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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第三百四十七話 リンセコートの都市を囲む軍勢

 結界牢に来た俺達は、もう一度、捕えた緑髪のエルフを目覚めさせた。流動食を流し込んでいるので、コイツの意志とは関係なく生命を維持している。


「私は……まだ死んでいないのか?」


「まだだ。お前にもう一度だけ聞く、お前の仲間が群れを成してやってきた。目的はお前か?」 


「だから、答えられない。仲間を危険にさらす真似はできん」


 変わらない答えだった。どうあっても仲間を守りたいらしいが、いまは俺もその気持ちが良く分かる。俺がコイツであれば、同じことを言っていただろう。


「お前をあちらに返して、軍を引いてもらえる可能性は?」


「無い。お前達は、超越継承者に手を出したのだ」


《多少精神が弱っているのでしょう。ようやく情報らしき情報を吐きました》


「お前は、超越継承者と言う者なのか。超越者と何か関係があるようだな?」


「私は、超越者の子孫。代々受け継がれた、血を持っている」


《大きな情報です》


「特別という事か……」


 エルフは自分がしゃべり過ぎた事に気が付いて、口をつぐんだ。


「あと、何人いる?」


「……」


 そいつは、もう、答えなかった。そこで、ヴァイゼルが言う。


「非情ではあるが、盾にするしかないかのう。この者を貼りつけにして、殺さぬ代わりに軍を引けと」


 すると、エルフが高笑いした。


「くはははは! そんな事をしても、引かぬ。侵略者を退けるためにはな!」


「ふむ」


 だが俺が、みんなに言う。


「いや。使おう。どうせダメであるなら、コイツを盾にしようがどうしようが同じだ。同族がダメでも、何かが反応する可能性も否定できん」


「じゃ、な……。非情ではあるがの」


「関係ない、フィリウスコイツを連れて行こう」


「分かった」


 俺とビルスタークとアランが、縛り付けたエルフを運び出した。牢獄を出て、市壁に向かっていると、こちらに向かってベントゥラが走って来る。


「コハク! 奴らが動いた!」


 俺は冷静に答える。


「砲塔の弱点を見抜かれたな」


「コハクが言った通りだ」


「奴らには、判断するための機械の助言がある」


 それを聞いて担いでいた、エルフが驚いて言う。


「なに! お前は、なぜそれを知っている!!」


「お前らの、システムなど旧式すぎて話にならんからだ」


「ど、どういうことだ……」


「はて、どういうことか? 我々は、それの上を行く。それよりも、敵の前でしゃべられたらかなわん。ベントゥラ、コイツの口をがんじがらめにしてくれ」


「あいよ」


 そいつの口元を完全にふさぎ、話が出来ないようにした。もはや、貼りつけられた人質でしかない。


 市壁の上に登ると、オーバースが言う。


「コハク。あれを見て見ろ」


 都市から近い草原に、次々に現れる敵。どうやら射線を掻い潜って来るように、指示をされている。


「敵は恐らく、大砲とシールドの仕組みを読み切っている。攻撃をするなら、解かなければならない事。そして、この大型砲塔が近距離の攻撃に向かない事。既に、敵には悟られている」


「本当に、コハクが言った通りになるんだな」


「そうだ」


「そいつは、人質……ってことか」


「まあ、あまり役には立たん」


 するとその時、アイドナがガイドマーカーを表示した。草原の一角に、それを表示させる。


《金の鎧を、二体確認北西に一体、東北に一体》


 いよいよか……。


 そこで俺は、次の指示を出した。


「決戦の時が近づいた! 戦えぬ者は地下施設へと非難! 戦える者は、地下施設の入り口付近へ配置! 青備えは、一番前に出て構えろ!」


「「「「「「おう!!!」」」」」」


 伝令が走り、皆が所定の位置に付こうと動き出した時だった。ワイアンヌが、駆け込んで来る。


「お館様!」


「どうした?」


「金の鎧と! 金盤が共鳴しております!」


「なに!!」


《想定外です。敵から、ここにある事を特定されるでしょう》


 どうするか?


《あなたが金盤を所持してください。金の鎧は、レイたちに守らせてください》


「レイの部隊は、金の鎧を守ってくれ!」


「「「「は!」」」」


 アイドナが更に言う。


《一度、全軍の指揮を、一度ウィルリッヒに譲るのが効率的です。まだ敵は来ません》


 俺が、ウィルリッヒに告げる。


「俺は確認せねばならない事がある! ウィルリッヒが、一時、指揮を変わってくれ!」


「わかった。その重大な任務を受けよう」


 俺はワイアンヌと共に、一目散に金盤の下へと走った。その後ろを、ヴェルティカがついて来る。


「ヴェルティカ! みんなといろ!」


「嫌よ。コハクといるわ」


 どうやら説得は出来ないようだ。俺は妻を連れて、金盤が保管されている地下倉庫へときた。


「本当だ……」


 金盤が共鳴している。俺はそれをケースに入れて、背中に背負う。


「次は鎧の部屋だ」


 金色の鎧の保管場所に行くと、レイたちがそこを守っていた。


「お館様! 鎧が光っております」


「本当だ……」


《何らかの理由があります。これも持ちだしましょう》


「運び出す!」


「「「「は!」」」」


 金の鎧も持ち出して、俺達は皆の下へと走る。


 ドン! ドン! ドン!


 轟音と共に、先から叫び声が聞こえる。


「撃って来た!!」


 正面のシールドを見ると、どうやら砲撃を受けているようだった。


「あれは、シールドの能力を探っているんだ!」


 アランが、しかめっ面をして言った。


「こっちから手を出せないのが辛いところだ」


「敵には、青備えを貫く兵器がある。今は、我慢だ」


 ドン! ドン! と次々に砲撃の音が鳴り響き、シールドの向こうでは、いくつも爆発が起きていた。あちらの技術だけではなく、結界魔法技術を加えているため、簡単には破られないだろう。見上げれば、幾つもの監視ドローンが飛び回り、都市の周りを回っているようだった。


「こちらの状況を調べているようだな」


 俺達が市壁の上に登ると、正面にもドローンが浮かんでいる。


「監視されている。そして……コイツを見ている」


 それは、拘束されたエルフを見ている。皆が武器を構え、攻撃に備えているのも見えているだろう。


 その時だった。突然、目の前のドローンが声を上げた。


「愚かな地上の家畜どもよ! よく聞け! そこにとらえている同朋サファイアに、危害を加えた場合、既に養分にする権利も与えない。一斉攻撃による殲滅のみになると心得よ!」


 なるほど、やはりコイツが一つの目当てらしい。


《もう一つ情報を得る事が出来ました》


 だな。コイツの言っている事は真実だと分った。


《シールドはいずれ破られるでしょう》


 徹底抗戦だ。


《では、次の指示を》


「このシールドはいずれ破られる。市街戦に突入したら、最初の計画通りに遂行してくれ」


「「「「「了」」」」」


 そして、大型鎧二機が俺の側に来た。


「メルナ、アーン。例の件は……頼んだ」


「わかった」「任せるっぺ」


 だめな時は、ヴェルティカを連れて逃せという約束だ。ヴェルティカは、逃げろと言っても逃げない。だからメルナが闇魔法をかけて、大型鎧で連れ出すという事になっている。


《まるで、ノントリートメントのような価値観です》


 彼女だけは……どうしても生き延びさせたい。何故かは分からん。


《愛と呼ばれる感情でしょう。制御も可能ですが?》


 それはやめてくれ。俺が、存在する理由が無くなる。


《はい》


 アイドナは俺のDNAに存在するAIだ。だが、俺の全てを奪われない。それは俺が、バグだからだ。AIにコントロールされない遺伝子を持つ、そう言う人間だからだ。


 ドン! ドン!


 その間も、連続で砲撃が繰り返された。おそらくシールド破るのは、あの金色であると想定している。奴が動いた時に、この均衡が破られるだろう。


 俺は市壁の上から、後ろ側に振り向いて下にいるレイに言う。


「それは何かの鍵だ! 敵が来たらそれも奪いに来るだろう」


「は! 絶対に死守してみせます」


「最悪は逃げ回れ」


「は!」


 次々に軍勢があふれ出し、都市の周辺にはパワードスーツとキメラ・マキナであふれかえるのだった。

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