やってきたこと
「ミズキは『最初は』と言ったが、昔から妖精が見えていたわけではないのか?」
「うん……。そのことも話さなきゃね。凄く途方もない話をするけど、私はこの世界の人間じゃないの」
自分でも知らないうちに境界を越えてしまった異世界人。
そう自分を表現する瑞希をルルは心配そうに見つめた。少しでも支えになれればと瑞希の肩に飛び立つ。ルルの優しさがとても嬉しかった。
瑞希は元の世界に帰れないことをようやく受け止めていた。どうしようもないことを悩み続けていられるほど豊かな出出しではなかったこともあるだろう。
まず生きることを最優先に動き回っているうちに、いつの間にかそういうものなのだと飲み込んでいた。
それに、こちらに来て辛いことばかりでもなかった。
妖精たちは人間の瑞希にとても良くしてくれたし、集落を訪れる度に歓迎して暖かく迎えてくれる。街の人たちだって身元の知れない瑞希を疎むことなく、慣れない土地は大変だろうと気遣ってくれる。
自分一人ではない。支えてくれるこの世界で生きることを決めるのは、悲しみだけが満ち溢れるものではなかった。
もしも帰れるなら帰りたいと今でも思う。しかしそれで消滅なんて元も子もない結果になるなら、こっちで精一杯生きていく方がずっと有意義だ。
瑞希の話を聞いていたアーサーは辛そうに眉間に皺を寄せることもあったが、瑞希が吹っ切れたように笑うのを見て、それは失礼なことだと自分の反応を恥じた。
「ミズキは、強いな」
「強くなんてないわ。みんなが助けてくれたから、頑張ろうって思えたの」
「ミズキはアタシたちの家族だもの。助けるのは当たり前だわ!」
ルルがぎゅうっと瑞希の頬に抱きつく。瑞希はそれをくすぐったそうに受け止めて、私にとってもみんなは大切な家族だとルルの頭を撫でた。
「……ミズキは今、幸せなのだな」
「ええ、もちろん。これからはもっと幸せになるわ、家族が増えるんだから!」
晴れやかに笑って言ってのけた瑞希を、アーサーは眩しいものを見るようにして目を細めた。
自分が妖精を見れないことが悔やまれる。もしも見えていたなら、二人ともの笑顔が見れただろうと惜しまずにはいられなかった。




