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【コミカライズ・書籍化】伯爵令嬢はヤンデレ旦那様と当て馬シナリオを回避する‼︎  作者: 島田莉音
番外 ギャグコメレベルはMAXだよ、精霊と勇者伝説(笑)!《勇者と愉快な仲間達》
81/89

とーとつに始まる精霊と勇者伝説!《精霊王を救い出せ!》


本日は2話分更新です。

よろしくお願いします(・∀・)ノ






『お願い〜‼︎魔王に攫われて、ダンジョンに閉じ込められてしまった精霊王を助けてあげて〜‼︎』



…………。

目の前でふわふわと飛びながらお願いしてくるのは、柔らかな緑色の髪をツインテールにした可愛らしい少女ーーもとい、小人サイズにデフォルメされた風の大精霊。

私は思わずジト目になりながら、彼女に声をかけた。


「貴女……何をしているの……?というか、何その姿……」

『……いや、まぁ……わたしも何してるんだろ〜?って思うんだけどね?わたしがちっさくなってるのも含めて、全部全部、精霊王様が悪いんだよ〜‼︎』

「成る程。大体察したわ」

『流石シーちゃん‼︎』


だってねぇ?今の状況、どう見たって精霊王案件っぽいじゃない?

なんせ……。



昨日、普通にルインと一緒に寝たはずなのに……目が覚めたら、ふわふわとしたシフォン生地のイヴニングドレスを着て、森の中に立ってるんだもの。

どう考えたって、何かに巻き込まれてるでしょ。絶対。



『えっと〜ちょっと待ってね。カンペ、カンペ』


風の大精霊はポケットの中から紙を取り出すと、内容を確認する。

そして、ゴホンッとワザとらしい咳払いをすると……きゅるんっとぶりっ子みたいなポーズをしながら台詞を続けた。


『貴女は優秀な精霊術師シエラ‼︎魔王に攫われて、ダンジョンに閉じ込められた神様ーー精霊王を救出する勇者様のパーティーメンバーに選ばれたの‼︎もう少しで勇者様が現れるはずだから、彼のパーティーに参加してね‼︎…………だってさ』


言い終わるなりスンッ。と真顔になった風の大精霊。私もつられて、同じような顔になる。

でも、それも仕方ないと思わない?ツッコミどころが多過ぎなんだもの。

ダンジョンに閉じ込められた精霊王とか勇者様とか……。本当、どういうこと??

そもそもの話……。


「なんで急にこんな展開になってるの……?」

『なんでと聞かれたら、それはもう碌でもない理由なんだけど』

「でしょうね」


あの精霊王は碌でもないことが殆どだわ。

真面目な時なんて滅多にないもの。


『精霊王様、他所の世界の管理者達との飲み会で、魔王に攫われたお姫様を勇者が助けるお話を聞いてきたみたいでさ〜……』


……いきなり重量級の情報、ぶっ込んできたわね。

ルインが違う世界から来た《穢れの王(ルイン)》を吸収したって聞いていたから、この世界の他にも沢山の世界があるんだろうな……とは思っていたけれど。

まさか、異世界と交流があったなんて。それも飲み会……無駄に前世(現代)チックで驚きだわ。それも、あるある鉄板RPGネタ。どんな飲み会なのよって、思わずにいられなかったわ。


『精霊王様、その話がすっごく気に入ったみたいでね?』


やっだー……。もう先が読めちゃったわ……。


『帰ってきた精霊王様が酔った勢いで精霊術を発動させて……わたし達みんなを、自分の夢の世界に巻き込んじゃったんだよ〜‼︎』

「そうだろうと思ったわよ‼︎やっぱり碌なことしなかったわね⁉︎」


叫んだ私は決して悪くないはず。

だって、酔った勢いで夢の世界に巻き込むとか……本当に信じられないじゃない⁉︎なんて面倒なのに巻き込んでくれてるのよ、あのヒト‼︎


『本当迷惑だよね〜⁉︎それも、精霊王様が満足しないと目が覚めない仕様なの‼︎』

「もっと最悪だわ‼︎」

『だからっ、精霊王様をとっとと満足させるために……与えられた役目ーー勇者パーティーを導く案内役を大人しく全うしよーと考えるわたしなのであった。はぁ……面倒くさーいっ‼︎』


可愛い顔して悪態を吐く風の大精霊に、私もすっごく同意した。

要するに、私達は精霊王の夢の世界に巻き込まれていて……精霊王が望む通りのエンディング(=ダンジョンに閉じ込められた精霊王の救出)を迎えなきゃ解放されないってことでしょう?それも、精霊王が満足しないと駄目っていう特典付き。

…………これに悪態を吐かずにいられる?いいえ、無理だわ。


「はぁ……明日は休日だったから、ルインと一日イチャイチャラブラブする予定だったのに……」

『おぉう……ご愁傷様〜……』

「風の大精霊もね……」

『まぁね〜……』

『「…………はぁ……」』


ーーガサガサ……。


二人(?)で大きな溜息を吐いていると、背後の茂みから音がし始める。私はゆっくりと、けれど警戒しながら振り返る。

しかし、警戒心は直ぐに霧散したわ。だってそこにいたのはーー。


「ルイン‼︎」



私の大好きな旦那様だったんだから‼︎



「シ、エラ……?」


ルインは私の声に驚いたように目を見開くと、ぐしゃりと泣きそうな顔になる。

えっ?と思った時には、私は既に彼の腕の中にいて。ルインは強く強く、私の身体を掻き抱いた。


「シエラ……シエラシエラシエラ‼︎無事でっ……無事で‼︎良かった‼︎」

「ルイン……」

「気づいたらここにいて、隣にシエラがいなくて……心配したんだよ、シエラ‼︎」


何度も何度も名前を呼ぶルインの姿に、私の胸が痛む。

それはそうよね。一緒の布団で寝ていたのに起きたら森の中。それも離れ離れとなれば、不安にならないはずがないわ。

こんなに旦那様を不安にさせてしまうなんて……妻失格ね。

私は彼の首に腕を回して背伸びをする。そして、ルインの目尻に浮かんだ涙を掬うように、口づけを落とした。


「ごめんなさい、ルイン。離れてしまって。不安にさせてしまったわね」

「…………シエラ」

「でも、安心して?もう離れないわ。私とルインは夫婦だもの。私達は一緒にいなくては、ね?」

「…………」


黙り込んだルインの顔。最初はかなり険しかったけれど……それも徐々に落ち着いてくる。

そして、冷静さを取り戻し彼は私をもう一度強く抱き締めてから、ほんの少しだけ身体を離した。


「…………いや、ごめん。離れ離れになったのはシエラの所為じゃないのに……君が側にいなくて、冷静さを失ってた」

「ふふっ、大丈夫よ。冷静さを失うぐらい、愛されてるってことでしょう?」

「そうだよ。取り敢えず……ちゃんと会えて、良かった……」


ルインは心の底から安堵したように呟く。

そんな妻想いな旦那様の姿に胸をキュンキュンさせていると……彼は私にニッコリと笑ってから、鋭い視線を風の大精霊へと向けた。


「それで?どういう状況?」

『はいはーい。説明二回目しまーす‼︎』


風の大精霊は先程のように、ルインにもここが精霊王の夢の世界であることを説明していく。

話を聞き終えたルインの顔は……まさに般若。

彼は怒りを隠さずに、ドスの効いた声で呟いた。


「あのクソ親父め……なんて面倒なことを……‼︎」


分かる。分かるわ、ルイン。本当にぶん殴りたい気分よね‼︎

でも、今はとっととこの舞台を終わらせて、夢の世界から起きるのが優先よ。

ルインもそれが分かっているからか……大きな溜息を吐いてから、自分の姿を確認する。


「とにかく……。俺達があの馬鹿親父の夢の世界にいて、精霊王を救出することパーティー(?)に選ばれたのは分かった。シエラは精霊術師なんだろう?俺のこの格好はーー」

『精霊王がイメージする勇者スタイルらしいよ〜』

「…………このトンチキな格好が……勇者なのか……?」

「『………………』」


私達は思わず黙り込む。

本当は、ずっと目を逸らし続けたかったの。でも……今の今まで目を逸らしていたモノに、そろそろ目を向けなくてはいけないのかもしれないわ……。

私は恐る恐ると……ルインの頭から足先まで、視線を動かす。

真紅の宝石が中央に嵌められた金色のサークレットに、いつもの軍服姿。けれど、その背中には真っ赤なマントが靡いていて……その腰には、輝く真紅の大剣。

…………そして……。その左腕に巻かれた……黒地に白い文字が書かれた包帯と……。左目を覆う、黒い眼帯……。

ルインッ……‼︎貴方っ……‼︎なんて……なんて‼︎



厨二病(スタイル)な勇者なのっ……‼︎

厨二病ですら、こんな格好しないでしょうにっ……‼︎この格好させてるの、貴方のお父様だけどっ……‼︎

なんて言うかっ……‼︎とても‼︎イタイッ‼︎



『……その格好、イタイよね〜』


風の大精霊も私と同じことを思っていたらしく、引き気味で呟く。

ルインは忌々しそうな顔をしながら、ジト目で彼女を睨んだ。


「自分でもそう思ってるから、口に出さないでくれないかな?」

『……ご、ごめんね……?』


ーーヒョォォォォォォ。

冷たい風が、私達の間を通り抜けていく……。

このとんでもなく気まずくなった空気を誤魔化すために、私は慌てて声をあげた。


「と、とにかく‼︎精霊王の要望は、ルインにダンジョンから助けてもらうことなのでしょう⁉︎なら、とっとと助けて‼︎速やかに夢から覚めるわよ‼︎そして、ルインとイチャイチャするの‼︎」


ーーぱぁぁぁぁ‼︎

私の発言にルインの瞳がキラキラと輝き出す。

いつだってイチャイチャしているけれど……いつまでもルインにとって〝イチャイチャしたい〟って魔法の言葉なの。つまり、ルインはやる気になったってこと。


「そうだね、シエラ。折角の休日を台無しにされたくないものね。とっとと解決して、早く起きてイチャイチャしよう?」


キリッとした顔でそう言ったルインは、私の腰を抱きチュッと触れるだけのキスを落とす。

私はそれに応えるようにキスを返して、握り拳を作ってコクコクと頷いた。


「えぇ‼︎早く二人っきりでイチャイチャしましょうね‼︎」

「うん」

「それじゃあ早速、精霊王がいるって言うダンジョンにーー……」

『えっと〜……盛り上がってるトコロ悪いんだけどぉ〜……悪いお知らせがありま〜す……』

「「…………は?」」


風の大精霊が申し訳なさそうな顔をしながら、目を逸らす。

私は何度目か分からない……嫌な予感を感じずにはいられなかったわ。


『精霊王を救うの、実は手順が決まってるみたいで?まずは勇者パーティーを全員揃えるところから始めなきゃいけないんだよね〜……』

「「…………つまり?」」

『精霊王を助けて直ぐ起きる、なんてショートカットは出来ません‼︎』


……。

…………。

………………。

私とルインはニッコリと笑う。

そしてーー。


「「ふざけんな(じゃないわよ)‼︎あの馬鹿王がっ‼︎」」




ーーかなり本気で、思いっきりブチ切れたわ。







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