37話 愚か者の悪魔と出会う少女
美月達が食事をとっている食堂にはニュースが流れている。
それは彼女達には決していいモノとは言えない。
その理由はイービル開発や悪魔乗り達への国の嫌味だと知るのだった。
食事を終えた美月達は格納庫へと向かいました。
目的は勿論イービル。
すると、彼女達を見つけて駆け寄ってきた男性が居ます。
彼は美月にイービルの起動の仕方を教えてくれた男性でした。
名前は――。
「伊逹さん!」
新谷は嬉しそうに彼の方へと近づきます。
ですが、伊逹と呼ばれた彼は真っ直ぐに美月の方へと向かってきました。
「おう、嬢ちゃん……大丈夫か?」
大丈夫の意味が分からなかった美月は首を傾げます。
すると伊逹は大きなため息をつきました。
「イービルを見ても怖くないのか?」
そう、彼が心配していたのは美月の恐怖心です。
天使と対峙し、運良く戻った兵の中には恐怖で戦えなくなる者も多いのです。
だからこそ、彼は美月の事が心配でした。
やっと見つけたジャンヌダルクを動かす事の出来る人材。
知らず知らずの内に彼女自身も希望となっていたのです。
世間のニュースでは彼女の事を悪くいう人達がいっぱいいます。
ですが、そんなのはニュースの中だけで、少なくともこの施設の中では彼女は希望だと思うものは多かったのです。
「怖く、ないのか?」
改めて聞かれた言葉。
美月は首を傾げつつ灰色の悪魔へと目を向けます。
確かに新谷が死んだと思った時は怖かったと言った方が良いでしょう。
ですが、イービルが怖いのではなく死という事自体が怖いのです。
美月はゆっくりと灰色の悪魔へと近づくとその手で撫でます。
冷たい金属。
ですが、やはりそこには温かさのような物を感じました。
「大丈夫……です」
美月がそう口にすると今まで黙っていた綾乃はほっとしたような溜息をつきました。
正直彼女は不安だったのです。
ですが、その不安は杞憂へと変わり、彼女はほっとしたのでしょう。
「そうか、なら良い」
怖い顔をしわくちゃにしながら笑う伊逹。
美月はそれを見ながらこの人も笑うんだと考えました。
「さてと、コピスの修理だが、後もう数日はかかりそうだ」
「そ、そうか……」
急に話が仕事の事へと変わったとはいえ、新谷は慣れているのでしょう彼の言葉を聞くと少し落ち込みはしましたがすぐに返事を返しました。
「それとナルカミだが……綾乃お前、本当にあれで良いのか?」
そして、彼は綾乃の方へと向くとそう口にします。
「あったりまえ! 寧ろあの方がカッコよくない?」
「ま、まぁ……あれはマナとは違うコンセプトと言ったらそうだし、お前専用だ文句は言えないが……」
同も歯切れの悪い伊逹の言葉に美月は3度目の首を傾げました。
「専用?」
リンチュンも首を傾げています。
一体どういう事だろうか? と思っているのでしょう。
当然です。
マナ・イービルと違い、通常のイービルは量産型。
新谷もその多くの量産機の一つにコピス等の名前を勝手につけているだけです。
また、その人その人で得意分野が違う為、武装に多少の違いはあれど、その機体性能はほぼ同じ。
当然新しい量産機の方が性能は良くなっていますが、それでもマナ・イービルと比べてしまうと歴然とした差があります。
だからこそ、イービルの専用機と言うのがおかしいのです。
「二人も気になってるみたいだ、伊逹さんその機体は何処に?」
新谷は伊逹に問うと彼は頷き顎でついて来いと合図をしました。
彼について行くと其処には真っ黒な悪魔が居ます。
他の悪魔と比べるとやけに細く、まともな装甲が無いようです。
「ザ・フール……開発者には愚か者と呼ばれた機体だ」
伊逹はそう言いながら黒い機体を見上げます。
すると――。
「ちょっと! ナルカミだって言ってるじゃん!」
「ナルカミは愚か者だろ? お前に神話を誰が教えた? 元々偉い坊さんだったナルカミは色恋におぼれ、胸を除く為に転んだという話もある、ましてやその色じかけで封じていた者を解放されてしまうぐらいだぞ?」
伊達はそういうと綾乃は「ぅぅ」と唸りました。
美月はそんな話を聞いた事もありませんでしたが、綾乃が黙ったという事は恐らくその通りなのでしょう。
「でも、なんとなくナルカミって名前カッコよくない?」
「知らねぇよ」
伊達は綾乃の質問を一言で返すと彼女の方へと向き直ります。
「装甲は全機体中、最も薄い、武器は超大型ブレードに大型マテリアルライフル……お前、遠近どっちをするつもりなんだ?」
「どっちも!!」
綾乃の言葉に今度は美月は驚きました。
イービルの武装は剣と銃それもかなり大きいものです。
ですが……彼女はそれよりも大きい武器を背負うつもりらしいのです。
これには美月だけでなく……。
「う、動けなくなっちゃいそう」
リンチュンも驚きを隠せなかったのでした。
すると綾乃は――。
「そのための装甲だよ! これだけ薄ければ動きはほぼ変わらないはず!」
「そ、そうは言っても、ね?」
新谷もここまでとはと思っているのでしょう引きつった笑みを浮かべるのでした。




