第16話 幸せと悲しみが同時に来た日
イチャラブと、シリアスが同時にきます。
えぇ、なんかなんでこうなったかなぁ……って感じです。
よろしくどうぞm(_ _)m
まぁ、そんなこんなで?
舞踏会に戻った私達は、ダンスを踊ったり……貴族の皆さんと挨拶したりと普通に対応したわ。
まぁ……ルインにビビってる人(特にルインに目を♡にしてた令嬢達。女性だからかしら?)が多かったけど……私が絡まなければルインは好青年だから(男性陣のみ)ね。
徐々に慣れてもらえたわ。
でも、それにつられてルインと繋がりを持とうする人もいたから……そういうのは私が対処させてもらったわ。
何をしたって、ひよこ父と同じように貴族的な駆け引きをしただけよ。
おかげで、私が未来の侯爵夫人という立場に収まることに納得したみたい。
というか……ルインを抑えられるのが私だけだからね。
文句も言えないでしょうけど。
「シエラ、踊ろうか」
舞踏会とあって、暫くしたらワルツが流れ出した。
国王夫妻や王族の方が踊り出し、それに伴って貴族達もダンスホールの中央に輪を作る。
私はルインに手を引かれてそこに参加したわ。
「ルインは踊れたのね」
「うん、まぁね。準備の時に一応、教わってたんだ」
つまりあの短時間で覚えたってこと?
素人にしては凄く上手なのだけど……。
「シエラと踊りたかったから頑張って覚えたんだよ?」
「あぅ……」
照れるような笑顔でリードしてくれる彼に、私の胸がキュンっとする。
嬉しくて……堪らない。
「ルイン」
「なぁに?」
「大好きな人とダンスを踊っていると……お姫様になったみたいだわ」
「…………ふふっ」
ルインは優しく微笑んで、私の身体を強く抱き寄せる。
そして、蕩けるような甘い声で囁いた。
「シエラは俺の……ただ一人のお姫様だよ」
ルインはそう言って、私の頬にキスをする。
そして……グイッといきなり、私の身体をお姫様抱っこした。
「きゃあっ⁉︎」
「ごめん、攫うね」
「えっ?」
淡い光に包まれて、思わず目を閉じる。
次に目を開けた時には……そこが一面の花畑になっていたわ。
月夜が照らす《精霊の花園》。
それはどこか幻想的な風景で……その景色に見惚れていたら、ルインがゆっくりと降ろしてくれた。
「ルイン?」
「シエラ」
真剣な眼差しで見つめながら、彼は跪く。
そして、騎士のように恭しく……私の手を取った。
「やっぱり、ちゃんと言わなきゃいけないと思うんだ」
足元に生えた一輪の花を摘み、彼は私の左手の薬指にくるりと巻きつける。
一瞬、光り輝いたと思ったら……。
「っっ‼︎」
そこには光り輝く花をモチーフにした宝石の煌めく、指輪が輝いていたの。
翡翠に近い色だけど、光加減では七色にも見える不思議な宝石。
とても綺麗で見惚れてしまう。
「シエラ・ジキタリス嬢」
ねぇ、こんなことをされたら嫌でも分かってしまう。
私は高鳴る鼓動を感じながら、彼を見つめた。
「わたし、ルイン・エクリュは生涯でただ一人、貴女だけを愛し抜くと誓います。どうか結婚して下さいませんか?」
精霊に導かれて一目惚れして。
ずっと一緒にいて。
身分という差があって、なかなか婚約関係になれなかったけど……やっと今日、堂々と皆の前で貴方の手を取れる。
「勿論ですわ、ルイン様。どうか私を貴方の妻にして下さいませ」
前世含めて人生初めてのプロポーズは、とってもロマンチックで……幸せだった。
*****
「どういうことか説明してもらおうか」
翌朝。
ジキタリス伯爵家の応接室で、向かいのソファに座ったお父様が凄まじく険しい顔で私達に問うた。
え?何したって?
………………朝帰りしたのよ。
えぇ、本当ならしちゃいけなかったのだけど……ねぇ?
昨夜はプロポーズされたから、盛り上がっちゃって……まぁ、精神年齢は成人済みだからセーフだと思ってるわ。
あ、ちゃんとこの間のご褒美のお風呂でイチャイチャもしたのよ?
洗いっこをして、ルインに抱き締められるようにして浴槽に入って……またイチャついて。
と、いう訳で朝帰りな私達にお父様からお説教中です。
「………まさかとは思うが…最後までしてないだろうな……?」
「したわ」
「なぁっ⁉︎」
サラッと肯定した私にお父様は絶句する。
でも、私は堂々と宣言した。
「ルインと結婚するのは決定してるんだから、ちょっとフライングしただけよ」
「そういう問題ではないっ‼︎貴族令嬢としての……」
「愛する気持ちは止められないのよ、お父様」
というか、前世の記憶があるから……身持ちが固くなきゃいけないとか思えないのよね。
それに、ルインが好きだから私は彼が欲しかったの。
仕方ないでしょう?
「大丈夫です、ジキタリス伯爵。俺は必ずシエラを妻にしますし……俺は半精霊です。簡単には妊娠できないと思いますから、お腹が大きい状態でヴァージンロードを歩くことにはならないと思います」
「そういう問題ではないだろうっ⁉︎結婚前に肌を重ねるなど……貴族として……」
「何言ってるの、お父様。ルインはハーフエルフよ?貴族的なルールなんて当て嵌まる訳ないでしょう?婚前交渉が駄目っていうのは人間の貴族のルールなんだから」
元々、ルインの基準を人間のモノに当て嵌めて考えるのは違うと思うの。
それに、相思相愛で婚前交渉しちゃっただけだし……………問題ないと思うわ。
『シエラ〜』
お父様と睨み合いに近い形で顔を合わせていたら、精霊達が声をかけてきた。
どうしたの?と聞き返したら、彼らは扉の方を指差した。
『シエラのお母さん、あの人と一緒に来るよ〜』
(……そう…ありがとう)
とうとう、この日が来たらしい。
その時、トントントン……と静かなノック音が響いた。
「………入れ」
お父様が怪訝な顔で入室を許可する。
そして……大きく目を見開いて、固まった。
「…………ラティナ……」
そこにいたのは亜麻色の髪に、葡萄酒色の瞳を持つ女性。
そう……私のお母様だった。
「…………お久しぶりですわ、シーレンス様」
お母様はゆっくりと挨拶をする。
そして、私の方へ視線を向けて……喜ぶような、苦しむような複雑そうな顔をした。
「………久しぶりね、シエラ」
「ご機嫌よう、お母様」
私がその名称で呼べば、お母様は悲しげに顔を歪ませる。
その視線は隣にいるルインにも向けられて……大きく目を見開いた。
「随分と…顔が綺麗なのね」
「………ハーフエルフなので。お初にお目にかかります。シエラ嬢の婚約者であるルイン・エクリュと申します。どうぞお見知り置きを」
「………侍女から話は聞いてるわ。婚約、おめでとう」
「「ありがとうございます」」
私達がお礼をすると、お母様はお父様へと視線を向ける。
お父様はやっと部屋から出てきてくれたお母様の姿に泣きそうに……嬉しそうにしていたが、私は知っている。
これから、何が起こるのかをーー。
「シーレンス様」
「ラティナ……やっと、部屋から……」
「わたくしはずっと、シエラのことが気がかりでしたわ」
「…………?」
「ですが、無事にシエラの婚約が成された今、離縁させて頂きますわ」
「…………え?」
その言葉と共にお父様の顔から表情が抜け落ちる。
しかし、それを分かっていた私は、にっこりと微笑んだ。
「まぁ、おめでとうございます。お母様」
「っ⁉︎」
「っ‼︎どういうことだシエラっ‼︎」
あら?あの人は話してなかったのかしら?
お母様まで驚いてるわ。
どういうことも何も……だってこれは全て私が仕組んだことなのよ?
「隠れていらっしゃらないで出てこられたら?リチャード様」
「………何故、それを……」
「……あぁ…やっぱりバレてましたか」
驚いた顔のお母様の後ろから現れたのは、茶髪に茶色の瞳という至って普通の容姿の男性。
彼の名前はリチャード・マクフォーレ。
マクフォーレ商会の代表であり、お母様の幼馴染。
「えぇ。だって、リチャード様を出入り商人として我が家に招待したのは私だもの」
「「えっ⁉︎」」
お父様とお母様の声が重なる。
まぁ、簡単に言えば……お母様はこのままこの屋敷にいれば、自殺して死んでしまうのよ。
シナリオでも自殺したという台詞が出てきただけで、理由は分からないけれど……多分アイラ関係なんでしょうね。
だって、第二夫人のことが原因で引き篭もるような心が脆い人なのよ?
なら、そうならないように……してしまえばいい。
だから、私は昔から今もずーっとお母様に恋慕を抱いているリチャード様を呼んだの。
「いきなり、出入り商人が家に来るようになったのをおかしく思いませんでしたか?お父様がお呼びしたとお思いでしたか?お父様だったなら、お母様の幼馴染の方をお呼びしませんわ。お母様に他の男を近づけようとしませんもの。全て、私が仕組んだことですわ」
………お母様とリチャード様が想いを通じあえるかは賭けだったし……。
一応、私が家を出て行くまでにはカタをつけようと思っていたのだけど……それが一年ほど早まっただけ。
多少の誤差は予想範囲内ね。
精霊経由で事情を知ったルインは、私に優しく微笑む。
その笑顔は、私の味方だという合図。
この笑顔があるから、私は全てを明かせるわ。
たとえ……お父様に恨まれようとも。
「何故っ、そんなことをっ……‼︎」
「ねぇ、お父様。お父様はお母様への申し訳なさでお話しされることも、積極的に会うこともしなくなられましたわ」
「っっ‼︎」
「全てを知っている私が行動すれば何か変わったかもしれませんが、その行動ばかりはお父様自身の意思でしなくてはならなかった。私がお父様に助言をしたのなら、お父様は私の言いなりになってお母様に接したことになってしまいますもの」
本当は私がお父様とお母様の仲を取り持つこともできた。
でも、お母様は永遠に苦しむことになるわ。
だって、娘に言われないと動けないなんて……自分の意思で行動してくれなかったっていう裏付けなんだもの。
お母様への愛があっても、自らの意思での行動が伴わなくちゃ意味ない。
同じ女として、それだけはできなかった。
家に招いたのは私だけど、それからは何もしていない。
つまり、二人が愛を育んだのはリチャード様の行動の結果。
上手くいったから良かったけど、本当は………保険だったの。
もしも……お父様がお母様の悲しみを拭えなかったら。
このままジキタリス家にいたら、自殺してしまうから。
お母様が自殺してしまうくらいなら……彼にお母様を攫ってもらおうと思って。
そして、今、彼はお母様をこの苦しい鳥籠から連れ去ってくれる。
「お父様と一緒にいると、お母様は幸せになれませんもの。なら、他の人に攫ってもらうしかないでしょう?」
「なっ……⁉︎」
多分だけど……お母様はお父様を見るのが辛いんだわ。
だって、誓いを裏切られた。
ただ一人だけを愛するという約束を破られた。
だから、お父様と共にいるのは辛いと思うの。
そして……それはお父様と愛し合った結果である私を見るのも、同じで。
「リチャード様」
「…………はい」
「お母様をお願い致します」
私は立ち上がって頭を下げる。
暫くの沈黙の後……リチャード様は優しく聞いてきた。
「………君も、一緒に来ますか?」
「リチャードっ⁉︎」
「ラティは言っていました。母親として君と接することができなかった。ちゃんと親子として触れ合わなければいけなかった、と……」
………そんな風に思ってらしたのね。
でも、多分それは叶わない願いだわ。
だって、お母様は弱い方だから。
「いいえ、それは駄目ですわ」
「………何故?」
「私が共にいるとお母様はお父様を思い出してしまう。私はお二人の愛の結果。…それと同時に……憎しみの象徴なのですから」
私が共にいる限り、お母様はお父様を思い出してしまう。
それなら全て置き去りにしてリチャード様と幸せになって欲しい。
…………私の血の繋がったお母様なんだもの。
死んで欲しくないから、ここに全てを置いて行って。
「お母様」
「………シエラ…」
「産んで下さり、ありがとうございました。どうか、幸せになって下さいませ」
この言葉は本心なのよ?
だから……そんな悲しそうな顔をしないで、お母様。
「シエラっ‼︎わたしの許可なくそのようなことをっ……」
「黙って下さい、ジキタリス伯爵。貴方は、シエラが悩まないでこんな決断をしたとお思いですか?」
激昂しそうになったお父様を制止してくれるルイン。
………やっぱり、ルインにはバレバレね。
前世の記憶があるとしても、私はシエラだもの。
………少しぐらい、お母様と親子として触れ合いたかった。
それは……私も同じなのよ。
でも、それ以上にお母様に死んで欲しくないの。
だから、私は……。
「ねぇ、お父様。お父様はずっとお母様を苦しめていたのよ。なのに、まだ苦しめるの?お母様を……自由にして差し上げないの?」
その言葉に、お父様が諦めたのが見て取れた。
恨まれることになろうとも、人が死ぬよりよっぽどいい。
本当はもっと上手く立ち回れるはずだったけれど……私は第二夫人とアイラに憎しみを抱くお母様を見たくないから。
だから、ここからいなくなってもらう。
「ラティナ……」
「……離婚届は実家を通させて頂きますわ」
これで道は決まった。
精霊達にリチャード様の人柄を教えてもらって、きっとお母様だけを愛してくれる誠実な人だと判断したから大丈夫なはず。
お母様はもう自殺しない。
私も結婚して早く家を出て行くんだから、お母様がいなくなるのも大丈夫。
………この家は、お父様と第二夫人、アイラの住む場所になる。
「シエラ」
「……はい、お母……ラティナ様」
「ごめんなさい……」
「謝らないで下さいませ。私が勝手にしたことですから」
悲しげな顔をするお母様。
私は優しく微笑んで送り出す。
「ありがとう。わたくしは確かに、貴女を愛していました。それだけは……覚えていてね」
「………っ…」
でも、最後にそんなことを言われたら……。
去って行くお母様とリチャード様の後ろ姿を見た後、私はルインに抱き着く。
「頑張ったね、シエラ」
優しく頭を撫でてくれる。
それがどんなにこの言いがたい気持ちを慰めてくれるか。
「うっ……あぁ……」
「大丈夫、俺は君を裏切らないよ。精霊王に誓って」
「あぁぁぁぁあっ‼︎」
大好きよ、お母様。
たとえ、親子として一緒にいなかったとしても。
死んで欲しくないほどに……貴女は私の血の繋がったお母様だったの。
その日、私は……。
自分でしたことだというのに……大きな声で泣いた。
そして、また不定期更新始めます‼︎今日、同じ時間に更新しますね‼︎『悪役令嬢は乙女ゲームよりRPGゲームがお好みです。(タイトル仮)』というタイトル通りの話になる予定です(笑)
そちらもよろしくどうぞ‼︎




