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48話 苛立つ戦乙女

 君、君とは誰の事でしょうか?

 いや、聞くまでもありません。


 身勝手すぎるその言動に美月は怒りを感じました。

 司は綾乃の事を大事に思っていたはずです。

 ですが、それをあっさりと考えを変えるぐらいには冷徹だったのです。


「綾乃ちゃんは!」

「私の娘じゃないと知ってショックを受けたというのか? だからなんだい?」


 だからなんだ? その言葉は美月をさらに苛立たせた。


「綾乃ちゃんは貴方の事を大事に思っていたのに!!」

「それは私も同じだ。だからこそだ……」


 だからこそとはなんだろうか?


「どういう!!」

「娘ではない、確かに最初は兵器を作るために引き取った……だが、今は違う。なによりも……戦えないのであれば、戦場から遠ざけてあげたいと思うのは不自然かい?」


 そう言われると不自然ではない。

 確かにそうとも言えます。

 ですが……彼の言葉には感情がこもっていないように思えてしまったのです。

 表面上だけの薄っぺらい言葉。

 それは綾乃も感じたのでしょう……。

 涙を流し始めました。


 私はこんな人について行ってたの? 人を守るために?

 今まで私達を守ってくれたり親身になってくれてたのは……戦えたから?


 そう思うと彼の真意に気が付けなかった自分が情けなくなってきました。

 確かにクラリッサの言った通り死神という名はふさわしいでしょう。

 ですが……。


「人類が生き残るためだ」

「……生き残っても人の心を捨てたらそれで終わりです!」


 美月は彼に対しそう返します。

 すると彼はゆっくりと息を吸いため息をつきました。


「君はまだ若い、私が例え人の心を捨てていたとして人類全員がそうなのか?」

「……なにを」


 言っているんですか?

 そう美月は言いかけたところ、司はゆっくりと口を開く……。


「確かに私は人としての常識が欠如しているだろう……だが、他の人達が人としての意識を失っているわけがない」

「何を言っているんですか?」

「言った通りだ……私は自分の評価などどうでもいい、多々人を人類を存命させてほしい……そのためには流れる血が少ない方がいい……そのために私は不安要素を取り除き、君たちを勝利に導くだけだ」


 その言葉には意志がしっかりと込められていました。

 嘘ではない……それが分かるほどに……。


「……どういう、意味ですか?」



 自分たちを勝利に導いてくれる、それだけは分かりました。

 ですが、そう言われても最早、かつての信頼はないのです。

 だからこそ美月は食い掛りました。


「君がそんな顔をするとはね……」


 どんな顔をしているのでしょう? 気にはなりましたが、確認する気持ちにはなれませんでした。

 それよりも彼の言葉の意味です。


「君たちが思っている通り、私は綾乃の親ではない……彼女の本当の親は伊達だ」


 ゆっくりと口を開く司。


「彼女を引き取った理由は人類の希望だからだ」

「どういう……!!」


 美月は苛立ちながら話を促します。

 すると司は待て戸でもいうかのように手を前に出し……。


「夜空美月君、君はミュータントの適合率が人並みを外れている。だが……綾乃は別の意味での希望なんだ」

「アタシは別の意味……?」


 司は頷くと、真面目な顔を浮かべ語り始めた。


「元々君は身体が弱かった……今では想像がつかないほどにね。だけど……伊達は当時の君を助けるためにある決断をした……」

「決断……ですか?」


 伊達なら確かに何かをするはず……美月も納得できる言葉でした。


「ミュータント適合手術……だが、手術は()()した」

「「…………え?」」


 二人は揃って呆けた声を出すのでした。

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