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73話 悪魔を助けたい悪魔乗り

「…………」


 その言葉に司は黙っています。

 ですが、それが肯定と取ったのでしょうクラリッサはふんと鼻を鳴らしました。


「それで……結局彼を使う為に装置を取り付けるという事か」

「…………現状、彼を引かせる訳にはいかない」

「そんな新谷さんはもうボロボロなんですよ!!」


 戦わせるわけにはいかない。

 美月は叫ぶが司は首を横に振ります。

 それに対し、たまらず美月は席から立ち上がり……。

 彼女のそんな行動を見て周りの者達は驚いていました。

 普段おとなしい美月がここまで必死になるのは珍しい事でした。


 いや、そこまで彼の身体は深刻だと考えているからこそです。

 そして、それを知っているだろう司の判断に美月は首を縦に振るなんて事は到底できません。


「そんな、そんなに戦う人が必要なら私達が居るじゃないですかっ!」

「だが、君達の機体は切り札だ……下手な改造をして使い物にならなくなったら困る」


 なら、コピスならいいのか!?

 そう思うのは何も美月だけではありませんでした。


「なぁ、司……コピスが動かなくなったらあいつは戦闘機を引っ張り出す。それでも戦場に引っ付こうとしてやがる……何もコピスに着けることはないんじゃねぇか?」


 伊逹も今回の話は反対の様です。

 美月は彼の言葉を聞くと表情を明るくします。

 しかし、司令官である司は……。


「勿論テストはする。だが……現状のイービルに乗って彼が耐えられる戦闘は……あと一回が限度だろう」

「…………え?」


 それは予想外の言葉でした。

 美月もその場にいる者も固まってしまっています。

 クラリッサさえ目を見開いて、汗を流していました。


「だが、この回路さえあれば彼の命を5回の戦闘……いや、2回かもしれない、とにかく存命は出来る……」

「そんな……だって……」


 いくらなんでもそこまでひどいとは思っていませんでした。

 いや、そこまでイービルの負荷が強いという事でしょう。


「生きている事さえ不思議な位なんだ……彼はもう死んでいるのも同然。ゾンビと言った方が良いぐらいにはね……」

「…………」


 そう言うと司は設計図へと手を置き……。

 ゆっくりと顔を持ち上げました。


「だからこれはつける付けないの会議ではない。彼を存命させるための手段の話だ」

「……ふん、悪魔から引きずりおろせばいいだけだろう」


 クラリッサはそう言いますが司は首を振ります。


「彼にとってもはや天使を殺すのは生きるための糧だ……それを取り上げたらどうなるか……」

「気力だけって事!? そんなの漫画やゲームじゃないんだから!!」


 綾乃は思わず突っ込みを入れますが、司はいたって真面目な顔で頷くのでした。

 事実他に説明のしようがない。

 そう口にした彼は――。


「そこで君達には彼が戦いに赴いても活躍する場をなくすように動いてもらいたい」


 そう伝えてきたのです。

 だが、それは難しい事です。

 相手がただの天使ならばそれは可能でしたでしょう。

 ですが、この前出逢ってしまった新型……。

 あれの相手をするには美月達の機体では少しばかり、いえ……かなり難しいのです。

 難しいというのさえ、恐らくは希望を持った言い方になってしまうそう思ってしまうほどでした。


「……あんなのがいっぱい、居たら」


 リンチュンは取り戻した明るさをどこに置いて行ってしまったのか、再びふさぎ込み恐怖に震えます。

 リーゼロッテも自身の腕を抱く様にし、微かに震えていました。


「……お父さん」


 綾乃さえも首をゆっくりと振り……。


「あんなの、勝てっこない。アタシ達の機体、役に立たなかったよ……」


 それを口にした事で彼女は唇を噛み、拳を握りました。

 それを見ていた美月、そしてクラリッサはそれぞれ違う態度を取りました。

 クラリッサは呆れたように大げさな態度を取り……。


「駄犬、負け犬、貴様はやはりその程度か……あの程度の堕天使を狩り殺せないというのか?」

「そんなの!! 出来っこない! もしかしたらもっとすごい機体があるのかもしれないんだよ!? そんなのに……勝てる?」


 すっかりと牙を抜かれてしまった綾乃は悔しそうに声をもらします。

 対し美月は……。


「あの……コピスの件は分かりました……でも、私達の機体も改良しないと正直綾乃ちゃんの言う通りだと思います」


 美月はあくまで冷静に……。

 ですが、現状を打破する為に司にそう告げました。


「しかし、マナタンクを取り付ける回路、アレにどんな影響があるかまだ分からな――」

「それにこだわらなくても例えば武器とか装甲とか……影響のない部分で強化する事は出来ないんですか?」

「……外部武装の開発か……確かにそれなら……」


 伊逹はうんうんと頷き、司の方へと目を向けます。

 彼なりに考えがあるのでしょう。


「お嬢ちゃんの案、考えてみる手はあるかもしれねぇな……ドイツの連中やアメリカのやつなら良い案を持ってるかもしれない、どうだ? 司」

「そうだね……それも考えて、いや進めよう」


 彼は美月の案を快く受けてくれると立ち上がり……微笑む。


「それではこれで話は終わりだ」


 会議と言うよりほぼ新谷に対する話だったそれはあっさりとですが、各自の心に様々な思いを残し終わりを告げました。

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