25話 希望を得た悪魔乗り
現在支部に居る医師には頼めない。
だが、希望はあった……。
吉沢信乃……看護師である彼女は何と意志の免許を持っているという。
綾乃は彼女に美月を助けてもらえるように頼み、彼女は……それに応えてくれるのだった。
「ヘモグロビン値……」
「うん、それが多い人の血を入れれば美月が助かるって……」
吉沢に説明をした綾乃はその目を真っ赤にしています。
泣きながら説明した結果でしょう。
ですが、話を聞いた吉沢は困り果てていました。
「ですが、輸血となるとかなり人数が絞られますね……」
「……え?」
綾乃は彼女の言葉に首を傾げます。
すると彼女は――。
「通常の輸血でも他人の血液を入れる訳ですから、それなりのリスクがあります」
「でも、昔から――」
行われている医療行為。
そう綾乃は言おうとしましたがそれは吉沢の言葉によって遮られました。
「何より今は血液の提供者が少ないです。その中から探すとなると難しいですね」
彼女は考えこみ、綾乃は呆然としてしまいました。
つい先ほど彼女は大丈夫だと言ったばかりです。
「美月を助けてくれるんじゃないの!?」
「助けますよ、助けます……でも、それにはまず健康な人で血液を抜いても問題がない人物を探さなければなりません、その上で美月さんと合う血液を探し、更にヘモグロビン値も調べなければならないんですよ?」
そう聞いてしまうと綾乃は何も言えませんでした。
ただただ、呆然とし彼女はがっくりと項垂れてしまいます。
ですが、吉沢は特に気にした様子はありませんでした。
「まずはこの施設の人を調べましょう」
「……え?」
顔を上げると真面目な顔の女性はゆっくりと口を開きます。
「血液型が一緒の人ですからね、近場の人間からならすぐに数は絞られてしまうはずですが……。早速当たってみましょう……」
彼女はそう言うと、部屋を去ろうとし、綾乃は呆然と彼女を見送ります。
すると振り返った吉沢は――。
「何をしてるんですか? 貴方の事も調べるんですよ……さっさと来てください」
「っ! う、うん!」
彼女はこの時ばかりは吉沢に感謝し、ついて行いきます……。
血液型ならアタシも……。
そして、綾乃は自分の血が使えますようにと祈るのでした。
それからすぐに吉沢は血液検査をし始めました。
まずは血液型、それから様々な事を調べるようです。
ですから最初は人を集め血をとる所から始めます。
「…………その為にはすぐに人を集めたいのですが」
そう言うのは吉沢です。
彼女は綾乃達に指示をしていました。
ですが……どうやら問題がある様でした。
「出来れば他の医師や看護師にばれないようにしたいんですが、できますか?」
「なんで?」
綾乃が問うと彼女は溜息をつきます。
「恐らく現在の医者が邪魔をするからです……彼は私が医療行為をしようとしたら、即座に割り込んできました」
「まさか、それでメイユエは――!」
リンチュンは憤りを感じたようですが、それに対して吉沢は首を横に振りました。
「何も夜空さんの事だけではありません、他の一般の方の治療でも邪魔をしました」
綾乃とクラリッサは医師を知るであろう東坂の方へと目を向けます。
すると彼女も頷き――。
「彼は多分この施設を潰しに来たんだと思います、だから……私達に十分な安全面は配慮されてません」
「そんな! 医者でしょ!?」
綾乃は声をあげますが、彼女は首を横に振ります。
「政府公認の……と言った方が正しいですね、ニュースで魔物が危険なものだとは騒がれていますが、なんとか丸め込もうとしています。予算を食うイービルは不要と考えているんでしょう」
綾乃はそれを聞き、呆然とします。
確かに今までまともに天使と戦えたわけではありません。
美月が来てからようやく話が進み始めたのです。
ですが、それでもイービルは天使に有用な武器。
だというのにそれを捨てるというのは政府側に魔物以上の何かがあるという事でしょう。
そんな事は綾乃も簡単に予測出来ました。
あちらに何か切り札があるから不要となったイービルを捨てる。
そして、魔物の材料となるミュータントを持つ魔法使いを捕まえたい。
それは分かったのですが……。
「そんな事で美月は見殺しにされるの? ううん、されかけたの!?」
自分が目覚めた時のやり取りを思い出し、綾乃は拳を握ります。
食い込んだ爪が皮膚を破り血を流しました。
そんな彼女を見て吉沢は溜息をつきます。
「とにかく、現状は此処にいる人間の血液を調べます」
そう言われ綾乃達は顔をあげます。
「私と東坂さん、そして貴女……この三人で助けられればいいんですが……」
彼女は不安がりましたが、綾乃は前へと出ると強く頷きました。
「分かった、じゃぁまずはアタシから……」
「まて、お前は――」
クラリッサはすぐに彼女を止めました。
理由は彼女が悪魔乗りだからでしょう。
「分ってる、でもないよりはマシでしょ?」
彼女はそう言って微笑むと吉沢へと向き直り――。
「お願い」
と一言告げるのでした。




