第2話 ハイエナは彼女を手に入れるため動き始めている
第2話とか言っときながら、時間軸的には第1話の数日前になります。トイズ目線。
早速、異世界転生/転移(日間恋愛)のランキング、100位以内に入ってました。読んでくださりありがとうございます‼︎
誤字報告もありがとうこざいます‼︎
それでは、今後ともよろしくねっ☆
渡りに船ーーそれはこういうことを言うんだと思います。
「馬鹿じゃないんですか?情報が足りないのを第四部隊の所為にして。情報が少ないという結果から考えられる可能性に辿り着けないとか……なんのための軍部の頭脳ですか?参謀役だと思ってるんですか?頭が足らないなら第三部隊に入らないでくださいよ」
毒を吐きながら、僕は第四部隊が集めた情報を閲覧する。
場所はかつての職場こと第三部隊の執務室。
僕は特殊部隊からの出向(同じ軍部内でも言えるのか?)といったカタチで、行方不明事件関連で第三部隊に協力していました。
「………申し訳、ない……フェンネル少尉」
「そんな憎そうな顔するなら、こうならないように頑張ったらどうですか?第三部隊長殿?」
「うぐっ」と憎々しげに押し黙るのは、まだ若い(と言っても四十代だった気がします)眼鏡をかけた男性。
自尊心が高そうな彼は、第三部隊の隊長であるハーン中佐。
僕が第三部隊にいた頃は副隊長でしたが……その後、退職した前隊長から隊長職を継いだらしいです。
まぁ、今回の件はハーン中佐にとって屈辱でしかないでしょう。
はっきり言って僕は第三部隊の爆弾。
敵だけでなく味方にも(精神的な)ダメージを与えたのは偶然ですが、参謀役として僕ばかり有名になりました。
なので、第三部隊の人達からしたら僕は功績奪いと思われてるんですよね。
……まぁ、僕が一番貢献してるのは間違い無いので、その恨み妬みはお門違いですが。
とにかく。そんな僕に、未だに進展のない事件の捜査協力を依頼するなんて……とても恨めしいことでしょう。
ぶっちゃけ、第三部隊は無能だって言ってるようなモノですから。
「……でも、本当に謎ですね。前隊長から同じことを教わって、同じことができるはずなのに……なんで僕ばかりハイエナと呼ばれるのか……僕に協力を頼むようなことになるのか……」
その呟きに、サッと目を逸らすのが数名。
思わず、呆れた溜息を零してしまいます。
僕がハイエナと呼ばれるようになったのは、前隊長に教わったやり方を実践していたからです。
凡ゆる策の考え方。
精霊術だけでなく、人と人による情報網の重要さ。
表の世界だけでなく裏の世界のアレやコレ。
一応、前隊長がいた時にいた第三部隊の奴らは全員、同じやり方を学んでいるのですから……本来であれば、全員がハイエナと呼ばれるようになるはずですし、同じことができるから僕の協力なんて必要ないはずなのに。
……まぁ、とやかく言っている暇はありませんね。
この間にも行方不明になっている女性が増えているかもしれませんし、消え去った女性も見つけられていないのですから。
「取り敢えず、情報整理から始めますよ」
僕はテーブルの上に書類を広げ、集まってきた隊員達の顔を見る。
そして、一つずつ説明を始めました。
「〝行方不明事件〟。一番初めの行方不明者が出たと思われるのは、約一ヶ月前。とある夫婦が夜に夫婦喧嘩をし、家を飛び出した妻が帰ってこなかったのが始まりだと思われます」
夫の方はただの夫婦喧嘩だと思い、その夜は妻を探しに行きませんでした。
ですが、翌朝。
未だに帰らない妻を不審に思い、探すことに。
しかし、妻の手がかりは一切なく……夫は軍部に慌てて相談に来ました。
「それから数日後。今度は違う女性が行方不明になりました。そして、更に数日後にはまた違う女性が。この時点で分かることは、全員が恋人、もしくは夫と喧嘩やいざこざが起きた後に姿を消しているということです」
「…………何故、喧嘩した女性ばかりなんですかね?」
見たことがない若い青年が首を傾げながら質問してくる。
僕のことを知ってる奴らは、話の最中に口を挟むことはないのですが……彼は新人なのでしょうか。
………おいこら、周りの奴ら。新人君に向かって合掌してるんじゃありません。
口を挟まれたからって、僕が彼に何かをする訳ないんですから。
…………おっと、思考が逸れました。
「そんなこと聞かれたって、分かりませんよ。僕は当事者じゃないんですから。唯一分かるのは、犯人は〝魔族〟の可能性が高いってことぐらいじゃないですか?」
『はぁっ⁉︎』
ギョッとした顔をする第三部隊の皆さん。
はぁ……この顔はやっぱり、分かってなかった感じですか。
「なんですか、その顔は」
「いや、だって……なんで……」
「最初に言ったでしょう。情報が少ないという結果から辿り着ける可能性に気づかないなんて、頭が足りないんじゃないかって」
今の僕は笑顔を浮かべているでしょうが、きっと目は笑っていないでしょうね。
だって、本当に救いようがない。
第三部隊の役割は、参謀役……つまり、軍部の頭脳です。
第四部隊(情報関連)が集めた情報を元に作戦を立案したり、戦況を把握したりするのが仕事であり……このような事件に対しても方針を決めたり、解決の糸口を探るという役割があります。
ですが、行方不明事件の捜査が未だに難航しているのは……第四部隊が持ってくる曖昧な情報ばかりだと責任転嫁しているんです。
僕が特殊部隊に行ってから、ここにいる奴らは参謀というには頭も、技術も足りなくなったようですね。
いや、考え方が硬くなっているのでしょうか?
参謀なんですから柔軟な思考回路が大事ですよ、本当。
「精霊術で探索をしても情報が手に入らない。足で情報を集めても、詳しい情報も手に入らない。どう考えたって、精霊術が効きづらい者かつ……精霊術と同じような現象を起こせる者……つまり、魔術の使い手である魔族が犯人である可能性が高いって答えに辿り着くじゃないですか」
僕の言葉に目から鱗だったのか。
第三部隊の奴らは、愕然とした顔になります。
あーぁ。本当にお馬鹿さんですねー、こいつら。
「現時点ではあくまで可能性の域を出ません。ですが、今の状況ではそれを手がかりにするしかないでしょう。精霊術が効きづらいというならば、逆に精霊術で情報が集めづらい関連の調査したらいいかと思われます。何か他に意見はありますか?」
『……………』
シンッ……と静まり返る執務室。
他に意見はない感じですね、よし。
「では、誰か第四部隊に情報収集依頼をしてきてください。まずは王都の情報から。それから王都周辺の情報を集めます」
「自分が行ってきます‼︎」
先程、口を挟んできた青年君がピシッと敬礼して慌てて走っていきます。
…………行動が早いですね。
さて……残った人達は。
「残った者達は過去に類似事件があったかを調べてください。保管庫には長年の事件が文書化されて保管されていたはずなので、かなり時間がかかると思います。ですが、できないとか言いませんよね?」
『はいっ‼︎行ってきます‼︎』
残っていた者達も勢いよく敬礼して駆け足で執務室を出て行きます。
………どうせ情報が集まるまで第三部隊に仕事がないんです。
これぐらいやってもらいませんと。
「…………わたしが隊長なのに……」
ぽつりと隣で呟くハーン中佐。
……いやいや。協力依頼をしてきたのはそちらですし。
隊長だと言うなら、指揮を執ることぐらいしてくださいよ。
と、そういえば。
「……あぁ、そうでした。言い忘れていたことが」
「………なんだ」
「今回の件、ハーン中佐にはお礼を言わないといけませんね」
「…………は?」
ポカンっと間抜けな顔をするハーン中佐。
その顔は酷く変で思わず笑いかけてしまいますが……僕はゆっくりと頭を下げて、微笑みました。
「特殊部隊は過剰戦力ですから、基本的に行動することが禁止されています。ですが、今回は第三部隊が僕に協力依頼をしてくれたおかげで……僕は爵位を上げる良い機会に恵まれました。ありがとうございます」
伯爵家の三男で爵位を継ぐことがなく成人したので、僕の身分は平民でした。
ですが、グライツ公爵家の横領事件を暴いたことで男爵の爵位を与えられました。
だとしても、男爵では侯爵令嬢であるネッサ様とは釣り合わない。
しかし、魔族関連の事件解決に貢献し、上手くことを運べば爵位を上げてもらえることでしょう。
そうなれば、僕はネッサ様に婚約を申し込める。
婚約を申し込めたら……やっと、身分を気にせずに、堂々と彼女に〝好き〟と伝えられる。
「特殊部隊の業務に加え、第三部隊への協力……色々と忙しいですが、ネッサ様を手に入れるためならば頑張れそうです」
隣にいる中佐は僕の発言に顔面蒼白……多分、ハイエナがネッサ様を気に入っているという噂が本当であったことに驚いているのでしょうけど。
僕は気にすることなく……クスクスと笑みを零しながら、愛しい少女の姿を思い出していました。
あぁ……ネッサ様のことを考えたら、会いたくなってしまいました。
学生であり、侯爵令嬢でもあるネッサ様もお忙しい身でしょうし。
いつ事件の情報が入ってきてもいいように、暫くは僕も軍部から離れづらくなりますから……あまり会えなくなってしまいますよね。
でも……彼女がこちらに会いに来てくれれば、会う時間ぐらいは捻出できるでしょうか。
…………会いに来て欲しいと言ったら、会いに来てくれますかね?
こうして、ネッサに会いに来てもらったトイズなのであったwww




