第九十九話:エピローグ
長く暗い道を、歩いていた。
悠達は今、とある『道』を歩いていた。
人工の洞窟に手を加える事によって生み出された通路は、岩によって構成されるトンネルだ。
しかし今、丁度そのトンネルは終わりを迎えるところだった。
足元が見えるだけの薄暗い誘導灯とは違う、もっと強い光が、トンネルの出口から差し込んでいる。
その先の光景に胸を躍らせて、悠達は駆け出した。
「うはー……すげえ。トンネルを抜けたら……なんて表現すりゃいいんだろうな、これ」
トンネルを出た先に広がっていた光景は──三百六十度を囲む、一面の深い青色。
外周の『青い壁』には魚を中心とした海の生物が泳いでいる。
そして目の前に広がるのは、神の気配を感じさせる、神殿のような遺跡だった。
「ここがマオルの『海底都市』……! 綺麗だね……!」
「本当、綺麗……この光景だけでも延々歩いてきた甲斐があったってものね」
──いま、悠達がいる場所は文字通りの海の底であった。
ただし、不思議な力で水が押しのけられて、呼吸も出来るドーム状の空間が広がっている。
そこに広がるのが、かつてマオル族が作ったという海底都市だった。
「さて、生き残りの方達を探そうか? ガトゥム殿によると、確率は高いとのことだが」
「むぐ……見たかんじ、しょくぶつがほうふですね。何らかの手をくわえなければ、海の中で地上のしょくぶつが生きていくのはむずかしいでしょうし、とくべつなじゅつしきをかんりしている人がいるのではないでしょうか」
カティアがその都市の見取り図を広げ、アリシアは謎の串焼きを頬張りながらも、分析を進める。
マイペースながらも仕事をきっちりとこなす姿に、クララが苦笑した。
「そうだなあ……っと、いやその前に、腹ごしらえをすることになるな」
そして──悠は、口角を不敵に吊り上げ、紅の刀を抜き放った。
神殿の跡から、のっそりと──白い触手を持つ、イカの様な生物が現れる。
悠の食の力はその生物の旨さを感じ取っていた。
やれやれ、とため息を吐き出しながら、カティアが構える。
「ユウも、先程から串焼きを食べていたじゃないか。まだ食べられるのか?」
「おやつと昼飯は別だぜ。順序は逆になっちまいそうだけどな」
「こんかいは、これがおみやげになるでしょうか。ディミトリアスは、かいさんぶつがこうぶつですよ」
「どうだろうなあ。海産物は足が速いから……公務の励みにも、なんかしら持って帰ってやりたいけど」
「相変わらず緩いわね。リラックスしているのはいいことだけど──来るわよ」
カティアとアリシアの疑問に答えていく緊張感のない悠に、シエルが楽しそうに呆れのため息を吐く。
けれど、そう。この五人が揃っているのなら、きっとどんな困難だって乗り切っていけるのを知っているから。
「やろう、みんな! ユウ!」
「おうよ! ……刺身にイカ飯、煮物もいいな。今から迷うぜ」
どこまでも、旅は続く。かつて空の果てまでいった悠達なら、どこにだっていけるだろう。
きっとまだヒトが知らない場所にさえ、もしかしたら、誰かが夢見た、理想の世界までだって──
終わり




