24話 聖女を助けたい悪魔乗り
意識を失ってしまった美月。
彼女を助けるには魔法では無理だという……。
しかし、ヘモグロビン値が高い人間の輸血ならあるいはと言う話を聞き、綾乃達は名乗りを上げた。
だが……それを調べるための医師が居ないのだ。
果たして美月は助かるのだろうか?
「心当たりがあります……あの人よりも信頼、は出来ないかもしれませんけど、信用できる人が……」
遠坂恵は真剣な顔でそう口にしました。
それに眉を歪めたのはクラリッサです。
「信頼は出来ない? どういう意味だい?」
「その……性格と言うか性癖に難があるんです。でも医師免許を持っていると聞いた事があります」
それを聞き、今度は綾乃が顔を歪めます。
「だ、大丈夫? 美月が可愛いからって変な事したりしないよね?」
「ああ……ええっと……」
明らかに目を泳がせる彼女に対し、綾乃はますます不安になります。
例え美月が助かっても身体に傷をつけたりするのだけは避けたかった綾乃は……。
「ほ、他の人探そう!?」
と咄嗟に口にしました。
ですが、東坂恵は――。
「だ、駄目! 今彼女は危険な状態なの……その人は此処に居ますし、すぐに診てもらった方が良いと思います」
その瞳は真剣そのものでした。
それを見てリンチュンもうんうんと頷きます。
「メイユエ助けないと……」
残る二人は顔を合わせましたが、それで答えが出る訳ではありません。
二人して溜息をつくのですが……。
綾乃はふと考えこみます。
彼女の父の名は姫川司。
この施設の長であり、司令官です。
その娘である彼女にもある程度の個人情報は渡されていました。
美月を守るためにと提示してもらっていたのです。
ですが、その中には医師免許を持っていると書かれていたのは前の医師だけでした。
「そんな人いたっけな?」
「多分書いてないんだと思います、必要ないからって……」
「はぁ!? それって経歴詐称なんじゃ?」
綾乃はそう言いますが、遠坂恵は「そうは言われても」っと言うしかありませんでした。
「そんな人何処に居るの?」
いよいよ信用したくない。
綾乃はそう思ったようです。
「そうだな、一体どんな人物だ? 場合によっては……頼めんぞ?」
「はい、名前は吉沢信乃……ここでは看護師です」
その名前は綾乃が良く知るものでした。
そして、彼女はパクパクと口を開きます。
「よ、よよよよよよ!?」
「以前の先生に聞いた事があるの。彼女は医師免許が必要な医療行為を行っていましたから……そうしたら先生が教えてくれて……彼女は何故そんな事をするのか? 勿体ないって……」
「嘘でしょ!? だって諦めたって聞いたよ!!」
綾乃は思わずそう口にしますが、東坂恵は首を振ります。
「そうは言われましても……事実看護師の仕事以上の事もしてたでしょ? 普通は出来ませんよ?」
そう言われてみれば……と綾乃は思い出します。
美月がこの施設に来てから、吉沢が良く美月の事を診ていました。
その中には医師としての医療と呼んでいいものまでありました……。
ですが、その時は疑問に感じなかったのです。
「じゃぁ……あれは……」
「免許を持ってるから、先生が特別に許可していたのだとおもいます」
身近な所に医師が居ると知り、驚きを隠せない綾乃でしたが、すぐに扉へと向かいます。
「どこに行く?」
「頼んでくる……アタシが行った方が話聞いてくれるし」
この場に居る誰よりも自分が行った方が良い。
彼女はそう考え口にしました。
ですが、クラリッサはそうではないようで……。
「はぁ、貴様一人で――」
「言っておくけどあの人、美人やかわいい子が大好きな変態だけど、自分より胸大きい人は敵だから」
そう口にした彼女の目にはそれぞれの胸がうつります。
リンチュンは当然としてクラリッサも大きく、東坂恵も標準より少し大きいでしょう。
「あ、あの……アヤノちゃん?」
「冗談で言ってるんじゃないんだよ? 本当の事」
彼女はそう言うと部屋から飛び出しました。
何処にいるかは大体想像がついていたからです。
彼女は走り、その部屋へと向かいます……。
そして、辿り着くと扉についているインターフォンを押しました。
「どなたですか?」
女性の声が響き、アヤノは深呼吸をすると答えようとしました。
しかし、普通に声をかけてもまた喧嘩が始まってしまうでしょう。
だからこそ、彼女は昔を思い出し……。
「信乃お姉ちゃん……アタシ」
するとスピーカー越しにがたがたと言う音が聞こえました。
失敗した? そう思っていると今度はバタバタと言う音が聞こえ、扉が開きます。
そして、中から顔を出した女性は――。
「どうしたんですか? 頭でも打ちましたか?」
「……お願いがあるの、やってくれたら、信乃お姉ちゃんの言う事聞く……」
複雑な表情を浮かべた少女の言葉は彼女にとって魅力的だったのでしょう。
部屋へと入るように促します。
綾乃は彼女に導かれるままその部屋へと足を踏み入れました。
「まずは私の条件からです」
「…………まって、お願い先に話を聞いて信乃お姉ちゃん」
早速話を始めようとする吉沢を止めた綾乃。
そんな彼女の顔を見て吉沢はただ事ではないと悟ったのでしょう。
「どうし、たんですか?」
「お願い、美月を助けて……」
その言葉に吉沢は首を傾げます。
「夜空さんでしたら目を覚まし――」
「魔法を使ったら倒れたの! それには別の人の検査が必要で! 血を沢山!!」
綾乃は焦りながらも説明をしようとしました。
ですが、まともにしゃべる事は出来ず……その瞳に涙を溜め、すぐに流しました。
「お願い、美月が死んじゃう……死んじゃう……」
子供の時に戻った様に彼女は泣き。
その様子を見て吉沢は静かに首を横に振ります。
綾乃は彼女の行動を見るとついに声をあげようと口を開きかけました。
「死なせませんよ……」
ですが、彼女はそう言うのです。
そして微笑みながら綾乃にもう一度言うのでした。
「大丈夫です、夜空さんは死なせません…………さ、私は何をすればいいんですか?」
それは、綾乃が……最も望む言葉でした。




