44話 折れない悪魔乗り
敵は合流するつもりなのだろう。
回避に専念され、数を減らす事が出来ない美月たち。
魔法で倒すしかない! 美月がそう考えた時、天使たちは美月を捕らえようとしてきた。
しかし、そんな時美月を助けに来てくれたのは……部屋に閉じこもっていたリンチュンだった。
魔法使いの少女美月は魔法を使い天使を倒します。
ですが、以前のようにただ魔法をぶつけるだけでは駄目です。
今は限度があるのです……。
しかし、戦いにくいとは感じませんでした。
何故なら、一応は銃や剣の扱いはしてきています。
弾切れは起こしたとはいっても剣を使い美月は戦いに参加しました。
一方……。
「はぁ、はぁ……はぁ……」
何かに怯えるように息を荒げるのはリンチュン。
彼女には余裕がありませんでした。
当然です。
彼女は魔法を使わなければらならないのです。
プロテクションヴェールは常に発動させておかないと斉天大聖は勿論パイロットである彼女自身に何が起きるか分かりません。
それほど重要なシステムなのです。
だからこそ、死を恐れる彼女にとっては死活問題でもありました。
まず、魔法を使わなければ死ぬ。
使っても死ぬかもしれない。
更にはこの戦いで死ぬ可能性もあります。
「嫌、嫌……死ぬのは……」
か細い声でそう言う彼女の心情を美月は分かっていました。
誰だって死ぬのは怖い。
そして、死なれるのも怖いのです……。
ですが、現状どうする事も出来ません。
祈るのは早く魔力を回復する薬が開発される事。
しかし、それがそう簡単に行くかは謎です。
だからこそ美月達は今も死に直面していました。
かと言って逃げる事は出来ません。
逃げてしまえば日本はそれまでです。
「…………」
手を貸してくれているリンチュンやクラリッサに申し訳ない。
そう考えるのは美月も綾乃、新谷も同じ気持ちでした。
「持ちこたえなきゃなんとしても……!!」
そう意気込む綾乃の言葉に美月は頷くのでした。
「そうだね、持ちこたえないとっ!」
そうは言っても美月の魔法は頼りにできない悪魔乗り達。
なにも美月だけではありません。
リンチュンもそうです。
クラリッサに関しては確かにマナイービルに乗っているというのは同じではありましたが……。
「クラリッサ! マナは慣れていないんだろ? 下がってろ」
「はんっ! 悪魔に指図をされる理由はない。お前こそ下がっていたらどうだ? ん?」
挑発するようにそう言うと弾が無くなった銃を投げ捨て、ナイフを構えました。
「そんな小さな……」
「そうとは思えんな。装甲の薄い場所を狙えばこれで足りる。もし武器が足りないというのなら奪えば良い」
彼女は淡々とそう言い。
美月は同じ魔法使いだというのに彼女が別の能力者ではないか? とありえない事を考えてしまいました。
当然この世界に魔法使い以外の能力者はいません。
「どうした? びびってしまったか?」
彼女は美月の視線に気が付き、どこか優し気な声色でそう言いました。
「そんなことありません!」
その言葉に美月は頬を膨らませそう答えると……。
強力な魔法を使う事は出来ます。
ですが、仲間を巻き込むことはできない。
「はぁ、はぁ……」
荒い呼吸を繰り返し戦うリンチュン。
このままでは仲間達は全員負けてしまうでしょう。
私に……出来る事……。
美月は深呼吸を繰り返します。
魔力の消費が少ない物。
今私が倒れたら駄目……役に立てなくても駄目なんだ。
もし、美月が強力な魔法を使い、敵を倒せたとしても倒れてしまえばリンチュンの心が折れてしまうでしょう。
そうなれば後続の天使達が来た時にもう戦えない事は分かりました。
だから……。
「美月!! 横、左!!」
綾乃の叫び声が聞こえ、美月は手を伸ばす天使を見ます。
先程は思わず恐怖で固まってしまいました。
ですが――。
『魔力増幅確認、テンペスト……展開まで後5秒………2、1展開』
美月は風を纏いそれから逃れるとブレイバーを手に天使の背後へと回ります。
怖い、怖い怖い怖い怖い! でもそれよりも――。
怖い事はあるんだ!!
そう心の中で叫ぶとブレイバーを天使の背骨へと叩きつけました。
めきめきと言う音と共に天使の背骨にはひびが入ります。
たった一機ですが、その一機は美月にとって初めて自分の意思で戦い落した数となったのです。
今まで意志が無かったと言えば嘘になります。
ですが、最初から撃破迄彼女の意思で彼女自身がと言うのは初めてででした。
そして、それは……それを見ていた者達にも伝わります。
そう……。
『夜空さん、一機撃破……その調子です! 今のペースで続ければ後三機合流前に倒せるはずです!!』
それはあくまで儚い希望です。
叶うかどうかも分からない期待。
それでも、士気を上げる理由には十分すぎる物だったのです




