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【完結】悪虐聖女ですが、愛する旦那さまのお役に立ちたいです。(とはいえ、溺愛は想定外なのですが)  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜第2部〜

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102 世界は美しいのです!


「それからここには数式が隠されていますよね? 数字がちょうどオズヴァルトさまの一時間に刻まれる瞬きの回数平均を三倍にした数だったので、とっても覚えやすいものでした! この図柄の角度、こちらはオズヴァルトさまの喉仏の角度とほぼ一致していますし、この直線はオズヴァルトさまが目を自然に開けていらっしゃるときの、一番長い睫毛の角度です!」

「殿下。この説明はお耳に入れずとも支障ありませんので、どうか聞き流していただければと」

「こちらの部分に入っているラインの数は、オズヴァルトさまの制服の上着についているボタンの数とおんなじです! そう思うとすぐに頭に入ってしまいますよね……!! この辺りに描かれた丸はオズヴァルトさまの昨日のくしゃみと同じ数、この四角はオズヴァルトさまの一昨日の寝返りと同じ数、こちらはオズヴァルトさまの首筋にあるほくろと同じ数! ああ……っ」

「…………」


 シャーロットは幸せが止まらなくなり、胸の前で両手の指を組む。


「この世界にはこんなにも、オズヴァルトさまに関連するものがたくさん溢れているのですね……!? そう考えますと、すべてがオズヴァルトさまによって構築されていると言っても過言ではなく……っ!!」

「過言だ! もうやめておけ、エミール殿下が笑顔でとんでもなくドン引いていらっしゃる!」

「は……っ! 失礼いたしました、ついつい世界の真理を見付けてしまい……!」

「見付けていないからな?」


 慌てて気を付けの姿勢を取るシャーロットを見て、エミールが「ううん……」と声を漏らす。


「……分かったよ、一旦は信じて参考にしよう。これで本当にクライドという男の結界を見破れてしまったら、ますます複雑な気持ちになりそうだな……」

「エミール殿下……シャーロットに代わり、今からお詫びさせていただきます」


 何故かオズヴァルトに謝罪をさせてしまったが、ひとまずは役に立てているのだろうか。不安に思いつつ、精一杯これからも頑張ろうと心に誓う。


「シャーロットちゃんが、どれほどオズヴァルトのことを好きかはよく分かったけれど」

「は、はい! 私はオズヴァルトさまが大好きです!!」

「シャーロット、今はそこを元気に主張しなくていい……!」

「ふふ。でも、だからこそ意外だな」


 恥じらうシャーロットを見据え、エミールは僅かに目を細める。


「君はいつもオズヴァルトのことばかりだ。自分の身を守ることに、こんな風に一生懸命になりそうには見えない。クライドとやらは君を狙っているのだからね」


 エミールが首を傾げると、ニクラスたちと同じ銀色の髪がさらりと揺れた。


「婚姻の祝福を授かれない原因は、クライドとの婚姻関係があった所為ではなさそうなんだろう?」

「……これが私だけの問題であれば、引き続きこうやって、エミール殿下に助けていただく訳にはいかないと感じたかもしれません! ですが、オズヴァルトさまにお聞きしたところによると……」


 シャーロットはオズヴァルトをそっと見上げた。オズヴァルトは頷いて、言葉を引き継ぐ。


「先ほど我々は『映像』について、客観的な事実だけをお伝えし、推測は混じえないように心掛けました。ですが、エミール殿下もお気付きでは?」

「……そうだね」


 エミールは少々面倒臭そうに、ひょいと肩を竦める。


「クライドという男にまつわる一件は、シャーロットちゃんの母国が聖女奪還のために起こしたものという、それだけの話ではなさそうだ」

「……」


 オズヴァルトが小さく息を吐き、エミールに告げた。


「殿下。クライドという男を追うに辺り、念の為ご相談したいことが」

「シャーロットの守護と、聖都の防衛?」

「はい。あの男の使う魔術で、懸念すべきものがあります」


 その重い声が、淡々と紡ぐ。


「クライドには、他者の魔術を暴走させる力があるやもしれません。……恐らくは、強固な結界魔術が必要になる場面が生じるかと」

「あ、あの! オズヴァルトさま!」


 シャーロットは勇気を出し、重要な作戦を切り出した。


「その件で、オズヴァルトさまと事前に準備をしておきたいことがありまして……!!」

「シャーロット?」


 これは絶対必要なことだが、同時にとても覚悟のいることでもある。シャーロットの顔が真っ赤になっているのを、オズヴァルトたちは不思議に思っているだろう。


(ですがすべては、オズヴァルトさまのため……!)


 シャーロットは、むん! と気合を入れる。

 その直後、オズヴァルトとふたりきりになれる場所での作戦会議をさせてほしい旨を、恐れながらと願い出たのだった。




***


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