第三百四十八話 リンセコート都市防衛戦
こちらから攻撃が出来ないのを分かっているかのように、次々に都市の周辺に集まる敵たち。さらに、ドローンが飛び交い、俺達の状況を全て掌握しようとしているようだった。
するとクルエルが言う。
「これは、兵糧攻めか?」
俺は、首を振る。
「そんな時間は無いと、あちらは考えているはずだ。一連の行動には、確実に焦りがある」
「侵略者か」
「そうだ。どうなっているかは分からないが、なんとしても金盤を手に入れたいと考えているだろう」
《エルフに、金のスーツの事を聞いてください》
わかった。
俺はそのまま、磔にしたエルフのところに行って猿轡をとる。
「金の鎧に何か仕掛けがあるのか?」
「知らない」
「あと、二機ほど来ている。お前は三号機だな」
「……」
声は出さなかったが、表情が強張るのが分かる。この状況で、冷静な判断ができていないようだった。あっさりと、情報を話したに等しかった。
「コハク!」
呼ばれて正面を見ると、こちらが攻撃が出来ないのを知ったからなのか、大群の中から次々にフライングボードが飛び上がってくる。そして、そいつらが銃を構えシールドに向けて撃ちだした。だが、一発も貫通することなく、水の波紋のような跡を残してボロボロ落ちていく。
「どうやら、シールドを破りにきたようだ」
「これは、どこまで持つんだ?」
オーバースが聞いて来るが、俺は首を振った。
「敵の情報が未知数だ」
今の状況を、逐一司令部に通信しているだろう。こちらの情報が少しずつ、裸にされていってる。
《今の行動で、シールドの性能は分かってしまうでしょう》
どうなる?
《敵に、何らかの破る手立てがあると推測します》
どのくらいで破られるだろう?
《まもなくです》
わかった。
「ヴァイゼル!」
「なんじゃろな」
「皆に声が聞こえるように!」
「うむ」
あの声を広げる魔法を各所に展開しており、俺の前に黒い球が浮かぶ。
「みんな。もう間もなく、シールドは破られる。敵の弾は防げるが、人間じゃないものが混ざって来る。それは到底かなうものではない、それらが来たら必死に逃げ回れ。魔装機動大隊が相手をするしかない。奴らは捕えたエルフに危害を加えねば、生かしてはくれるかもしれん。だが、それは家畜としてになる。人間の尊厳を守りたいなら、戦うしかない。だが、どうしても無理だと言う時は、散り散りになって四方へ逃げろ。誰かは生き延びれるかもしれん」
シーンとしている。そこで、ヴェルティカが俺の耳に顔を寄せて言った。
「本当の事だけではダメ。鼓舞して」
俺はヴェルティカに頷いた。
「……だが、活路はあると信じる! みな! 人間の力を見せて、あいつらに一泡吹かせてやろう!」
すると、ウィルリッヒが、自分の剣を抜いて声高らかに言った。
「人の王であるコハクに、我はこの剣を捧げる!」
すると、その隣でプルシオスがニヤリと笑い剣を掲げて言った。
「剣を! コハク王に捧げよ!」
するとオーバース達、フロスト、フィリウス、ビルスターク、アラン、そして、魔導士達、ヴァイゼルまでもが剣を掲げて叫ぶ。
「「「「「人類の王に! 我らは命を捧げる!」」」」」
その声が、ヴァイゼルの魔法で、各地に伝わったらしい。
「「「「「「オオオオオオオオ!」」」」」
そこで、俺も剣を上げる。
「我がもとに集う戦士たちよ! 敵を蹴散らしてやれ!」
その時だった。両サイドの奥にいた、敵の金色のパワードスーツが浮かび上がってきた。
《やはり、来ました》
「来た! みな! 構えよ!」
金色のパワードスーツが両サイドに来た時、その二機の間に雷のような光が瞬いた。
バッ! バッ! バッ! バッ!
ピシィ! とシールドにひびが入る。
《光の共鳴。やはり、構造を知っています。そしてあの、肩の砲塔が高出力レーザーです》
「シールドが割れるぞ―!!!」
バリン! とうとうシールドが無効化されてしまった。すると一斉に、門から敵が雪崩れ込んで来た。俺とフロスト、オーバース隊、風来燕、フィリウス隊が一斉に飛んだ。ヴァイゼルとメルナとアーンは、磔のエルフを守るために結界をはっている。
ドシュゥゥゥゥ!
俺の眼前に、金色のパワードスーツが迫る。まず墜とすならコイツだと、仲間は全員理解していた。
「この! 養分風情が!」
金色は、そう言って肩に着いたレーザー砲を構えている。
「ここまで、近寄ったのが間違いだったな!」
ガチャ!!
俺はそいつに体当たりし、そのまま押し切りながら肩に付いた砲塔を超高周波ソードで斬り落とした。
「クッ!」
そして俺はそいつに、そのまましがみついて地上に高速落下する。
ドン!! バババババ!!
小さなクレーターが出来上がり、その上から次々にキメラ・マキナが飛び込んでくるのが見えた。
ドシュッ!
俺は、金色との戦いを割け、キメラ・マキナに飛びつかれる前に上空に飛ぶ。すると今度はその上で、パワードスーツのフライングボードたちが道を塞ぐ。
数が多い。
《爆裂弾を展開し、目くらまし、爆裂斧を振り回して離脱》
バシュ! ボン! その爆発したところに、爆裂斧を駒のように振り回しながら突っこむ。
「うわ!」
「ぐお!」
「がああ!」
何機かのフライングボードを破壊し、俺はその上空に出る。そしてフロストに聞いた。
「金の鎧は?]
「砲塔は斬った!」
「フロスト、風来燕! 空の奴らは任せた! フィリウス隊は、敵の頭上から爆雷を! オーバース隊! 地上の部隊を支援する! ついてこい! 」
「「「おう!」」」
ドン! 俺達は、門から雪崩れ込んで来たパワードスーツと、キメラ・マキナに押されている青備えのところに急行する。
「こ、コハク様!」
もうすでに、数体の青備えが倒れている。敵のパワードスーツも破損しているが、キメラ・マキナたちの力が強大だった。
「オーバース達は、青備え達を後退させつつ、殿を務めてくれ! 俺一人でやる!」
「「「おう!」」]
俺は、キメラ・マキナとパワードスーツが襲っているところに行って、爆裂斧で吹き飛ばした。
《金剛不壊! 無意識回避、幻影剣舞、時間知覚拡張、空間歪曲加速》
俺の鎧が、次々に光り輝く。
《瞬殺剣線》
ドシュウウ! 十体のパワードスーツを撃破しつつ、三体のキメラ・マキナを瞬殺した。
「敵が叫ぶ」
「こいつは! 危険だぁ!」
叫んだ奴から、首を飛ばす。
《疾風迅雷》
大群の中を、蛇が走るように殺していく。
身体強化をきらすな。次の切れたタイミングで次ぐに発動だ。
《はい》
俺が次々に敵を蹂躙し、三十体を殺した時、敵が叫ぶ。
「キメラ・マキナを、こちらに呼べ!」
その叫んだ奴の首を、すぐに斬り飛ばす。指示を出したという事は、指揮系統の上にいるという事だ。
《聴覚強化。暗蜘蛛穏》
聴覚を発達させ、敵の叫びを判別しつつ、ステルス状態になり駆け回る。パワードスーツから見れば、サーモグラフで分るだろうが、この状態だと仲間か、キメラ・マキナか見分けがつかないだろう。次々に群がって来てた奴らが俺を見失い、俺は、更に殺戮の速度を上げる。百体を殺害したころに、敵が言う。
「ここはだめだ! 引け!」
次の瞬間、そいつの首を飛ばした。周りに味方が一人もいないため、思い切って超高周波ソードを振り回す事が出来る。敵の指令が出る前に殺し、統率は乱れていくばかりだった。
《一度、都市に離脱してください》
アイドナの指示通り、俺は転がる敵を飛び越えて、都市の内部に下がった。
「オーバース! 兵は?」
「隊列を組み直した。キメラ・マキナに突破され隊列を崩されたらしい。ミスリル兵がだいぶやられた」
「そうか」
するとその時、フロストから通信が入る」
「ベントゥラが被弾。後退させる!」
それでは、空がマズい。
「オーバース! 敵はまた来る! 青備えを率いて、迎え撃て!」
「「「おう!」」」
ドン!
俺は最高速で、フロストたちのところに飛び、フライングボードを五機撃破する。
そこで、ボルトが言う。
「お館様! 助かった! だが、数が多すぎる! そして、あの金色が強ええ」
フロストが必死に抵抗しているが、その金色に押されていた。
ドシュウウ!
俺はフロストが戦っている金色に激突して、そのまま急上昇した。
「こ、この!」
ドシュウウウウウウウ!
金色を狙わずに、フライングボードを超高周波ブレードで破壊する。そのまま蹴りを入れて離れると、飛翔能力を失って金色が落ちていった。
「フロスト! まともに戦うな! フライングボードを破壊すれば奴らは飛べない」
「了!」
フロストもボルトもガロロも、次々にフライングボードを狙う戦術に切り替えた。すると、次々にパワードスーツが落下していく。
そこに、フィリウスが来た。
「コハク! 爆雷を補給する!」
そこで、アランの義手が無くなっているのに気が付く。
「どうした?」
「やられた」
「下がれ!」
「いや、やられたのは義手だ! 我はどこまでもフィリウス様と戦う!」
「……わかった」
今度は、ヴァイゼルの通信が入る。
「け、結界が突破されそうじゃ」
「ここは頼む!」
俺は急降下して、市壁の上に降り立つと同時に、へばりついてる十体のパワードスーツを破壊した。
「助かったのじゃ!」
「今のうちに、魔法薬を」
「うむ」
ガパン! とフェイスカバーを開けて、ヴァイゼルとメルナとフィラミウスが魔法薬を飲む。
「やはり、こいつを救出しに来たか」
捕えた緑髪のエルフは、俺を睨んで言う。
「よくも、よくも同朋を……」
「お前達は、それよりも多くの人間を殺した」
「……」
「徹底抗戦だ!」
「お前は……危険だ……何だおまえは……その強さは」
俺はそれを無視して、市壁の上から敵の軍勢を見る。数は殆ど減ったように見えず減らした影響など、何も無いように思えた。
どこだ……指令を出しているのは誰だ……。
今度は、南側に敵が回っていくのが見えてくる。
《ドローンの偵察で、南にも侵入経路があるのが分かったのでしょう》
あちらにいるのは、ミスリルの騎士達だな。
《すぐに突破されます》
俺は、ウィルリッヒに言う。
「俺は南に回った敵を阻止する。指揮を頼む」
「わかった」
ドン! そして俺は、南側に回った敵に向かって飛ぶのだった。




