①前世の記憶を思い出しました。
本編『俺様』の方の主人公シェリルが粗雑でいい加減だったのに対し、『ツンデレ』の方の主人公であるジリアンは繊細で真面目。
その為テイストがやや変わり、圧倒的にコメディ要素が減ります。
こちらは臆病な少女がウジウジ悩みながらも奮闘し成長するという、異世界学園青春ストーリーです。
予めご了承の上、ご高覧ください。
※初日だけ二話同時投稿です。
王立学園の入学式。
私は伯爵令息、ロビン・ホルブルック様と共に軽装馬車で登校していた。
「……ほら!」
「えっ?」
「なにをボサっとしてんだ、手だよ、手!」
「あ、ありがとうございます……」
私は彼の冷たい態度やキツい言い回しが苦手で、いつもビクビクしてしまう。
でも私にだけそんな態度、というわけではない。基本、皆にこんな感じなのだ。
なんなら他の人より私は気を使って貰っている。こうして馬車で迎えに来て、乗降の際には手だって貸してくれるのだから。
「……なんだよ?」
「いえっ、そその、制服お似合いです!」
「今更? ふっ、ホントお前ってどんくせぇなァ」
(あ、笑った)
幼馴染みの欲目とかでなく、ロビン様はとても素敵な方で。
普段は仏頂面だけど、たまにこう、はにかんだように笑ったりするとギャップも加わってトキメキが凄い。滅茶苦茶得した気分になる。
なんならもう、今日の運は使い果たしたかもしれない。初登校なのに。
(はっ!? そうじゃないわ!! 今日こそ『怖いからもう少し優しくして』って言おうと思ったのに~!)
──結局、今日も言えそうにない。
良く言えば『おっとりしている』、揶揄を孕んで『マイペース』と言われがちな私──ドナフィー子爵家次女、ジリアン。
ロビン様とは幼馴染みで両親の仲がいいことから、暫定的に婚約者となっている。
『暫定的』というのは、口約束のみで正式なモノではないため。
幼い頃仲が良かったからといって、それが続くとは限らないし……という配慮から。
今でも仲は悪くない。
ただ昔はもっと仲が良く、私はやっぱり少しばかりオドオドしていたけれど、気にせず文句も言えた。
しかし成長するうちに家格の違いや、なによりロビン様の麗しさや優秀さを理解するようになると徐々に言いづらくなり、いつの間にかなにも言えなくなってしまったのだ。
彼は優しいので、私が嫌だと言えば是正こそ難しくとも、きっと善処はしてくれるだろう。
そう思うのだけれど、いつも言えない。
失敗したが、今日はマシな方。
今では彼の言動に、嫌われているような気になることも多い。
ロビン様はハッキリ物を言う代わりに、陰口を叩いたりしない。こうして無意味に傷付いて萎縮するようになってしまったことで『いよいよ嫌われるのでは』と思ってしまう。
負のループだ。
ちゃんと気持ちを伝えたら……と思うのに、それが上手くできない。
かといって、離れる勇気もない。
こんな自分が嫌になる。
両親や兄からは『合わないのでは』と心配されてしまっており、なんとかしなければ、と気ばかりが焦っていた。
新しい婚約者なんて考えられないけど、ロビン様の方はきっと違う。
そもそも彼は人気が高いのだ。
現在、女の子にはあまり興味がない様子の彼だが、学園にはこれまで出会ったことのない魅力的な女の子が沢山いるに違いなく、これからが不安で堪らない。
憂鬱な気持ちの中、迎えた入学式。
『入学生代表、フェリシア・ロッド』
「はい!」
(あら、同じクラスの方だわ)
入学生代表で呼ばれた女の子は、印象的な美少女だった。
小柄で可愛らしい面立ちだが、肩までのサラリとしたピンク色の髪の毛と空色の瞳は聡明さを醸し。所作も令嬢らしくはないものの堂々としており、スッと伸びた姿勢が美しい。
代表ということは、優秀でもあるのだろう。
しかも彼女は、魔力量の多さから男爵家に入った元平民だそう。
(まあ、なんだか物語の主人公みたい……)
自分で思ったそれに、頭を殴られたような衝撃を受け、その余韻でなにがなんだかよくわからないうちに入学式は終わっていた。
帰りに教室に迎えに来てくれたロビン様にも心配されたけど、それもぼんやりとしか覚えていない。
幸い、特になにも粗相はしなかったようなのが救い。
その日の夜。
「──はわぁああぁぁぁぁぁ!!」
就寝後、私はそう叫んで飛び起きた。
「お嬢様?!」
「ヤダーそこは可愛く『はわわ』でしょう?! これだから私ってヤツはぁ!!」
「おっお嬢様どうしました!?」
「──はっ?!」
叫びを聞きつけて、まだ働いていた侍女が部屋に跳んでくる。羽根枕をベッドに叩き付けていた私は、急いで鏡を用意させた。
「……あら、あらあらまあまあ」
「おおおおお嬢様……?」
そこにはまあまあの美少女が映っている。
『これが私……?!』みたいな感慨は一切ない、見慣れた顔ではあるが。
侍女には『顔が潰れる悪夢を見た』と、それらしい理由をつけて手を患わせたことを謝罪して出ていって貰い、私は再び鏡を見た。
今ならわかる、私はまあまあの美少女だということが。
そう──私は前世の記憶を思い出したのだ。
そのせいか、今までコンプレックスですらあった自分の顔を客観的に評価できる。
なんていうか、『地味で大人しいなどと宣いながらどう見ても可愛いという、古き良き少女漫画のテンプレヒロイン』的なまあまあの美少女である。
見慣れた感覚もこれまでの記憶もあるので、憑依とかで別人格になったとかじゃないと思う。ただ、もともと脳内にいた『冷静な自分』が、新たな知識を持って存在感を濃くした感じ。
「もしかしてコレ、『乙女ゲーム転生』じゃない……?」




