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65話 行ってきますと告げる戦乙女

 母の元へと向かうと彼女は目を丸めていました。

 それもそうでしょう……。


「あら、大勢でどうしたの?」


 美月の周りには多くの人がいたからです。

 だからこそ驚いたようです。


「えっと何か用意しないとね」

「うん……」


 お客が来るという事があまりないからでしょう。

 母は忙しそうにしながらもどこか嬉しそうでした。

 そんな母の背中に美月は声をかけます。


「お母さん」

「ごめんね美月、ちょっと手伝ってもらえる?」


 どこか声を弾ませた母。

 それを聞きつつ、美月は自分が助けたい大事な人の一人だという事をしっかりと心に刻み。


「私、最後の戦いに行くよ……」


 その言葉を口にします。

 すると母が息を飲んだような気がした。

 しかし……美月は話を続けます。


「……でも、絶対に戻ってくるから、勝って戻ってくるから」


 確かな決意を胸にそう母に告げます。

 死ぬつもりはない、負けるつもりもない。

 そして、母を悲しませるつもりもない。


「私が戦うのは次で最後……人が傷つかない限りもう、二度と戦わない……」


 彼女はそう告げます。

 そう、美月にとってそれは大事な事なのです。


「美月……」

「綾乃ちゃんも皆もそう……ジャンヌも……」


 大事な相棒であるジャンヌダルク。

 これまで生死を共にしてきた機体の事を思い浮かべ……。


「私たちは必ず勝って、戦いを終わらせるから……だから……」


 美月は必死で訴えようとします。

 すると母は振り返り、笑みを浮かべてくれました。

 そう、笑ってくれたのです。


「行ってらっしゃい」


 そして、そう言ってくれました。

 それは帰りを待つというという言葉です。


「うん、行ってきます」


 母に対し、美月は笑みを向ける。

 そして――満足そうに頷くと……。


「貴方もね、綾乃ちゃん」

「は、はい……行ってきます」


 綾乃はどこかぎこちなく頷く。

 その様子に美月はハッとし……。


「綾乃ちゃん、伊達さんは?」

「……大丈夫、お父……さん、美月についてやれって……」


 ちょっと恥ずかしそうにそう口にする綾乃。

 まだ父と呼ぶのに離れていないようです。


「うん、ありがとう」


 美月は綾乃にお礼を告げます。

 何故なら彼女も父親である伊達と一緒に居たかったはずだからです。


「さ、ご飯食べに来たんじゃないんでしょ? 早く行きなさい? 皆待ってるんだから」

「うん!」


 美月は頷くと綾乃の手を取り、扉へと振り返ります。

 するとそこには美月たちに手を貸してくれる人たちが居ました。


「必ず、戻ってきてくださいね」

「お願い、ね?」


 信乃と恵も見送ってくれています。

 二人は頷き――。


「行こう! 美月!」

「うん! 必ず戻ってこようね、綾乃ちゃん!」


 二人は決意を胸にハンガーへと向かいます。

 まだレンからの情報はありません。

 不安はありました……。

 ですが、それでも二人はゲートのあるあの場所へと向かうつもりでした。

 なぜなら、もう時間がないと感じていたからです。

 天使(アンゼル)たちの攻撃は本格的に始まったのです。

 もう、この星に耐えるだけの力は残っていません。

 自分たちを除いて……だからこそ、ゲートの前に陣取り少しでも数を減らしたい。

 そう考えていました。


 無謀な戦いです。

 消耗戦になることは分かっています。

 ですが……それでも――。


「勝つんだ絶対に」

「うん、負けれないよ」


 絶望に飲み込まれず……希望を抱きます。

 そして、ハンガーにたどり着いた二人はイービルを見上げました。

 するとその場に居た伊達が近づいてきて……。


「レンの奴から通信があった……」

「「え?」」


 二人は呆けた声を出し彼の方へと目を向けます。

 すると――彼は歯をむき出しにして笑い……。


「よくやる嬢ちゃんだ……奴らは特殊な信号でゲートを起動してる。その信号をエーベルトと協力してこっちでも出せるようにしやがった……イービルには組み込んでやった。安心して行ってこい!」


 それは待ち望んでいた事でもあり、そしてその先の情報が無い事への不安もありました。

 ですが――二人に選択肢はありません。

 いえ、選ぶ必要なんてないのです。


「はい! 行ってきます」

「うん、行ってくる、お父、さん……」


 それぞれ違う笑みを浮かべながら、そう答えるのでした。

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