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44話 友人の出撃に焦る少女

 新谷のバイタルを測っていた事に気が付かなかった美月は話しかけられて初めて彼の事に気が付いた。

 そして、暗くなったと言われてしまい……。

 そんな事は無いと思う彼女の耳に警報が聞こえた。

 どうやら天使が攻めてきたようだ……だが、戦えるのは綾乃しかいない事に気が付いた美月は……。

 苦しくなるのも構わず彼女の元へと急ぐのだった。

「ひゅー、ひゅ……けほっ……げほっ! はぁ……はぁ」


 息を切らし、苦し気な咳をする美月。

 彼女はやっとの思いでハンガーへと着きました。

 ですが、そこには真っ黒なイービルはありません。

 美月は遅かったことに気が付くとがっくりと項垂れます。


「ひゅ、ひゅーひゅーー」

「お、おい! 大丈夫か!!」


 そんな彼女の元に近づいてきたのは伊逹です。

 彼は怖い顔のままでしたが、美月の事を心配してくれているのでしょう。


「水持ってこい!」


 と叫びました。

 美月は申し訳ないと思いつつもハンガーの中を見ます。

 するとある事に気が付きました。


「赤いイービル……斉天大聖も無い?」


 美月の呟きを聞き伊逹さんは頭をかきます。


「実はリンチュンだが、今日本には居ない……何やら交渉をしてくるって言ってたが」

「交渉……居ない?」


 てっきり綾乃と一緒に出撃してくれていると思っていた美月はその顔をどんどんと青くします。

 コピスも斉天大聖もそしてジャンヌダルクも出撃できていない。

 その中でナルカミだけが出撃しているのでは? っと……。


「あ、綾乃ちゃん……一人で!?」


 普段は小さな声で喋る美月でしたが、今回ばかりは声を張ってしまいました。

 その所為で……再びせき込む結果になったのですが……涙を瞳に溜めながら伊逹の方へと目を向けます。

 すると彼はバツが悪そうな表情を浮かべ。


「あいつしか居ない」


 と呟きました。

 美月が初めてイービルに乗った日、あの時も一機しかないというのを聞いていました。

 ですが今は斉天大聖もある。

 そう心のどこかでは思っていたのです。

 だというのに今はその機体が無いどころか、日本に居ないというのです。

 綾乃は不利な状況で天使(アンゼル)と戦う事になってしまったのです。


「――っ」


 なら自分もと思う美月でしたが、身体は動きませんでした。

 膝がガクガクと震えその場に座り込んでしまったのです。

 美月が腰を落としてしまったのと同時にモニターには映像が映りました。

 イービルの現在位置、そして天使の現在位置です。


『綾乃さん、敵と接触後は冷静に対処をお願いします』

『だいじょーぶ! 何とかできるって!』


 ハンガーの中に流れる音声で出撃しているのが綾乃……彼女である事が間違いないのは分かります。

 そして、映像で綾乃しかいない事も分かりました。


「綾乃ちゃん……」


 美月は祈るように両手を合わせてモニターを見つめます。

 怖くて怖くて震えている少女を見て、伊逹は……。


「ここじゃなんだ、オペレーションルームに行った方が良いんじゃないか? それとも覚悟を決めるかだ」


 と口にしました。

 美月は首を傾げつつ彼を見ますが、彼は顎でジャンヌダルクを指します。


「…………」


 美月はゆっくりと視線をそちらへと向けました。

 自分が天使(アンゼル)と戦うきっかけになった機械仕掛けの人形。

 大型人型兵器マナ・イービル……ですが、それ自体に恐怖や嫌悪は感じませんでした。

 美月は覚えているのです、ジャンヌダルクがあったからこそ救えた命があった。

 ですが、同時に天使に対する恐怖があります。

 死への恐怖、傷つく事への恐怖……それは自分、他人関係ありませんでした。

 ただただ、怖く……それでイービルに乗ることが出来ないのです。


『綾乃さん!! 引いてください!!』


 美月がイービルを見つめていると放送が聞こえました。

 跳ねるようにモニターの方へと視線を向けた美月が見たのは黒くなった点、そして明るい点。

 恐らくは綾乃が天使を撃退か撃墜したのでしょう。

 ですが、その近くに新たに二つの点が現れていました。


『そんな事言ったってこの場で引いたら駄目でしょ!! だいじょーぶ女は度胸!!』


 綾乃はオペレーターである明智望は――。


『何馬鹿な事言ってるの!? 天使が二体こっちは一機!! 早く引いてください!!』


 感情的になった声が聞こえました。


「また二機だって……!? この頃日本を執拗に狙ってるって言うのは本当らしいな……」


 伊達はそんな事を口にし、美月は恐る恐る伊逹の方へと目を向けました。


「どういうことですか?」

「ああ、この頃天使が頻繁に出るだろう? 他国では減ってるらしい……恐らくこの日本に奴らが求める何かがある……だが、それが分からない」


 それはつまり今この瞬間日本に向かって来ている天使が居る可能性があるという事です。

 それに気が付いた美月は……。


「綾乃ちゃんっ!!」


 モニターへと駆け寄りますが、そんな事をしても何も変わりません。


『綾乃さん! 上からの命令です、早々に帰還し――』


 明智望の声が途中で止まりました。

 もしかして、何か起きたのでは? と美月は不安になります。

 すると――。


『ごめん、弾切れてた……それと、なんか動きが悪い……みたい……無茶やり過ぎたかも、あはは……』


 その声は笑っている様で……人はどうしょうもなくなると笑うというのは本当なのでしょうか?

 彼女の笑い声に美月は目を見開き絶望を感じました……。

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