62話 友人に助けられる少女
人を傷つけてしまった美月。
だが、彼女に課せられた罰は軽いものだった。
予想外の事に美月も新谷も驚くのだが……。
司令官の下した判断に美月達は受け入れるほかなかった。
美月はそれからすぐに部屋へと戻りました。
これからは大人しく部屋の中に居なくてはなりません。
美月にとっては苦痛ではないはずでした。
「……綾乃ちゃん」
ですが、綾乃と仲良くなった美月にとってはそれが苦痛に感じました。
好きな時に会いに行けない。
ただそれだけで、辛いのです。
折角で来た友達なのに……。
そう思ってしまうほど、彼女の中では後悔が生まれました。
なぜ、あの時、魔法を使ってしまったのか?
なぜ、あの時、我慢が出来なかったのか?
なぜ、あの時、すぐに引き返さなかったのか?
「私……本当に化け物だ」
これでは綾乃の兄を殺した化け物と同じだ。
美月はそう思い、ベッドに横たわると枕に顔をうずめ、涙を流します。
そして、彼女は気づいてしまいました。
「化け……物……?」
そう、あの時ことを思い出しながら……気が付いてしまったのです。
誰よりも自分が魔法使いの事を化け物だと呼んでいる事に……。
「あ? あああ?」
そんなつもりはありませんでした。
寧ろそうならないために人を助けようとしていました。
ですが、そんな事をしている自分こそが自分が化け物だと思っているのです。
普通とは違う……けど、人を助ければ化け物じゃない。
裏を返せば自分は化け物だから人を助けてそう呼ばれないようにしたい。
そう……美月は無意識の内にそう思い。
いえ、最初は気が付いていても気が付かないふりをしていたのです。
そして、何時しかそんな事も忘れ、ただただ化け物と呼ばれるのを怖がっていた。
「嘘、違う……私は……違う……」
自分が助けた人達は確かに笑みを浮かべた。
ですが、中には魔法を悪い事に使う人が居ます。
そう言った人たちの事を化け物と呼ぶ人々……。
その時は美月を知る誰もが彼女を化け物などと呼んだ事は無かったのにも関わらず。
美月は美月を化け物だと思い込んでいたのです。
だからこそ、人を助ける事に固執し……。
「私は……化け物だ……」
人で居ようと考えていたのです。
それは考え方こそは違いますが、自分の為に魔法を使う彼らとなにが違うのか?
美月はそこに気が付いてしまい。
ガチガチと歯を鳴らし増しました。
「私は……」
美月は思わずつぶやき、震えます。
すると――。
「人間なんだから自分の為にってのはおかしくないよ」
優しい声が聞こえ、美月は思わず顔をそちらへと向けます。
「まったく、ノックしても返事しないし、勝手に入っちゃったよ」
呆れ顔の少女は美月の横たわるベッドへと座りました。
「で? あのバカ達、美月に何したの?」
「私が化け物だから……」
美月がそう言うと綾乃は目を丸めました。
しかし、すぐに呆れた顔をした彼女は――。
「こんな可愛い化け物が何処に居るの? 映画? さっきも言ったけど人って結構勝手だよ? 自分の為にって普通だから、それでも人を助ける事をしてきたんでしょ? 例えそれが偽善でも続けていれば善でしょ?」
綾乃はそう言うと美月の頭を撫で始めました。
そして、歯を見せて笑うと……。
「分かった、綺麗な髪なのに前髪で顔隠してるから暗い気持ちになるんだって! 今から直しに行こう?」
「え!? なんで突然、それに……私」
謹慎中。
そう言おうとすると綾乃は――。
「女の子のおしゃれは緊急事態なの! それにまだ全体に話は行ってないし、黙ってれば分からないって!」
「で、でも!? 私がおしゃれなんて!?」
似合わないよ。
美月はそう言おうとしましたが、強引に連れられて行き何も言えませんでした。
すると綾乃は施設の中にある美容院へと真っ直ぐ歩いて行きます。
美月を気遣って歩いているのでしょうが、気持ちが焦っているのか早足になっていました。
当然、美月は息を切らし始め……ようやく止まった所で綾乃は美月の様子に気が付きます。
「み、美月!? ご、ごめん……」
「だ、大丈夫……だよ」
息を切らしながらも笑みを浮かべた美月。
走るよりは楽なので少し待てば回復しました。
すると綾乃は美月を部屋の中へと入れ……。
「さっ! 早速髪をそろえようか」
と笑うのでした。
暫くし、美月は鏡の中に映る自分を見つめていました。
髪を切ると言っても毛先を整え、目を覆っていた前髪を整えただけです。
「………………」
嘗てよく好まれていたドラマや漫画と言ったものなら「これが私?」なんて言う言葉が紡がれたでしょう。
ですが、美月は驚いたような声を出し……ずっと鏡を見つめているだけです。
「印象変わるっしょ? 髪は色染めちゃうと美月には似合わないかもだからそのままねっ!」
綾乃の言葉に鏡を見つめたままコクンと頷く美月。
すると目の前の少女も同じように頷きました。
「……凄い」
ようやく出せた言葉はそれだけです。
色んな感情があふれましたが、それでも美月は今までの自分とは違う自分がそこにいる事を凄いとしか言葉では表せませんでした。




