34話 死を知る少女
美月はジャンヌダルクに乗る事を望まれていた。
しかし、美月は魔法を使って気を失った。
それは今までなかったことだった……。
どうすればいいの?
彼女が考える中、ちゃんと戦ってとリンチュンに言われてしまうのだった。
彼女が息苦しくなるのを承知で叫ぶのは何故でしょうか?
いえ、本当はどんな理由がある事ぐらい美月には分かっていました。
目の前で泣くリンチュン。
それは自分と同じ考えを持つ少女なのだと……。
誰かに死なれたくない……リンチュンもきっとそう思っているのでしょう。
美月は反省しつつも戦うという言葉にどう答えたら良いのか分かりませんでした。
戦っている……そう答えたかったのですが、確かにちゃんと戦えてはいません。
だから、次はそうするとも答えられません。
何故なら……。
「私は……人が死ぬのが……怖い」
美月はそう口にします。
そして、新谷が死んだという時の事を思い出すと身を震わせました。
「それは……そうだよ!」
リンチュンは涙声でそう口にし……美月の肩を掴みます。
「リン……ちゃん?」
「でも、美月が怖がってた時、私達だって!」
最早聞き取るのがやっとと言った声に美月は……後悔しました。
自分は怖かった。
だけど、同じ恐怖を味わってた人が居る。
口には出してきませんでしたが、綾乃もきっと美月の事を心配して心配して……だからこそ起きた時一緒に居てくれたのでしょう。
自分の中の恐怖心を拭う事は出来ません。
ですが、それでも戦わなくてはならないのです。
生き残るためには……誰かに自分が感じた恐怖を感じさせないためには……。
それに気が付いた美月は……自分がもうすでに怖いの一言で済ませられない所にいるという事にようやく気が付きました。
天使が怖い、死ぬの怖い、死なれるのも怖い。
誰もがきっと同じでしょう。
ですが、それに耐える……いえ、それを受け止めてなお、彼女達は戦わなければならないのです。
「ごめん……なさい……」
美月は大粒の涙を流し、リンチュンに謝ります。
ですが、それは彼女だけに伝えたかった言葉ではありません。
綾乃にも母にも……。
そして、あの時きっと怖いと感じていた人々にも……。
美月は謝罪を告げました。
これからもきっと怖い思いをする。
だけど、それを押し殺す事は出来なくとも……仲間と共に戦わなければならない。
美月はそう思いつつ……。
そんな、そんな難しい事……私に出来るの、かな?
と不安になりました。
その翌日。
美月は動けるようになり、すぐに隣の医務室へと来ていました。
ですが……彼女はその頬を膨らませます。
すぐにそこから去ろうかとも考えていました。
その理由は簡単です。
「新谷さんは無茶をし過ぎです!」
「いや、あははは……」
医務室の中から聞こえるのは怒る女性の声と楽しそうな新谷の笑い声。
一応怪我が無いか心配で訪れた美月ですが、その声を聞くと面白くないと思いました。
そう、その医務室とは……新谷の居る医務室です。
「帰ろう」
何故だか面白くないそう感じた美月は何故だろうか? と疑問に思いました。
ですが、その理由は彼女には分かりません。
唯一分かるのはやはり面白くないという感情だけ。
「夜空さん?」
ですがそんな風に疑問を感じ足を止めていると部屋から出てきた看護師に名前を呼ばれてしまいました。
彼女は看護師の中でも特に男性に人気のある女性で名前は東坂恵。
「あ……」
彼女は頬を少し赤らめており、部屋から出てきたのです。
どこか嬉しそうな彼女を見て美月は黙り込んでしまいました。
「もしかして、新谷さんの怪我を? 大丈夫ですよ、彼怪我があまりなかったの。魔法を使うまでも無いみたい」
「そ、そうですか」
「夜空ちゃん、そんな所でどうしたんだい?」
扉の前でそんなやり取りをしていれば当然、部屋の中の新谷にも気づかれます。
すると東坂恵は微笑み、部屋の中へと案内をしてくれます。
「ほら、新谷さんも貴女の事心配してたんだから声だけでも聞かせてあげて?」
そう言われたのですが、美月は二人の関係はもしかして? と思うとその場から――。
「だ、大丈夫です! わ、私……帰ります」
それだけを伝え、その場から急いで去るのでした。
「ちょ、ちょっと夜空さん、走っちゃ駄目ですよ!!」
東坂恵に注意をされましたが、美月は聞く耳を持たずに走って行きます。
少し走った所で案の定苦しくなり、胸を押さえながら……。
息苦しさとは違う苦しさを感じた彼女は……。
「どうし、たんだろう……」
と小さくつぶやきました。
ですが、その呟きは誰にも聞かれる事は無く……。
息苦しさの所為で座り込んだ彼女は心が痛いと感じました。
そして、彼女は大粒の涙を流し嗚咽を漏らします。
「み、美月?」
そんな時、美月を見つけたのは綾乃です。
彼女は美月が泣いているのを見ると慌てて彼女へと近づきます。
「ど、どうしたの!? 酷い顔じゃん!」
「――っ」
美月も年頃です泣いていて酷くなってしまった顔なんて誰にも見られたくない。
そう思っていましたが……隠す事なんて出来ません。
「……分かった、とにかく近くに私の部屋あるからさ、そこで泣きなって、此処じゃ他の誰かに見られるでしょ?」
彼女は何も答えない美月へと優しい瞳を向けるとそう口にし……部屋へと案内してくれました。
美月は彼女に言われるがまま、部屋へと入り、そして……流れ続ける涙と感情を堪えられずに泣き続けたのでした。




