60話 情報を得る戦乙女
美月たちは休憩をハンガーでとっていました。
本当は美月の部屋へと行こうと誘ったのですが綾乃は首を横に振ったのです。
「ここで大丈夫?」
「……うん」
忙しく動き回る伊達を見つつ綾乃は頷きます。
彼が彼女の本当の父親だと知ってからまだ日は浅いのです。
何も感じるなと言うのは無理な話でしょう。
ですが、綾乃は目に焼き付けるかのように彼をじっと見つめていました。
「最後……かもしれないから」
「そんな……」
それは自分が戦いの中で死ぬかもしれない。
もしくはこの支部をまた襲われてしまいかえる場所がなくなってしまうかもしれない。
そう言う意味でしょう。
「そんなこと考えちゃだめだよ!」
しかし、美月はそんな彼女の言葉を否定します。
自分たちは死なない。
そして、支部は傷つけさせない。
そう思っていました。
「綾乃ちゃん、私ちょっと……リーゼちゃんの所行ってくるね」
ですが、美月は彼女をここから移動させるのは気が引けました。
彼女たちは本当の家族なのですから……。
「あ、うん……」
不安そうな表情でしたが、瞳は少しうれしそうにしており、美月はそれを見て安心するとハンガーを出て行きます。
きっとあれなら大丈夫……そう思いつつ美月が向かうのはリーゼが居るであろう医務室です。
彼女が魔法を使っただけなら現在は薬があるため特に問題はないでしょう。
ですが、もし怪我をしていたら……一刻を争うかもしれないのです。
急がないと!!
美月はそう思い走り始めました。
少し前ならそれだけで息が切れ苦しくなり、倒れそうになるぐらいでした。
ですが、今はそんなことはなく……。
改めて薬の効果が高い事に驚きます。
そんな事を考えていると医務室へとたどり着き扉を開けると――。
そこに居た女性、信乃は表情を明るく……いえ、怪しく光らせました。
「美月ちゃん!」
「ひゃい!?」
美月はその表情を見ると思わず身を引いてしまいます。
どうしても彼女が苦手なのです。
ですがそんな事を言っている場合ではありません。
「あ、ああああのリーゼちゃんは?」
「…………」
その名前を聞いた瞬間、明らかに表情をゆがめる信乃。
彼女は不機嫌になった態度を隠すことなく後ろを指さします。
「奥に居ますよ」
「怪我はしてるんですか?」
美月が確認すると――。
「一応一命は取り留めさせました。本当は殺してもいいぐらいですけど……」
なぜそこまで敵視しているのだろうか?
美月は疑問に思いましたが今はそれどころではありません。
急いで奥の扉へと向かいます。
別に止める理由もない信乃はそれを見送りつつため息をつくとゆっくりと美月の後を追いかけてきました。
「美月ちゃん、分かってると思いますけど、魔法の使用は……」
「はい、十分に気を付けます」
美月は頷くとリーゼへと近づきます。
包帯だらけの痛々しい姿……人工呼吸器にも繋がれており……美月は彼女の姿を見るなり後ろへと振り返ります。
「薬は投与出来なかったので血液を輸血しました。魔力については問題はありませんが体中の裂傷は勿論、肋骨が3本、腕、足も一本ずつ……正直生きているのが不思議なぐらいでした」
「そんな……」
美月はショックを受け、すぐに魔法を使おうとしますが信乃はそれを制止させます。
「吉沢さん、なんでですか!?」
美月は訴えるように彼女へと目を向けます。
「言いましたよね? 一命は取り留めました、生きているのが不思議なぐらいの怪我です。魔法を使えば確実にあなたが倒れますよ」
それは理解できました……ですが……。
放っておくわけにはいかない、美月はそう言う少女なのです。
「それでも助けます」
そう言うと彼女の手をどかしリーゼの傍へとより魔法を使うのでした。




