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61話 処遇を決められる少女

 新谷へと事の顛末を話す美月達。

 美月は無意識の内に魔法を使った事を告げ、二人の女性は殺されかけたと告げる。

 新谷は三人の話を聞き、取りあえずその場では美月を連れて行く事にしたのだった。

 新谷に連れられた美月は以前訪れた部屋へと足を運びます。

 そこには硬い表情をした司が居ました。

 彼は美月の方へと目を向けると――。


「夜空くん……」


 美月の名を呼びました。

 恐らくは何らかの方法で先程の事は知っているはずです。

 美月は身構えると、彼は大きなため息をつきました。


「いくら身体が弱いとはいえ、魔法は強力な物だ」

「はい……」


 そんな事は分かっていました。

 ですが、美月は無意識の内に使ってしまったのです。

 仕方がない、そう口にする者も魔法使いの中には居るでしょう。

 でも、美月は違いました。


「分っています、無意識とはいえ、使ったのは私です」


 そう口にすると美月が自分自身が恐ろしく感じました。

 無意識の内に人を傷つけた。

 今までなら無かったことです。

 いえ、寧ろ今までなかったことが不思議でした。

 ですがよく考えてみれば、人との交流を避けてきたのですから当然と言えば当然なのかもしれません。


「いや、私も甘かった、綾乃からは言われていたんだ……追い出すようにと、だが……あの子達も優秀な人材でな、そう切る事は出来ないと思っていたんだが」


 彼はそう言うと申し訳なさそうな表情を浮かべて頭を下げます。


「そ、そんな、私が悪くて……」


 美月は思わず慌ててそう口にしました。

 すると彼は頭を上げ……。


「……あの二人の処遇はもう決まっているが、問題は君の処遇だ。この施設には他にも魔法使いが居る」


 彼の言葉は美月の胸に刺さります。

 つまり、今回美月が起こした事が公になれば他の魔法使いたちにも迷惑が掛かるという事でしょう。

 ですが、隠す訳にもいかないはずです。

 何故なら……。


「今回は私の目を盗んだ者達の差別、および実害だ……君達魔法使いを守る為にも黙っている訳にはいかない」

「そうは言ってもどうするんですか? このままじゃ夜空ちゃんはジャンヌに……」


 新谷は途中で言葉を止めました。

 美月は彼の言いたい事は何となく理解しました。

 以前、美月が掛けられた裁判、あれと同じ事が起きると危惧しているのでしょう。

 当然です、人を傷つける魔法使いが、人を守るための機体に乗る。

 そんなのは認められない。

 そう言う人がまた出てくるでしょう。

 ですが、同時にジャンヌを動かせる人物は美月のみ。

 そう簡単に切り捨てられることが出来ないのです。


「君は精神的に弱い」

「…………」


 だからこそ、司は決断しました。


「今までずっと恐れていたからだろう……その気持ちは分かる。魔法使いの犯罪は多すぎるという訳ではないが目立つからね」


 美月はその言葉を聞くと思わず身構えてしまいます。

 また、化け物と呼ばれるのだろうか? と……。


「だから、君は成長しなくてはならない。だけど、それは私達がどうこうできる問題ではない、自分で考え、そして成長するんだ。勿論、苦しい時は頼ってもらっても構わない」


 彼は優しい瞳で美月にそう言いました。


「でも、あの……」


 肝心の処遇が決まっていない、美月はそう言おうとしたのですが……。


「……君に与える罰、そうだな……有事以外の暫くは自室にて自身の課題……精神面の強化にはどうしたら良いのか? を考えなさい。今後こんな事が起きないように、ね?」

「え? えっと……」


 予想外過ぎる対応に美月は狼狽します。

 すると、大きなため息をついた新谷は……。


「司令官、それは他の者に示しが……」

「何故だ? 自室への軟禁、三食は出すが食事の制限もさせてもらう、何より自分から綾乃に会いに行く事は禁じている」


 司は美月と綾乃が仲が良い事を知っているのでしょう。

 だからこそ、そう口にし……事実、綾乃に会いに行けないという言葉で美月はショックを受けました。


「自分から、ですか……」


 だが、新谷は呆れた様な顔を浮かべています。

 くだらないと考えている訳ではないでしょう……。

 何故なら……。


「それは、綾乃ちゃんからは会いに行けるって事ですよね?」

「娘は処罰対象外だ。それに状況を確認するため必要な行為でもある。まさか信用も無い者や男である君に頼めるはずがないだろう?」


 ふっと笑う司は美月へと目を向けた。

 勿論美月は何の事か? と困惑するのだが……。


「今回の件は君に対する不満が大きい者が起こした事、なら他の者にもそれはあるはずだ……だからこそ、信用でき信頼できる人物に君の監視を任せたい」


 そう、軟禁と言ってもほったらかしにする訳にはいきません。

 食事を届けるため、他にも状況を確認するのは当然でしょう。


「いや、そうは言っても他にも適任は……」

「例えば?」


 新谷は特別扱いとみられると分かっているのでしょう、口をはさみましたが。

 司の返しに黙ってしまいます。

 確かに、彼の言う通りの人物はいないのです。

 伊逹、新谷は信頼にあたるでしょう、ですが男性です。

 女性の部屋に入り浸れば何か別の噂を立てられるのは分かります。


 かと言って同じ女性と言う立場になるとどうでしょうか?

 今回の原因は同じ女性。

 そして、美月は精神的に弱いというのはもうすでに分かっている事です。

 下手に監視役を置いても、彼女を追い詰めればまた同じ事が起きる可能性は十分にありました。

 だからこそ、綾乃なのだと新谷も理解し……。


「居ません、彼女が適任だと僕も思います」


 折れるしかない、そう思い溜息をつくのでした。

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