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第9話 イチャつく二人は劇物です。


沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます‼︎

今後も緩く頑張ります‼︎

ちなみに……タイトルの意味は最後に分かりますwww


今後もよろしくどうぞ‼︎








『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA⁉︎』




………うわぁ……。



遠目で見てもルインがドラゴンをなぶっているのがありありと分かる。

ルインが纏う漆黒の闇が軌跡となって、縦横無尽に舞ってドラゴンの絶叫が響いてるんですもの。

凄いなぁ……と暢気に見ていたら、お父様がぎこちなくこちらを向いた。


「シエラ……」

「はい」

「ルイン殿は、大丈夫、なのか?」


そう聞かれて精霊達へと意識を向ける。


『ぎゃぁ〜‼︎ルインが暴走し始めてるぅぅぅ‼︎』

『シエラ、このままじゃやばいよ‼︎』

『ふぐっ……世界の歪みがぁっ……‼︎』


………そろそろ止めに行かないと止まらなそうね。

キレて理性が飛んでるみたいだから。

あ、ドラゴンが墜ちた。


「止めてきますわ」


私も外へと出て、精霊術を使用して空へと飛び立つ。

空から見れば、どうやら運良く中央広場に墜ちたみたい。


徐々に近づけば、ルインはドラゴンの血で真っ赤になっているし……ドラゴンは手足はないし、翼もボロボロ。

血もドクドク溢れてて……うわぁ、グロテスクぅ……。


「…………」


で、ルインはトドメと言わんばかりに何度も何度も、闇で出来た剣を無言で突き立てていて……うん、少し恐いわ。

直ぐに止めよう。



「ルイン」



ぴくりっ。

名前を呼べば彼の動きが止まり、緩慢な動きでこちらに視線を向ける。

その瞳に光はない。

浴びた血のような毒々しい色だけが、真っ直ぐに私を見つめる。

私は、ゆっくりと彼の隣に降り立って……柔らかく微笑んだ。


「もう…こんなに血塗れになって……綺麗な顔が台無しよ?」

「…………ぁ…」

「うふふっ、でもドラゴンスレイヤーになっちゃうなんて……流石はルインね?」


自分のドレスが汚れるのも気にせずに彼に抱きつく。

あぁ、血なまぐさい。

鉄のような匂いがする。

でも、これは私のため。

ドラゴンが私を喰らうと言ったから、ルインはドラゴンを殺した。

私のためならどんなモノでも殺しちゃうくらいに私のことが大切だから。

それが分かってるから、とても嬉しい。

少しだけ恐いと思うけど、ときめいてしまうわ。



「ルイン、ありがとう。大好き」



愛おしさが溢れて言葉に出せば、ルインの闇色の剣が消えて……その手が私の背中に回る。

至近距離で彼の瞳を見つめれば、徐々にその瞳に光が戻り始めていた。


「………シ、エラ……」

「えぇ」

「………俺……コレがシエラを喰おうとするから……殺さなきゃって……」

「うん、私のために殺してくれたのね。ありがとう」


彼の顔……特に口元を精霊術で綺麗にしてから、チュッと触れるだけのキスをする。

ルインは目を見開いて……そして、蕩けるような笑みを浮かべた。


「ふふっ、シエラからキスしてもらえるなら……コレを殺して良かった」

「あら?いつでもキスしてあげるわよ?」

「えーっと……それは程々がいいかな。襲いたくなっちゃうから」

「あぅ……」


少し照れたように頬を染めて告げるルインに、私の顔が熱くなる。

なーんて甘い感じにやってたら、いつの間にか周りに沢山の人が集まって来ていた。

王都に住む住民を始め、どうやら騎士団やら精霊術師団やら、軍部やらもいるみたい。

………って、一部の軍人さん達が呆然としている。


「エクリュ小隊長っ⁉︎」


そんな中で、第五部隊のエクリュ班の人達が驚いた声をあげる。

あー……まぁ、驚くわよねぇ。

軍部内でも脳筋に勝てるくらいの強さは見せつけてたけど、ドラゴンを単独討伐できるなんて早々いないものね。

ついでに金髪碧眼のキラキラした男の人も、目を見開いていた。


「シエラ、嬢?」


…………ん?誰?

怪訝な顔をしていたら、後ろの方から「殿下っ、前に出ないで下さいっ‼︎」と聞こえる。

人混みの中から出てきたのは、総帥(なんか老けた)とあの女男と、短髪の鎧を着た中年の男性。

三人の内、総帥と女男は私達を見て固まった。


「貴様は何者だ」


固まる二人を無視して、鎧を着た中年が剣を抜いてこちらに向ける。

その目はルインを向いていて。

え?軍部の服を着ているのにそれを聞くの?

盲目なの?


「……報告します。軍部所属第五部隊小隊長ルイン・エクリュ。ドラゴンを討伐しました」


そう告げた瞬間、精霊術師団のエルフ達が激怒した。


「貴様みたいな混ざり物があのドラゴンに勝てる訳ないだろうっ⁉︎」

「我らが何百年と勝てなかったのだぞっ⁉︎」


ぞわっ……。

再びルインの足元から闇が放出される。

あ、目のハイライトが消えてる……。

……折角鎮めたのにぃ……。


「ということはお前達はあのドラゴンの正体を知ってるってことだよな。いつの間にか生贄認定されてて、それにシエラも巻き込もうとしたんだぞ?どういうことだ?」


殺意を撒き散らしながら怒っていたエルフ達に歩み寄るルイン。

彼らはルインの威圧に押されて言葉を失う。

ガクガクとみっともなく震えて、顔面蒼白。

ここからでもブワッと汗が噴き出ているのが見て取れる。

うわぁ……自業自得ね。



「話せ、さもなくば殺す」



ルインの酷く冷たい声が響くと同時に、耐えきれなかったエルフ達はバタバタと倒れていく。

あぁ、今回はエルフに殺意を向けてるのねぇ。

他の人達は震えてるだけで、気を失ってないし。


「……あのドラゴンは……エルフの里を守ってくれる代わりに……五百年に一度、生贄を捧げる契約をしていた……ドラゴンです……」

「…………あ?」

「ですが、わたし達はルイン様が生贄とされた理由を知りません‼︎本当です‼︎どうかお助け下さいっ……‼︎」


地に額を擦り付けるように懇願するのは女男。

なんとか気を失わなかったエルフがそれを見て「何をしているのですかっ‼︎」と叫ぶ。

でも、ルインが一瞥すればそれは黙り込む。



「なぁ……俺は言ったよな。もしシエラに何かあれば俺はこの世界を滅ぼすって。あれは嘘じゃないぞ?」



現にドラゴンを単独討伐する力を見せつけてるからそれは嘘じゃないと総帥と女男は分かるでしょうね。

もうそろそろかな。


「ルイン、落ち着いて」

「……シエラ…」


ハイライトの消えた瞳で見つめられて、私は苦笑する。

私のためにそんな風になってると思うと、少し仄暗い優越感があるわね。


「これからどうするの?」

「……シエラを殺そうとしたんだ。エルフ全員を殺す」


その声はただ淡々と。

事実だけを述べていて。

だから、その場を凍らせるのには充分で。

でもね?私だって怒ってるんですよ?


「うふふっ、そんなことしなくてもいいわ。誰を敵に回したか……私が教えるから」


私の大切なルインを、殺そうとしたんだから。

というか、ついでに私も殺そうとしてくれたみたいだし?



「精霊達、協力してくれるでしょう?貴方達の大切な家族が理不尽に殺されそうになったんだから」



私の声に反応するように光が舞う。

そして、精霊達はニヤニヤしながら聞いてきた。


『お仕置き?』

『お仕置きするの?』

「えぇ……私の全精霊力を持っていきなさい」


身体から一気に力が抜ける。

でも、これから命じることをエルフ全員に作用させるためだもの。

必要経費だよね。



「全精霊に示すっ‼︎エルフの里において精霊力の受け取りは許可するが、現象の発動は許可しないっ‼︎また全エルフの精霊術を一年間、最低レベルまで低下させなさいっ‼︎」

『あぁ。精霊王の名において、承った』



あら?

その声に思わず目を見開く。

次の瞬間、凄まじい光の渦がエルフ達を包み……そして消え去った。

………精霊王、自分の息子が殺されかけて怒ってたのね。

私の精霊力を引き換えにしてるから、干渉については問題ないだろうし。


「………父さん……」


流石のルインも驚いたのか、呆然としていた。

というか、今の声全員に聞こえていたみたい。

皆が呆然と(エルフは絶叫)しているわ。

うふふふっ、ざまぁみろ。


「シエラ、無理しすぎだよ」

「あら……」


いつの間にかルインに抱き締められていて、その温もりの安堵感に身体から力が抜ける。

でも、後悔はしてないのよ?


「私のルインを傷つけようとしたんだもの。これぐらいしなきゃ。でも、だいぶ優しい処分だったかしら?」

「……俺のシエラも殺そうとしたから、その程度で済ますのは優し過ぎるよ。やっぱり皆殺しにしない?」


光の消えた瞳でそう言うルインの声は、とても本気で。

私は宥めるように彼の手を撫でた。


「だーめ。先にルインにご褒美をあげなきゃ」

「………ご褒美…?」


流石に皆殺しにさせる訳にはいかないから、ちょっとそっちから意識をズラしてもらいましょう。


「そうよ?私のためにドラゴンを殺してくれたんだもの。頑張ったルインにはご褒美がなきゃね?何がいい?何をして欲しい?」


ちょっと色気たっぷりで言ったら、彼は頬を赤くして(まだ、顔に微妙にドラゴンの血が残ってて赤いのだけど)……そして、恥ずかしそうに目を伏せながら答えた。



「その……もう一回…キス、したい…です……」



そう告げたルインは、胸がキュンキュンするほど可愛くて。

………はぅ…。

そんな可愛いこと言われたら勿論叶えてあげるに決まってるじゃないですか。


「んっ‼︎」


ルインの唇に唇を重ねて、ねっとりと濃厚なキスをする。

舌が絡み合ってちょっと人前でするような感じじゃなくなってきてるけど……ルインの瞳が蕩けてて、私まで昂揚してしまう。


「……んぁ…」


私達の唾液が糸を引いていて、ちょっと扇情的エッチかも……。

でも、これはご褒美というには微妙なラインかしら?

私は彼の唇につっーと指を添えた。


「……やっぱり、キスじゃご褒美にならないと思うの」

「………え…?俺にとっては…ご褒美だよ?」

「キスならいつでもできるから、これはご褒美じゃないわ」

「えぇ……そんなこと言われても……」


だってそうじゃない?

キスはこれからだっていくらでもできるし、するのが当たり前なんだし。

ご褒美は特別なことじゃないと。

「うーん…?」と悩むルインが少し可愛いから、その顔をもう少し見ていたい気分になったのだけど……特別なことと言えば……。

私はルインの耳元に唇を寄せて、甘く囁いた。


「なら、一緒にお風呂入りましょう?」

「………うぇっ⁉︎」

「もう、我慢しなくていいのよ?」

「えぇっ⁉︎」


ルインはそれを聞いて、目を大きく見開いて固まる。

今までずっとキスだけのプラトニックな関係だったけど……もう大丈夫なはず。

多分、今日のこの件で……ずっとネックだったルインの身分はどうにかなると思うのよねぇ。

だって、強い力を持つ人がいたら、偉い人達はその人にこの国にいて欲しいから……色々と優遇するでしょうし。

だから、多少フライングしても問題ないわよね?


「丁寧に、洗ってあげる。じっくーり…身体中……私の手で、ちょ・く・せ・つ・に」

「っっっ⁉︎」


敢えて〝どこを〟とか言わないでおいたら、ルインは何を想像したのか一気に顔を真っ赤にした。

ボンッ‼︎……という効果音が似合いそうなほど赤いルインは、その言葉に動揺したのか、私を抱き締めて動かなくなってしまう。


そんな彼に私がクスクス笑っていたら……。



『くそぉぉぉぉぉぉぉおぉっ‼︎』




……………なんか一部の人達の悲痛な叫び声が響いたわ。









泣いたのは、独身達。


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