32話 敗北と真実を知る少女
新谷が死んだ。
美月は呆然としていたが、その事実を知ると悲鳴を上げる。
そして、魔法を使うのだが、それは同時に彼女を苦しめる結果となった。
そんな彼女を救ったのは中国からやってきた少女リンチュンだった……。
彼女の活躍により天使の脅威は無事去ったのだが?
美月が目を覚ましたのは白い部屋。
彼女が部屋を見渡すと綾乃が心配そうに美月を見つめていました。
「綾乃……ちゃん?」
頭の痛みに耐えながら彼女が名前を呼ぶと綾乃は不安そうな顔を歪め涙を流し始めました。
「美月、美月!!」
そして、急に抱き着いて来たのです。
「く、苦しいよ?」
そこまで口にして美月ははたと気が付きました。
「新谷、さん……は?」
美月は彼の事を尋ねました。
すると彼女は……。
「大丈夫だよ、美月の方が重傷……! 運良くというかリンちゃんが無理やり出ちゃったから結果として機体は無事だったけどさ……美月は……」
そう言った彼女の言葉に美月は不安を感じます。
自分に何かあったのでしょうか?
しかし、自分を見てみても何かおかしい所はありません。
「外傷はないよ、ただ……」
「ただ?」
綾乃は溜息をつき……美月の頭を撫でます。
「今日まで三日目……ずっと寝てたんだよ」
美月は驚きました。
スマホを確認してみると確かに三日経っています。
「じゃ、じゃぁ……あの街は?」
「……二人のお蔭で天使の撃破は出来た、だけど……怪我人は多数……死者も出た」
綾乃は隠しても無駄だと判断したんでしょう。
美月が気絶してからの事を話し始めました。
「人ってさ勝手なもんだよね! 救世主とか呼んでおいて、一回負けたらブーイング……何でまともに戦わなかった? なんて言葉が溢れてる」
それは美月とって、いえ……誰が聞いてもショックを受けるでしょう。
「こっちは美月にとって初めて仲間が死ぬ現場に直面しかけたんだって説明しても駄目……マスコミは兵士なんだからの一言、ほんとっあいつらってなんであーなんだろうね!」
憤りを見せる綾乃は溜息をつきます。
すると……。
「同時に中国のマナ・イービル……あれってさ元々日本や中国だけじゃなくて他の国も開発してたらしいんだよね、共同開発って言った方が良いらしいんだけど……中国のは日本のパクリだって」
「そんな……」
助けてくれたのに……美月はそう口にしかけたのですが、綾乃の言葉に黙り込みます。
「パクりなんかじゃないし、むしろ日本のコンセプトが特出し過ぎていて喧嘩、結果各国それぞれが作り始めて日本が作ったのが灰色の悪魔なんだって」
それは初めて聞きましたが、同時に納得できることでもありました。
斉天大聖にはパイロットが居ました。
しかし、ジャンヌダルクには居なかったのです。
使う事が決まっていれば最初から悪魔乗りを決めていた方が楽です。
何故ならその人に合わせた物を作ればいいだけなのですから。
ですが、美月が来るまでジャンヌには悪魔乗りが居ませんでした。
乗る者の事を感が無かった……だからこそ、特化したものが生まれ……その為、使える魔法使いが少なく、機体は高スペックと言うものが出来あがってしまったのでしょう。
だからこそ、それを扱える美月は貴重な戦力なのです。
ですが、本人はそこまで想像することはできませんでした。
「……じゃぁ、私なんかよりもっと」
ふさわしい人が居るのでは?
例えばリンチュン……彼女の顔が浮かびました。
ですが、綾乃は首を横に振ります。
「あれは美月じゃなきゃダメなの!」
「だって……私は……」
自信を失った美月に綾乃は溜息をつきます。
「ねぇ、美月……」
「………………」
美月は綾乃へと返事を返す事は出来ませんでした。
ですがそれは綾乃にとってはどうでもいい事なのでしょう……。
「美月はずっと私に魔法を使ってくれたよね?」
「…………?」
その言葉に美月は首を傾げました。
「もしかして、私が案外元気だから忘れてた? 全然起きなかったっしょ?」
歯を見せて笑う綾乃の言葉を聞き美月は思い出しました。
色々と起きすぎて忘れていましたが、確かに綾乃は起きなかったはずです。
傷はすっかりと治ったはずでした。
ですが、それなのに目を覚まさない綾乃。
死んでしまった訳ではないのに何故? 美月は疑問に思った事を思い出します。
「実はさ美月が来るたびに連絡を貰って寝たふりをしてたの……随分前からね」
「え?」
それを聞き美月は驚きます。
そして、すぐに――。
「何で……そんな事」
そう伝えると……綾乃はポケットから時計のような物を取り出しました。
「何?」
「これは魔力計測器……時計みたいに見えるけど、近くで発生した魔法に使われた魔力を計測するんだよ」
笑みを浮かべた彼女は……。
「あのイービルに乗るのはあの機体と同じで希望となる人、だからね、私達はお父さんを助けてくれた貴方に目を付けた」
綾乃はそう言うと美月へと優しい目を向ける。
「だけど、魔力が低いんじゃ話にならないっしょ? だからこれで魔力を測ってたの、実は怪我は見た目こそひどかったけどさー大丈夫だったんだよね。騙してごめんね?」
綾乃はそう言うと改めて美月の頭を撫で始め、美月は思わず目を細めます。
「でも、美月が私を見捨てるような人だったらマナ・イービルは託せなかった。だからあれは美月の為のイービル、そもそもあれを動かせる人なんてそうそう居ないよ」
と彼女は笑うのでした。




