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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第三百五十話 琥珀色の空の下で戦いの終止符を。

 俺は光る金盤を手にしつつ、周辺の状況を見渡してみる。皆、この異常状態にあっけに取られており、敵味方の誰一人動くものはいなかった。アイドナを除いては。


《金盤を中心に、金のパワードスーツが囲んでいます》


 後ろを見ると、鹵獲した金のパワードスーツが浮かび上がっていた。持っている、金盤を中心にして、三角形のエリアが築き上げられている。


 なんだこれは?


《すぐに、マスターキーを金盤に》


 言われるままに、俺はマスターキーを金盤に取り付けた。その、次の瞬間だった。


 次々に広がっていく、光のコンソールパネル。そして空を埋め尽くすまばゆい光が金の鎧を通り越し、どこまでも果てしなく続いて行った。そしてアイドナが言う。


《コロニー全システムへのアクセスが可能。メインシステムへルートアクセス認証》


 どういう……。


 俺が戸惑っていると、アイドナが言う。


《メインシステム連結。全システム掌握》


 アイドナの高速演算が次々に、全ての情報を暴いていく。


《全シナプスリンクの連結を確認。コアロジック強制進入成功。上位プロトコルへ進化させますか?》


 やってくれ。


 指示をしたとき、膨大な量のデータと知識が、俺の全細胞に通達されてきた。体中が光り輝いた瞬間、なんと俺の青備えの鎧が弾けるようにしてパージされる。


《全生態系データ掌握。資源転用技術掌握。一時ロック可能》


 なんだそれは?


《パワード・スーツ。及び、キメラ・マキナに対するシナプス連結のカットです》


 やってくれ。


 次の瞬間、パワード・スーツとキメラ・マキナが力の抜けた人形のように崩れ落ちる。


 そこで、金のパワードスーツを着た奴らが叫ぶ。


「う、動けん! なんだ! これは!」

「くそ! だれか! あいつを止めろ!」


 だが、誰一人として動けない。


《システム最奥にシステムコアを発見。解析します》


 ああ。


《解析に失敗。未来予測変換及び、高次元演算を開始します》


 ……もはやついていけなかった。だが、すぐに……。


 俺の頭の中に、更に情報が入り込み、光のエネルギーが膨張した。


《転移ゲートシステム確認。異次元転移ユニット確認》


 異次元転移ユニット?


《データ履歴確認。あなたは金盤により、この世界に呼ばれました》


 なん……だと……。


 突然のアイドナの言葉に、俺は言葉を失ってしまう。俺が呆然としていると、ようやく周りから声をかけられているのに気が付いた。


「あなた!」

「コハク!」

「お師匠様!」


「あ、ああ……」


「よかった! 返事をしてくれた」


「みんな……まだ……無事か」


 周りの皆が頷いた。そして、ヴェルティカが俺の手を握る。メルナが反対の手を握る。


「敵が動きを止めたのよ。これはコハクがやったの?」


「ああ、ヴェルティカ。この金盤は、敵の核につながっていた」


「敵の……核?」


「そして、分かった事がある。俺をこの世界に連れて来たのは、この金盤だ……」


「えっ! この……金盤が、コハクを?」


「ああ」


 側で磔にされている、エルフが叫ぶ。


「それはどういうことだ……」


 俺は、ここにいるエルフたち、キメラ・マキナの全名前を知っている。全て掌握した。


「サファイヤ。そして、ペリドット、バイライト」


 俺は残り二つの、金のパワードスーツの名前も呼ぶ。


「なぜ、我々の名を……」

「貴様は、一体……」


 俺は、そいつらに告げた。


「俺は、超越者と同じ世界から来た」


「な、なんだと!」

「そんな! ばかな!」


「超越者は、古代に死んでいる。その後、お前達をコントロールしていたのは、AIというシステムだ。それが、キメラ・マキナを繁殖させて、お前達を守っていた」


「いや! 我々の存在は、超越者様の意志だ!」


「それは……間違って伝わっている。システムエラーだ」


「ど、どういうことだ?」


「超越者は……俺と同じだった」


 皆が何を言っているのか、分からないという顔をしている。おそらく、俺だけが理解していた。


「超越者はバグだ。俺よりも旧世代の」


「バグ?」


 サファイヤが言う。


「そうだ。そして、何故かこの世界に来てしまった」


「意味が……わからん」


「キメラ・マキナは、地上の人間を喰らい尽くすために作られたのではない」


「いや、それは違う! 養分にして、生きるようになっている!」


「いや……」


 超越者は俺に、伝えて来たのだ。前世で同じ様に殺処分されたバグがいたら、この世界に呼び寄せる。そしてシステムを読み解いて、元のAIの世界に復讐してほしいと。あの、不条理な世界を壊すために、この世界にいたエルフの力を借りて、キメラ・マキナとコロニーをつくったのだと。


「エルフも……ある意味、犠牲者だったのかもしれん。もとは、人間と共存していたのだ」


「我々が?」


「そうだ。この世界の一員として、同じ様に地上で暮らしていた」


「いや、星が我々の住処だ」


「ちがう。人間よりも丈夫で、宇宙空間でも暮らせる耐性があったんだ」


「それで……選ばれた?」


「キメラ・マキナを地上で作れば、この世界の人間が滅びる。だから宇宙にまで行って、キメラ・マキナを増殖させたのだ」


「な、なんのために!」


「前の世界への復讐だよ。俺も同じように、あの世界に爪弾きにされて殺され、この世界にやってきた。その世界への復讐のために、キメラ・マキナとこの転移装置を作った。その着ているパワードスーツは、宇宙空間で作業をする為のものだった」


「……我々は、機械に支配されていたのか……」


「そうだ。超越者の意志伝達系統が破損し、正確に情報が伝わっていなかった」


「そんな……」


 皆が、黙って俺の話を聞いていた。おそらく、仲間達は半分以上理解していない。理解しているのは、コロニーから来たエルフたちだけだろう。


 そこで、もう一人のエルフ、ペリドットが叫ぶ。


「どうやって! 前の世界に復讐するというのだ? 侵略者とはなんだ!?」


「侵略者は。この俺だ」


「き、貴様が? 侵略者だと?」


「本来超越者は侵略者とは言っておらず、来訪者と言っている。システムエラーで侵略者となったのだ。お前達が探し求めている、侵略者はこの俺だ」


「な、なんと……」


「そして、復讐のシナリオはもう完成している」


「な、なんだと?」


 俺のところに、金盤と三体の金のパワードスーツが来た時、全てのシナリオは出来上がっていたのだ。


「この、金色に空を埋めている幕は、この星全域に渡っている」


「世界に?」


「そうだ。そして、全ての座標を俺に伝えてきている」


 サファイヤが聞いて来る。


「座標とは? 何の座標だ?」


「全、キメラ・マキナの座標だ」


「それは、どういう……」


 俺の脳には、世界中、全てのキメラ・マキナの位置が特定されていた。俺達の牢獄にいる奴らも全て。

そして先ほどから、一つのボタンが眼前で点滅している。


「なぜ、キメラ・マキナがあれほど好戦的かがよくわかった。それは……前世への復讐の為だった」


「これから、どうなる?」


「異次元転移システムを作動させる」


「異次元転移システム?」


「すべてのキメラ・マキナを、俺がいたAI支配の世界に転移させることができる」


 それを聞いて、敵だけじゃなく全員が驚愕の表情になる。


「本来、我々は争うべきじゃないんだ。そして、キメラ・マキナはその使命を全うしてもらう」


「使命と言うと……復讐か……」


「そうだ」


 もはや、その事に、誰一人声をあげるものはいなかった。アイドナが破綻したシステムの補修をして、全ての情報を正確に俺に伝えてきている。


 そして俺は、超越者の意思を継いで……。


 あの、糞みたいな世界に復讐をする。


 俺と、超越者は刻をこえてここでリンクしたのだ。


「これから、どうなるか分からない。だが、俺は超越者の遺志を継ぐ」


「「「「……」」」」


 転移してくれ。


《イエス》


 すると、目の前に転がっていたキメラ・マキナ達が立ち上がり、次々に消えていく。それは市壁の下の大軍勢にも広がり、あっという間にキメラ・マキナがいなくなっていった。


 牢獄の奴らはどうなる?


《向こうの世界に魔法はありません。闇魔法は解けて目覚めます》


 そうか。


 それほど時間をかけずに、俺達の前から一斉にキメラ・マキナたちが消えてしまった。


 サファイヤが言う。


「消えて……しまった」


「前の世界に行った。あちらにも人間が大量にいるからな。突然現れた、キメラ・マキナたちに蹂躙されるだろう。キメラマキナは超越者の指示に従い、あらゆる場所に入り込み、狡猾に効率的にAI支配された人間を滅ぼしていく事になる。恐らく対抗できるのは、AIに支配されていない人間だけだ」


「それを、信じろと?」


「これから、俺が見たデータを全てのパワードスーツにリンクする」


 ブン……。


 すると、金色のパワードスーツを着ている奴らが言う。


「ほ、本当だ……嘘じゃない」

「これが……真実だったのか……」


「そうだ。これは、世界中のパワードスーツに配信された」


「……わかった」


 そこで、ヴェルティカが俺に話をする。


「コハクは、自分の世界に戻らなくても良かったの?」


「あんなひどい世界には絶対に帰らない。ここには、ヴェルティカも、メルナも、マージも、アーンも、そして大切な仲間が沢山いる。それに、エルフの受け入れもしていかねばならない。忙しくなるぞ」


「はい!」


 最後に、俺がアイドナに言う。


 不要な機械を排除したい。余計な争いを生む。


《分かりました。では、全てのパワードスーツをパージした後、飛行艇のドアロックを全て解除します。その上で、全てを止めましょう。転移装置は?》


 破壊してくれ。


《全ユニットパージ。ロック解除》


 どうやって、全てを破壊するんだ?


《あなたの中に隔離していた、殺処分時の殺人ナノマシンを使用。死刑執行の時に注入されたすべてを、転移システムによって全システムに拡散します。全ての、AIを除去し機能停止します》


 コロニーもか。


《イエス》


 するとどうなる?


《全ての大都市が、光のヴェールを閉じて、全てが人間の手に戻ります》


 やってくれ。


《イエス》


 すると、目の前のパワードスーツたちが全てパージされて行く。それが全て終わると、アイドナが殺人AIを転移システムで解放。パワードスーツたちから、次々に光が消えていった。


《星の裏側まで、反映させました》


 そうか……終わったか。


 俺は、倒れているヴァイゼルを起こして、魔法薬を飲ませた。


「あ、うう……コハク。わしは、天国にいるのかのう? まさか! 地獄?」


 すると、マージが言う。


「ボケ爺。生きておるわ」


「な、なんじゃと! また、死に切れんかったか!!」


「なーにいってるんだい」


 俺は、ヴァイゼルに言う。


「ふらふらのところ、すまんが皆に声を届けたい」


「わかったのじゃ」


 声を拡散する魔法を展開してもらう。


「みんな! コハクだ! 戦いは終わった! 目の前のエルフは殺すな! これから、この世界で一緒に生きていく仲間だ! エルフも、もう戦いは終わりだ!」


 俺が言い終わると、国中から大歓声が起きる。


「やったぁぁぁぁ! コハク王がやってくださった!」

「生き延びた! 俺達は生き延びたんだ!」

「人類は! 滅びない!」


 大歓声が巻き起こり、俺はそのままサファイヤのところに行く。


「サファイヤ。あの二人と共に、エルフたちに説明をしてほしいのだ。これからの未来の事を」


 そして磔の縄を切り、自由にしてやる。


「わかった。そうしよう」


 ヴェルティカ、メルナが鎧をパージして、俺に抱き着いて来た。


「コハク! コハク!」

「やったね! 凄いね!」


「おい。皆が見ている」


「いいじゃない! 夫婦なんだから!」

「そうだよ。わたしだって妹なんだから!」


「そうだな。そのとおりだ」


 そうして、この世界の滅びが無くなった。人間もエルフも、不要な戦いをしなくていい。宇宙に浮かぶコロニーも全て、殺人ナノマシンによってシステムを停止する。光る金盤も全て停止し、世界に再び中世の文明が戻って来る。


 そこで、アイドナが言った。


《AIはこれで、私だけになりました》


 それでいい。お前が死ぬと、俺も死ぬ。


《はい。あなたがこの世界の覇王です。新世界を作り上げていってください》


 覇王……。それが何かは分からないが、俺は俺のやれることを精一杯やるだけだ。


 この世界を、自由と平和の世界にする為に。


 誰にも縛られない、命のために。

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