれた他の集落と合わせて、今はざっくりとした区分けでそう呼ばれる僕の故郷。




 何もかも忘れてしまった。生きることに必死で。

 自分の生家の様さえ。自分の家族のことさえ。道の先に何がいたのかさえ。

 それでも。


 いつか故郷へ、帰りたいと思っていた。



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