エピローグ(1)
COCジュニア部所属が発表されて、コメント欄は概ねお祝いだとか嬉しいといった喜びの文章で埋まっていた。らしい。
らしいというのは、相変わらず私がほとんどコメントを見ないから。
仲間の三人によれば、少しは否定的なコメントもあったらしい。
見たら落ち込むようなものは見ない。
正しいやり方かはわからないけれど、とりあえず今の私はそうやって活動を続けている。
二月の外の空気は寒いを通り越して肌が痛い。
私たち四人は歩き慣れた地元の街を適当に歩いていた。
ちなみにハルが被っているニット帽のてっぺんには、彼のスマホが固定して取り付けられている。
今日は、そのスマホが動画を撮っていた。私はカメラを持たず手ぶらだ。
人通りは少ないから目立つわけではないけれど、ハルはちょっと顔が強張っている。
「もうこの変な格好を見られるのは慣れたけど……顔を真っ直ぐ正面に向けて歩くのが難しい……」
「疲れた? もう帰る?」
となりで面白がってハルを自分のスマホで動画撮影していたヒロの言葉に、ハルが首を横に振る。
「もう少し歩いて帰ろう。ここから右にぐるっと回って住宅地を一周して……」
「ハルさん、顔動かしたらスマホが……」
「え? あーっ」
固定が弱く、ぐらぐらと揺れているスマホを慌てて手で押さえるハルに、私たちは軽やかに笑い声を上げる。
今日の撮影は、こんな感じで和やかに進んでいる。
目の前の曲がり角を曲がって、よく撮影に使う例の公園が目の前に見えたところで、私は笑うのをやめた。
「あ、あれ……」
私の声に、みんなが公園のほうを見る。
「兄貴じゃん」
ヒロがつぶやく。
志紋くんがいた。
一人かどうか遠目からはわからないけれど、踊っている。
「志紋くん、帰ってきてたんだ」
「うん。昨日な。学校も仕事も休みだって」
「ふうん」
私が立ち止まったままじっと公園を見ていると、ハルに背中を叩かれた。
「話してくる? 俺たち先に行ってようか」
「え……」
最後に志紋くんと会ったのは、東京で二人で踊って、ヒロに止められてしまったあの日だ。
あれから直接顔を合わせていないのは少し気になっていた。
「行って来ようかな……。いい?」
「もちろん。あとで動画のデータ送るから」
「兄貴に今のそのカニ歩きみたいな動き超ダサいって言っといて」
「さっちゃんさん、いってらっしゃいでーす」
見送ってくれる三人に向かって小さくうなずいた。
「ありがと。いってきます」
みんなに背を向け、早足で公園の入口へ進む。
私の吐く白い息があっという間に消えていく。
公園に足を踏み入れると、少し固い土の感触がスニーカーを挟んで足に伝わった。
音楽を流して踊っている志紋くんと目が合った。
作者はカメラ詳しくないんだけど…GoProとかでで撮影できひんのかお前ら。事務所にも入れたことだし、彼らもいずれ良いカメラを新しく買うと思います。




