18話 理不尽に出会う悪魔乗り
治療を受ける綾乃は目を覚ます。
どうやら彼女は生きていた様だ。
だが、そんな時……美月の容態が急変したようだ。
自分よりも彼女を助けてと願うも信じられない言葉を医師は告げた。
しかし、彼がそう言った後、一人の女性が現れ……彼女のお蔭あって、美月の治療は始まった。
安堵した綾乃は彼女に魔法による治療を受け……やがて目を覚まし……彼女との出会いを果たすのだった。
綾乃は彼女から逃げるようにその腕を振り払うと患者衣を整えます。
酷い目に遭った! 綾乃はそう思いながら女性を睨みます。
すると女性は鼻を鳴らし……。
「まさか会いに行こうとしてたのか、理解出来んな、あの小娘はもう起きないと聞いている」
「まだ起きないの間違い!」
彼女に食って掛かると冷めた瞳で睨まれ、綾乃は思わずびくりと身体を震わせます。
先程もそうでしたが、この女性はキレやすく魔法使いにしては腕力があったのです。
綾乃ぐらいだったら簡単に抑えられる程度には強いのです。
それなりに鍛えてるんだけど……。
納得いかない、そう思いながら綾乃は頬を膨らませました。
だが、それでは何の解決にもなりません。
彼女は大きく溜息をつきます。
「それで、アンタは誰?」
「貴様の上司になる。本当はあの小娘もだったが……使い物にならないのではな」
その言葉に綾乃はいよいよ怒りました。
「つ、使い物にって美月を道具扱いしないで!! あの子は優しい子なんだ!!」
「優しいからなんだ? 戦場で役に立つこそが兵士として必要な事だろう?」
それはその通りでした。
ですが、綾乃にとって美月という少女はそれだけではないのです。
「あの子が居るから生き残ろうって考えた! 優しいから……死ぬなって言ってくれたから! そう言うのも必要でしょ!!」
彼女は叫ぶように訴えますが、それを聞き女性はますます冷めた目をし始めました。
「そうか、なら……貴様はそのお優しい美月という少女に死ねと言われたら死ぬのか?」
「は? 美月が言う訳ないじゃん」
何を言っているのだろうか? そう思い思わず返すと彼女は烈火のごとくその瞳に焔を灯らせたように睨まれてしまい。
「きゃ!? ぐぅ!?」
綾乃を壁へと押し当て、首を押さえてきました。
「言う訳が無い? それはどうして分かる? 人の腹の中は分からん、生き残れと言いつつ見捨てる。そんな人間は腐るほどいる。信じられるのは己の力のみだ。現に貴様はどうだった? 貴様の危機にあの小娘はいなかった違うか?」
「そ、そんなの……倒れてるんだから……仕方、ないでしょ……」
そう呟くと彼女は拘束を解き「ふんっ」と鼻を鳴らします。
「愚かだな……実に愚かだ……仮に小娘が起きたとして戦える訳が無い。一度受けた恐怖はそう簡単に拭えるものじゃない」
「美月を……あの子を知らない癖に勝手に憶測で言わないでくれる?」
綾乃はまた首を絞められるのでは? とも思いましたが、そう口にしました。
何故なら彼女の言葉が納得できなかったからです。
助けてくれたことはありがたいとは思いました。
それでも美月を馬鹿にされたりするのは許せないのです。
「……ほう、貴様はあの小娘を信じると?」
「当たり前でしょ? あの子は何時だって助けてくれた!」
綾乃の中では美月は神よりも神らしい少女でした。
女性から目を離さずにそう言うと彼女は口元だけを歪ませ笑います。
「良いぞ……その目だ」
「は?」
何を言っているのか分からない綾乃は思わず低い声で一言を発しました。
「戦場で生き残れん奴は先走った馬鹿か、運が悪いか……」
「…………」
彼女はそう言うと一つ呼吸を置き口にします。
「仲間を信じられない屑だ」
さっきと言っている事が違うじゃん!
そう思った綾乃でしたが敢えて黙っていると……。
「貴様はそれを分かっているのか、それともそれが本能か……それは分からんが、見込みがある」
「み、見込み?」
状況を理解が出来ず綾乃は首を傾げました。
すると彼女は今度は目元も笑ったようになり……それは思いのほか優しい笑みでした。
「そうだ、だから私が鍛えてやる。聖女が目覚めるまでここを守れるようにな……勿論、駄犬貴様自身も守れるように、だ」
「……はぁ!?」
一体なにを言っているのか、綾乃は思わず呆れた声を出しました。
何せ彼女の事は知りません。
なのに鍛えてやるという上から目線が彼女は気に喰わなかったのです。
「一体アンタ何を言って……」
「さぁ、来い! 聖女はまだ目覚めんのだろう? なら時間が惜しい」
そう言って女性は綾乃を引っ張ると……。
「へ? ちょ、ちょっと待って、ひ、引っ張んないでって!! って駄目、ちょ!? また見え!?」
颯爽と歩き始め、慌ててついて行く羽目になった彼女は必死に患者衣を押さえます。
しかも、今度はすれ違った人に見られ――。
「こ、こっち見るな! 変態!!」
鼻の下を伸ばしている男性に向かって怒鳴り声をあげました。
だというのに彼女は止まってくれません。
カツカツカツという音を立てながら施設の中を歩き回り……。
ようやくたどり着いた場所は……。
「もう、なんなの……」
シミュレータールームでした。




