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画面の向こうで僕らは笑う【旧版】  作者: 中村ゆい
第四章 広がる世界
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4-7 懐かしい影

 結局、翌日にはヒロはハルの家に転がりこんだらしく、ハル情報によると彼は元気にやっているそうだ。


「ばあちゃんは家出するなんて元気なお友だちねえ、なんて言って呑気にもてなしてるけど、うちに来てもう三日は経つんだよなあ。これからあいつ、どうすんのかな」


 学校からの帰り道、私のとなりで自転車をだらだらと押して歩きながら、ハルがぼやく。

 ヒロがいなくなった奈津田家からは、一度うちのお母さんにどこ行ったか知らないかと連絡が来たらしいけれど、私から何も聞いていないお母さんも「知らない」と答えるしかなかった。

 あとで、うちに一晩泊めたことは伏せて家出したらしいとだけ伝えると、お母さんは「あらあら、志大くんらしいわね~」とにんまりと笑っていた。例のごとく高校生男子の動向を楽しんでいるだけだ。


「早く解決するといいんだけどね。みんなでCOC、所属したいもんね」

「だな。でも、俺の家で夜中までヒロと一緒に撮影なり編集なり作業できるのはすごくいい」

「何それ、すごく楽しそう。いいなー」


 三日連続お泊まり会してるってことだもんなあ。男子会か、羨ましい。


「さっちゃん女の子だし泊まるのは無理かもしれないけど、とりあえず週末にうちで撮影でしょ? また芙雪は抜きの予定でちょっと寂しくはあるけどさ。そのときにわいわいやろうよ」

「そうだね。ヒロとも家出てった日から会ってないしなあ。週末、ハルの家、お邪魔します」

「はあい。待ってまーす。じゃあね!」


 軽いノリでハルと別れる。マンションまでの短い距離を自転車にまたがり、駆け抜けると、いつも通りに束ねたポニーテールがばさばさとはためく。

 風が涼しい。むしろ少し冷たい。もうすぐ冬が来そう。

 マンションの自転車庫に自転車を止めて、エントランスに入る。なんてことない、いつもの私の住まい。

 そのままエレベーターに乗って、降りて。

 そこで私は人が立っていることに気づいた。

 私の部屋……澤家の一つ手前、つまりヒロの家の前に佇む、長身の男性。

 あれ? と思いながら、足を進めてその人に近づいていく。

 その人は近づく私に気がついたのか、こちらにゆっくりと顔を向けた。


「……あっ」


 ああ、この人。知っている。というか知っているどころじゃない、私のもう一人の幼なじみ。

 ヒロによく似たその人が、私に向かって微笑みかける。


「アッキ? 久しぶりだね」


 数年ぶりに見る志紋くんの姿は、私の記憶よりも大人っぽく、東京の人らしく垢抜けていた。

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