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10話 化け物と呼ばれたくない少女

 お母さんが心配。

 美月のその言葉の意味に気が付いた綾乃。

 彼女は母親と合わせる約束をした後、ある場所へと美月を連れて行く……。

 そこで美月は綾乃の父にイービルに乗って欲しいと言われてしまうのだった。

 マナ・イービル。

 名前こそは出ていませんでしたが、ニュースで聞いた話の中に魔法使いが使えるイービルを開発中というのもありました。。

 イービル自体は天使と戦うための兵器……美月には遠い存在です。

 当然ニュースで流れても、聞き流していました。

 どうせ被害報告の様な物のついでだからです。

 ですが、今、それは美月の傍に迫っていたのです。


「君は魔法の使い方が上手い、魔力も高い……最新型のイービル……マナ・イービルは他に動かせる者は居ない」

「で、でも私……」


 戦うのが怖い。

 そう思うのが当然でしょう、ですが美月が真っ先に思い浮かべたのは……。

 化け物と呼ばれたくない。

 と言う事でした……だからこそ、彼女が使う魔法は人を癒す魔法なのです。

 そんな彼女がここで出す答えは……。


「私は人を治すために……」


 嘘です。

 自分でもそれは分かっていました。

 なんて醜い嘘なのだろう? 確かに最初に寄生させた時は母を助けるため、その後に魔法を使ったのは確かに人のためです。

 しかし、今はその時とは違い、自分の為に魔法を使っているのです。

 あの時、病院で逃げて行った人と自分は何ら変わらないのではないか? と美月は思い始めました。


「……分かっている、君は優しい」


 違う。


「戦う事も怖いだろう」


 そうだけど……違う。


「分っているんだ、君は母を助けようとして……」


 それは本当でした。

 何時からでしょう? 化け物と呼ばれたくないと思い始めたのは。

 最初はただ単に助けなきゃと思い、他人も癒していたはずです。

 ですが、その内……人の目が怖くなりました。

 何かを言われたという訳ではありません。

 ただ、自分が化け物と呼ばれたくないと思い始めたのはいつからか忘れてしまいましたが、今もそう思っています。


「やはり、適性があろうと君にまだ子供の君にこんな事を頼むのは間違っていたな」


 彼はそう言うと綾乃の方へと目を向け……。


「綾乃……お前もだ。今ならまだ私が口添えしよう……親ばかだと愚かな選択だと言われても良い」


 何の話なのかは美月には分かりませんでした。

 ですが、綾乃は首を振り……。


「良いって言ってんでしょ?」


 それだけを告げ、一つ溜息をついた彼女は――。


「それよりも夜空を部屋に返して良い? まだ疲れてると思うし、父さんは書類とかあるでしょ?」


 綾乃の言葉に頷いた彼は「そうだな」と告げ。


「夜空美月君、君にはこれからこの施設に居てもらう、勿論お母さんも一緒だ……だけど外に出る事は許されない」

「へ……?」


 それは大胆過ぎる監禁宣言。

 何を言っているのでしょうか?


「この前の襲撃で君はイービルを使わず己の力だけで病院付近の攻撃を防いだ。それの所為で君は先程言った通りパイロットに選ばれている」


 先程は自由だと言っていたにも関わらず。

 今聞いた言葉は決めつけているようにしか思えない。

 美月はこのまま戦いに巻き込まれ、その所為で化け物と呼ばれることに怯え震えます。

 すると彼は――。


「だが、私は恩人を戦いに巻き込みたくない、そもそもこれは理不尽な戦いだ……勝てる見込みが無い、ならせめて生きている間は――君を、君達家族を世間的に殺す」


 彼の瞳は決して怖い物ではなく優しい物。

 恐らくですが彼がしようとしてる事は美月を救おうとしてくれているのでしょう。

 ですが、先程断った美月にはその意味とそしてバレた時のリスクも分かりました。


「……それじゃ……でも……」

「もしばれたら申し訳ない、護ってやれないかもしれないな」


 彼はそう言うと皮肉気に笑います。

 ここで断れば自分は化け物と呼ばれない。

 だから出来れば戦いたくはない……でも彼の目論見が失敗すれば戦う羽目になる。

 その時は美月が純粋に人を助けようとしていた頃……。

 恐らく、その頃に助けた彼を今度は殺すことになるのです。


 それで…………良いの? ……だって…………。


 そこで思い出すのはあの老婆の事。

 あの時、美月はなぜ彼女に手を差し伸べたのでしょう? 化け物と呼ばれたくないから?


 違う。


 ただ単に目についたから?


 違う。


 他の人と同じように逃げ、恨まれたくないから?


 違う。


 自分に質問を投げかけては違うと繰り返す美月。

 彼女が行きついた答えは――。


 勝手に助けてた? 助けたいと思わずにそうすることが当然だって……。

 だから、気が付いたら……あの人の傍に?


 それは嘗て、母以外に助けた人……いえ、助けようとした人を思い出します。

 その人は二人居るうちの一人、少年でした。

 美月は彼を結局助けることが出来なかったのです……。

 いえ、助ける為の治癒の魔法をかけてあげる事すらできませんでした。

 思えばそれ以降だった気がしました……美月が化け物と呼ばれたくないと思い始めたのは……。

 自分は人間だって主張したくなったのも……その事件が始まりだったのです。

 そして、美月は慌てて口を動かします。


「私は……」









 あれは美月がまだ幼かったころです。

 母を助け、それから傷ついた人を助け。

 美月は大人に小さな小さな正義の魔法使いと言われ誇らしく思っていました。

 ですが、ある時ニュースで流れ始めた事件……度重なる天使(アンゼル)の襲撃に耐え切れず。

 精神を壊してしまった魔法使いが一人……。

 彼はもうこの先人間に未来はないと叫び、泣きわめき魔法を使い暴れはじめました。

 いくら身体が弱くなったとはいえ、普通の人にはない魔法。

 それに対処するのは一般人では難しいのです。

 流れるニュースの中、彼は魔法使いではなく、化け物と呼ばれるようになりました。

 そして、美月の近くで事件は起きたのです……。

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