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改めまして

 ようやく大樹の下に辿り着いた瑞希たちを出迎えるように、妖精たちが辺りを舞い踊る。いらっしゃい、おかえり、と口々に歓迎されて瑞希とルルは照れ臭そうにはにかんだ。アーサーや子供達には妖精は見えないが、集落に舞う花びらから歓迎されていることを感じ取った。


 「わぁ、この子達が瑞希の子供?」

 「双子なのね!可愛い!」

 「へえ、こいついい体してんなぁ」


 人間が好きだというだけあって、妖精たちはアーサーや子供達に友好的だった。囲うように飛び回る彼らを、見えないながらも何か感じてはいるようで、どうすればいいかと困った顔で瑞希を仰いだ。

 そっくりな表情の三人に、瑞希は堪らず苦笑を零す。それから、「長老は?」と尋ねれば、妖精たちは奥の泉にいると、思い出したように道を開けた。

 すっかり暗くなった道のりを妖精たちが魔法で灯りを灯す。蛍のようなふわふわと暖かい光が漂う光景は幻想的で美しい。

 ライラが、そっと光に手を伸ばした。指先に触れた途端、光は雪のように溶けて消えてしまった。

 肩を落とすライラを慰めるようにアーサーが頭を撫でる。


 「行こう」


 転けないようにと繋がれた手に、ライラはふにゃりと笑った。

 さく、さく、と草を踏みしめて、灯りに導かれるまま泉を目指す。集落から少し離れたところにそれはあった。

 泉というには小さなそれは、一面が鏡のようになって月を映し出している。


 「来たか、待っておったよ」


 ほっほっと、独特の笑い声と共に長老が五人を出迎えた。お久しぶりです、と瑞希とルルが礼を取る。アーサーたちもそれに倣い頭を下げた。

 長老はますます目尻のしわを深くした。しわくちゃの小さな手が、待ちきれないと彼らの頭を撫でる。


 「さあ、指輪を。早く話がしたい」


 うずうずと泉から指輪を浮かしあげて、それぞれの前に持ってくる。

 目の前に浮かぶ銀色は月光のためか柔らかく光を反射させた。それを恐る恐る受け取り、そっと指にはめる。ぶかぶかかと思いきや、さすがに魔法がかけられているだけあって、指輪は自ずからそれぞれの指にぴったりの形に変わった。


 「見えるかね?」


 長老が問う。三人は目を瞠った。

 彼らにとっては唐突に目の前に現れた、小さな老人と、瑞希の肩に座る小さな女の子。

 驚きだけが満ちた目が、緩やかに別の色を宿していく。胸の奥が熱く震える。わななく唇を押し開き、彼らは意図せず声を揃えた。


 「ありがとう!」


 満面の笑みを浮かべながら、三人は小さな家族に手を伸ばした。

 手のひらを受け皿のようにして、双子は小さな姉をじっと見つめた。二人が自分を見てくれていると、ルルは嬉しさのあまり涙ぐんでいた。


 「泣かないで」


 ライラがよしよしと頭を撫でる。触れることのできる喜びを噛み締めた。


 「ずっと会いたかったんだ。これからもよろしくね、ルル姉」

 「っもう!大好きぃっ!!」


 叫びながら、ルルは大粒の涙を零した。


 アーサーの肩に乗り、長老が心底嬉しそうに子供達を見守っていた。たっぷりとした白い髭を撫でつけて、何度も頷いている。


 「長老殿、ありがとうございます」


 アーサーの声は静かだったが、わずかに震えていた。緩みかける表情を引き締めようとしているが、目元の柔らかさは隠せない。


 「なぁに、大切な家族のためじゃ。礼を言われることではない」


 にっこりと笑って言い切る長老に、アーサーは小さく首を振った。そう言ってくれるからこそ、感謝したいのだ。


 「本当に、ありがとうございます」


 意地っ張りめと、長老はまた独特の笑い声を響かせた。

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