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乙女ゲーのモブに転生したら推しの俺様系がグイグイきますが、三次元の俺様には反発しかありません。  作者: 砂臥 環
番外編:幼馴染みの彼が乙女ゲームのツンデレ攻略対象だったようなので、BSS展開を阻止する為に変わります!

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17/19

⑨恋の始まり……とは思えませんが、フラグの可能性も捨てきれません。


フェリシアさんが快く承諾してくれたので、放課後ロビン様と三人で会うことになったのだが──


「アンタが噂のロッド嬢か」

「あら、いい噂ですか?」

「さあそれはどうかな」

「まあどちらでも。 聡明で優秀と評判のホルブルック様ですもの、勿論噂なんかに惑わされたりなさらないでしょうから」

「はっ、入学生代表にお褒めいただけるとは光栄だな」

「ふふ、私のほうもホルブルック様にご存知頂けて光栄です」


ふたりはのっけから、割と険悪な空気を醸し出していた。恋の始まる空気ではないものの、これはこれで全く安心できない。

ふたりとも笑顔なのが逆に怖い。

多分漫画だったら、背景に黒いのを漂わせながら「はははは」「ふふふふ」というふたりの笑い声が、ホラー調の字体で渦を巻くように書かれているに違いない。


「時間の無駄だ、率直に聞こう。 何が狙いだ?」

「狙いとは? 失礼ですが、もう少し具体的にお願いします」

「アンタが高位貴族に近付いていることは耳に入っている」

「!」


(きっとイヴァンジェリン様のことだわ……!)


だが経緯を説明すると、私が虐められていたことがバレてしまう。ロビン様には話したくない。


「特に隠し立てもしておりませんが、それがなにか?」

「それがなにか、と聞いているのはこちらのほうだ。 フェリシア・ロッド」

「まあ……まるでなにか裏があるみたいに仰るのですね。 平民上がりの男爵令嬢でしかない私が、立身の為の後ろ盾を求めるのは当然でしょう? そこに後暗いことなどありません」


(そ、そうだわ! それよ!!)


「そ、そうですよロビン様……! フェリシアさんはちょっと計算高いだけで、その計算高さはあくまでも良識の範囲内でとても努力家です!! 不正や不貞などとは縁遠いかたですわ!」

「ジル……」

「ウフフ、ジリアン様ったら。 それ、あまり褒められてる気がしませんよ~」

「えっ? あっ、ほ褒めてますよ?」


勿論褒めている。ただし……不貞の部分は正直なところ希望でもある。他人の心変わりに関しては、なんとも言えないので。

だけど、少なくとも不正はしないだろう。彼女は努力家だし自尊心も高いから。なにより魔力量や成績を鑑みたら、無駄にリスクが高いように思う。


「ホルブルック様、私達(・・)は学年末試験のバディ戦で優勝(・・)を狙っているんです」

「「!」」


(あれッ?! ……『優勝』だったかな?!)


確か『絶対に功績を残したい』とだけしか言っていなかった気が──


「『私達』っつったな? ジル、それは本当にお前の意思なのか? この女に言いくるめられたんじゃ」

「い、いいえっ! 私の意思です!!」


思い出しているうちに話を振られてしまい、咄嗟にそう返した。私の意思ではあるので。

……まあ、言いくるめられてないとは言えない。特に今。まさに今。


「そのっ……た確かに最初はビックリしたし、私がバディで平気なのか不安でしたが……一緒に頑張ってみたい、と……」


大それた発言の自覚はある。情けないけれど、最後のほうはどうしても蚊の鳴くような声になってしまった。それでも本心だ。


「…………」

「…………」

「ふ~ん……おいジル、ちょっと見せてみろ」

「へ?」

「基礎の『球』でいい」

「あっあわっ、あぁあの、はっはい!」


緊迫した空気からの、ロビン様が腕組みして見守るという、昨日より更に緊張を強いられる謎の状況の中、基礎の『球』を出す。

昨日の夜自主練したかいもあってか、それともないのか……全く昨日と変わっていない。


(綺麗な『球』って言われたけど……)


正直なところ、私にはコレがいいのか悪いのかさっぱりわからない。コントロールと言われても、あまり意識してもいないのだ。


「チッ……わかった、もういい」


舌打ちと共にロビン様は私に背を向け、フェリシアさんのほうに向かい、少し距離を詰める。

険悪な雰囲気だが……やはり美男美女。絵になる。


(っていうか絵になりすぎるぅぅぅ!!)


まるでそれは、『確執から始まる攻略対象との、初イベントスチル』みたいで。

一触即発の空気よりも不安で胸がバクバクいっている。目が離せない。


「ロッド嬢」

「はい」

「バディのことはまあいい。 だが俺はまだアンタを信用したワケじゃない。 ……ジル」

「ははははいっ?!」

「本当にお前の意思でやる気なんだな?」

「……はっはい!」

「ならいい。 だが──」


再びフェリシアさんのほうに詰め寄るロビン様。


「……ッ!?」


ふたりは小声で言葉を交している様子。


(ぃやぁああぁぁぁぁぁ?! 近い近い!!)


全私、大絶叫。in 脳内。


ロビン様の表情は超絶お怒りの時の真顔。

フェリシアさんは鉄壁の微笑み……とは言えない感じにいつの間にやら変化した、不敵な笑顔。

恋の始まりどころか空気は今まで以上に険悪である。おそらくなにか毒吐きあったりとか、そんな感じなんだとは思う。


それはわかってはいる。

わかってはいるのだ。


でも──


(さささ三次元んんん~!!!!)


慣れてきたと思った三次元の破壊力。

その眩しさ(×2)を目の当たりにし、平静でいられる筈もない。


認識できることは『古き良き少女漫画のヒロイン風そこそこ美少女』は、正真正銘の美男美女の前で今、完全にモブと化しているという悲しい現実──

いや、群衆(モブ)というより、背景か。

実際、割って入るどころか全く声すら出せない。目を逸らすこともできないままただ立ってる私など、きっとそのへんの草だ。まさに(w)


「──ジル!」

「!」


突如振り返ったかと思いきや、明らかに苛立った様子でズンズンとこちらにやってきたロビン様。少し乱暴に腕を捕まれ、私は背景()から人として画面に復帰した。


「 帰るぞ」

「あっあああの……」


フェリシアさんの方を見ると、にこやかに微笑んで手を振っている。


相変わらず美少女だが、今は『なにを考えているかわからない』と不安に思ってしまっている自分がいた。



──だけど、それはそれ。

フェリシアさんはやはり大事な友人だ。


(せめて今からでも、イヴァンジェリン様のことは誤解だと言わないと)


「あの……フェリシアさんは」

「ジル、あの女をあまり信用するな。 魔力量が多いだけにフィッツロイ先生はまだしも……アイツはライツ公爵令嬢とクローザー公爵令息にも近付いてる」

「!」


(クローザー公爵令息……!?)


思いもよらぬ名前が出てきたことに、息を呑む。

彼は『俺様系攻略対象』と私が睨んでいた方だ。

イヴァンジェリン様とのことは(図らずも自分がきっかけを作ったので)当然知っているが、彼にもお近付きになっていたなど知らなかった。


「お前が変に巻き込まれるかもしれないのを、見過ごすことはできない。 わかったな、ジル」

「……」


返事はしなかったが、否定や反論をすることもまた、できずにいた。


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愛されてるなあ( ˘ω˘ )
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