第53話 愛は世界を救うというのは強ち間違いではない
なんかクライマックス感が半端ないですね。
この作品は、三部作構成で……このままもうちょい一部目を進めるか。
次の二部目に進むか。
他作品の「悪役令嬢派RPG〜」に集中するか。
同じく他作品の「悪役令嬢、五度目の〜」の番外編or同じ世界観で未来の話を書くかで悩んでいます。
ちょっと、今後この話をどうするかを考えるため……明日の投稿はしないかもしれないです。
よろしくどうぞ‼︎
あの後、どれだけ用意周到に準備していたのかと疑うような速さでクリストフ国王が退位されたわ。
先王となったクリストフ様は、いても邪魔だから辺境の地に追いやられたらしい。
まぁ、ほぼ幽閉に近いわよね。
でも、アリアドネ様は王太后として次の王妃様の教育係として後宮に残ることになったんですって。
一応、王太后様と次の王妃様の護衛は華姫さんが行うことになったらしいわ。
ブルーノ君の方は、ナハーム王国に騙されていたから……情状酌量の余地ありとして軍部預かり(所属)することになったんですって。
ルインが多く語らないから、深くは聞いていないけれど……軍部に所属したってことは監視を兼ねているんだろうとは思っているわ。
ナハーム王国の方は、食糧難らしいけど……戦争を仕掛けようとしてきたのは向こうだから、何も対応をしないのはそれはそれで問題になるらしいわ。
だから、国の重臣さん達(何故かトイズ様も参加していた)が迷惑料と称してナハーム王国から賠償金を生かさず殺さずレベルまで絞り取った……って、トイズ様が嬉々として語ってくれた。
………その時のトイズ様の笑顔は、かなり黒くて。
…………怖いと思ったのはここだけの話よ。
そして……最後にアイラ。
アイラはまぁ……そうね。
精神は大丈夫だったんだけど、ルインの制御版《穢れの王》モードにトラウマになってしまったみたい。
世界を滅ぼせる存在から敵意を向けられたらそうなるんでしょうけど。
速くルインから離れたくて。
でも精霊姫の力を制限(具体的には精霊術の使用不可、精霊達による精霊力の自動回収らしい)をかけるためにルインに会ってまた大号泣。
制限後、私に「ルイン様を好きとか言って申し訳ありませんでした。本当に申し訳ありませんでした、ごめんなさい」……と、土下座で謝罪をしまくってから凄まじい速さでナハーム王国に逃げたわ。
……概ね、無事に終わったと思う。
…………多分。
という訳で。
今日はなんだかんだと、地味にとばっちりを受けたクリストファー新国王陛下へのご褒美の準備をしているの。
「胃痛国王へのご褒美にカサン子爵家のセシリー嬢を妃にしたいので……我がエクリュ侯爵家の養女にさせてもらえないでしょうか?」
カサン子爵家に訪れた私達は、早速本題に入っていた。
ほんわか〜とした雰囲気のカサン子爵夫妻は、急に訪れたあの超危険人物から言われた言葉に気絶しそうになっている。
セシリーさんは絶句ね。
ちょっと可哀想ね。
「えっと……セシリーを、ですか?」
「えぇ。国の重臣達も問題ないとおっしゃってます。というか、ウチのハイエナが納得させました」
「「えっ⁉︎」」
……そういえば、そんなこと言ってたわね。
王宮侍女として働いていたから、必要最低限の教養、礼儀作法は問題ないし、ドラゴンスレイヤー……半精霊が当主であるエクリュ侯爵家の養女になるのなら身分も問題なし。
外交に関することは、アリアドネ王太后様がフォローして下さるし。
加えて、クリストファー陛下の専属侍女でもあったから……陛下の胃を労ってくれるのが一番重要なんですって。
なんか、クリストファー陛下=胃痛になってるわよね(笑)。
まぁ、とにかく。
アリアドネ王太后様じゃないけど、地味に大変な陛下へのご褒美として、好きな相手と結婚ぐらいさせてやろうと……なんか満場一致で許可が出たらしいわ。
「いや……あの……わたくしは……ただの侍女で……」
「でも、陛下はセシリーさんのこと好きらしいよ?」
「…………え?」
「王族だから政略結婚相手である精霊姫に真摯に接しようとしてたらしいけど……今はもう問題ないし。クリストファー陛下って地味にとばっちりだろ?だから、せめて好きな相手と結婚させてやるぐらいのご褒美があっても良いかなって」
「っ⁉︎」
ボンッ‼︎
セシリーさんの顔から湯気が出そうなほどに真っ赤になる。
あら?この反応は……。
「セシリーさんも陛下が好きなの?両想い?」
「えっ⁉︎」
「あらあら〜……」
カサン子爵夫妻は目を丸くして驚いているけど、私はついニマニマしてしまう。
セシリーさんは顔を赤くしながら、目を逸らした。
「いや…好きというか……その……ほら‼︎王子様ってのは憧れるものじゃないですか⁉︎キラキラしてて‼︎」
「ふふふっ……胃痛持ちで全然王子らしくないところを見せまくってるってクリストファー陛下から、情報収集済みよ?」
「ふぁっ⁉︎」
よし、これは問題はなさそうね。
カサン子爵はそんなセシリーさんの姿を見て……恐る恐る聞いてきた。
「あの…もし、セシリーが王妃になったとして。セシリーは大丈夫なのでしょうか?」
「ん?」
「その……身分差と言うものが……」
「あぁ、大丈夫だよ。王宮での護衛は近衛騎士団がいるけど、王宮精霊術師団の華姫も協力してくれるらしいし。それに、半精霊である俺が養父になったら、他の貴族達も文句言えないよ?俺を敵に回してまで害そうとは思わないだろうしね」
ルインはニコーッと笑う。
確かにあんな姿を国中に流したら……ルインと敵対しようと思う人はいないでしょうね。
「セシリーはどうしたい?」
「え?」
「身分とかは考えないで……セシリーは好きな人と結ばれたいかい?」
カサン子爵は、優しい声でセシリーさんに聞く。
彼女は……そっと目を伏せて、答えた。
「………貴族の娘である以上…政略結婚が当たり前だと思っています。でも……」
「でも?」
「……できることなら、好きな人と結ばれたいです……」
カサン子爵はそれを聞いて頷く。
そして、ルインを見つめた。
「では…エクリュ侯爵。我が娘をお願いします」
「お父様っ⁉︎」
「話が早いねぇ」
「まぁ……娘の幸せを願わない親はいないので。どうかセシリーのことを、よろしくお願い致します」
カサン子爵夫妻は優しい笑顔を浮かべながら、頭を下げる。
………ルインの危険さを知っているでしょうに、そんな風に普通に接してくれるのは……お二人の人柄の良さね。
私達は互いに顔を見合わせて、頷いた。
「畏まりました。カサン子爵家の大事な娘さんを、お預かりします」
「セシリーさん。私達は実の親に会うなとか、何かを制限する気はないわ。いつでも会いに来てさしあげてね」
「………………はい……はいっ…‼︎」
セシリーは嬉しそうに微笑んで、カサン子爵夫人に抱きつく。
こうして、エクリュ侯爵家に新しい家族……養女が来ることになったわ。
*****
柔らかな日差しが差し込むサロン。
ノートン伯爵家を訪れた私は、紅茶を飲みながらイヴリン(互いに呼び捨てをしあう仲になった)とお話していた。
「なんかゲームとは全然違う結末になりましたねぇ〜」
「そうね。一年も経たずに終わっちゃったわ」
同じ転生者で私より知識の多いイヴリンは苦笑する。
本来なら、一年かけて……攻略対象達と交流し、アイラは《穢れの王》を浄化するはずだった。
でも、そんなことになる前に終わった。
まぁ、その前に色々と環境が変わっていたのだけどね。
私とルインの結婚、ネッサ様とトイズ様の婚約、イヴリンとアダム様の結婚……。
本当、色々とゲームの設定と変わってるわよね。
………って、そうだわ。
「ねぇ、思ったのだけど」
「なんですぅ〜?」
「アイラって最終的に《穢れの王》を浄化するわよね?なんであの時はあんなに凄い拒絶反応を示してたのかしら?」
「…………確かに……」
最終チャプターではアイラは普通に《穢れの王》の前に立っていた。
なのに、今回は立てていなかった。
それはちょっと変よね?
『なら、俺が解説しよっか?』
「「…………え?」」
ふわりと宙からテーブルに降り立つモノ。
それは、デフォルメされたちびルインだったわ。
「ル…ルイン……?」
『そうだよ?』
ちびルインはニコーッと笑う。
でも、ちょっと待って。
ルインは朝、軍部に出勤して……。
『あぁ、この姿は擬似精霊を介して見やすいようにしただけだから、俺の本体はちゃんと軍部にいるよ?』
「そう、なの?」
『そうなの。で、精霊姫が《穢れの王》にあんなに怯えてた理由だよね』
ルインはテーブルの上にあったクッキーを手に取り、食べ始める。
なんか、小人がお菓子を食べてるみたいでちょっと可愛らしいわ。
『一言で言えば、攻略対象の影響だね』
「「は?」」
『もっと言っちゃえば……攻略対象との交流、恋愛感情が理由かな』
ルインは『《穢れの王》を吸収したことで知ったんだけどね』と前置きを置いて、話を続ける。
『よく俺の父さんが言ってる〝愛は世界を救う〟っての、強ち間違いじゃないんだよ』
「…………そうなの…?適当に言ってるんだと思ってたんだけど……」
『以前の俺も適当に言ってると思ったんだけどね……。精霊において愛というのは……うーんと。言葉にしにくいんだけど、燃料みたいな感じ?いや、レベルアップの素材?』
「………レベルアップ?」
ルインは考え込むように両手を組む。
すると、バランスを崩してコロンッと後ろに転がる。
………可愛い……。
ルインはいそいそと起き上がり、頷いた。
『精霊とちゃんと交流できる人から、愛情を注いでもらったりすると階級が上がったりするみたい。下級が中級とかね?つまり、愛ってのは精霊に何かしらの影響を与えるんだよ』
「………あ…もしかして……精霊寄りの感性を持つアイラも?」
『そーいうこと。精霊姫は恋愛をすることで、精霊寄りから人間寄りに変わるみたい。だから、《穢れの王》に相対しても精霊ほど怯えなくなるんだってさ』
「そうなのねぇ……」
つまり、あのゲームの攻略対象との恋愛も、シナリオの重要なファクターだったのね。
………なんか予想よりも深い意味合いがあって驚きなのだけど。
『まぁ、これでシエラの当て馬シナリオは回避できただろうし。シエラがこれから考えることはことは俺とイチャイチャすることだからね?忘れちゃダメだよ?』
「………もぅ、ルインったら」
『大好き、シエラ』
「私もよ、ルイン」
小さいからキスはできないけど、愛の言葉を交わしてルインは『また後でね』と言い残し去って行く。
「こんなにラブラブだったら、赤ちゃんができるのも直ぐですかねぇ〜?」
「さぁ、どうかしら?」
子供ができにくい種族の血を半分引いてるから、どうなるか分からないのよね。
まぁ、気長にいくとしましょう。
私達は、ずっと一緒にいるんだもの。




