第三百四十六話 大型飛行艇から出てきた大軍勢
アーンとワイアンヌは、航空艦隊を挟みこむように、対になってのろしを上げた。
「よし! 二人は巻き込まれないように離脱」
「わかったっぺ!」
「はい」
ピューン!
そして飛行艇団が、その警戒ラインを超えたと同時に、リンセコート都市の方から砲弾が飛んできた。それが敵のシールド前面にあたるが、少し空間が揺れた程度だった。
「あれで、破れるのか?」
フィリウスが聞いてくる。演算通りならば破れるはず。アイドナの確率は百パーセントと言っている。次々に砲弾が飛んできて、空間に揺らぎがみえていた。俺達は固唾をのんで確認し、ベントゥラが言う。
「ありゃ、硬ぇぞ」
「大丈夫だ。もうすぐだ」
次の射撃の時だった。何かが裂けるような音が鳴り響き、目に見えるように空間に亀裂が入っている。亀裂から次々に砲撃が撃ち込まれて、大型飛行艇が被弾していった。
ボルトが言った。
「やったな!」
「まだだ。また来る」
大型飛行艇に爆裂弾が撃ち込まれ、とうとう大型飛行艇は浮力を失う。
今度は、クルエルが叫んだ。
「行くか!」
「まだだ」
《電磁パルスの砲撃が来ます》
今度は、次々に小型艇が落ちていく。電子系統が麻痺して、制御不能になっているのだ。
《いまです》
「よし! ここだ! 浮上! 残存する小型艇を一気に叩く!」
ドン! ドン! ドン!
俺達は部隊ごとに分かれ、残って浮かんでいる小型艇に襲い掛かる。爆発し墜落していく小型飛行艇、その小型艇が大型邸の上に落ちていく。すると、落ちた飛行艇に変化が出る。
「湧いて出て来たぞ!」
クルエルが叫ぶ。
大型飛行艇や小型飛行艇から、蟻のようにパワードスーツやサイバネティクスヒューマンが出てきた。
「飛行艇を捨てたか」
「だな」
そこに、ヴァイゼル達が飛んで来る。
「やりましたな!」
「ヴァイゼル、あれを見ろ」
「敵は、船を捨てましたか」
「やつらも、判断が早いようだ」
「そのようですじゃ」
俺達は、更に驚愕する事になる。大型飛行艇から出て来る敵の数が尋常では無く、いつまでたっても、その行列は尽きなかった。
「なんですかな! あれは!」
皆が呆然と眺める中で、それは、まるで黒い波のようになりつつあった。
《あれ自体が都市である可能性があります》
あの巨大な飛行艇ごと?
《はい。シュトローマン伯爵領を覆い尽くすほどの大きさ。あれは、敵の居住区である可能性が高い》
次々に出て来るのは、パワードスーツに続いて生身のエルフ、さらにキメラ・マキナが大量に吐き出されてきた。そしてどうやら、車両のような物もあるようだ。
オーバースが言う。
「こいつは……」
「想定外だ。ここまで、いるとはな」
今度は、ベントゥラが言った。
「何か出て来たぜ!」
大型飛行艇の上部、そこに突起が出て来てフライングボードに乗ったパワードスーツ軍団が出てきた。するとアイドナがガイドマーカーで、いくつかに標準を合わせた。
《確認を、金のパワードスーツです》
本当だ。
《一号か、二号か、それとも他のナンバーかもしれません》
捉えたサファイヤとやらとの、関係が高いという事か。
《間違いありません》
だが俺の指示が、遅れてしまった。金色のパワードスーツから、レーザーのような物が射出されて、高度を落としていたオブティスマを襲ったのだ。
スッ! と光が通り抜けた時、オブティスマの腕が落ちた。
「全員! 緊急離脱! 都市前面まで後退!」
「「「「「「了!」」」」」
何だあれは?
《ビーム兵器の可能性》
オリハルコンを斬るのか!?
《そのようです》
俺は急速に飛びながらも、オブティスマの鎧に触れた。
「大丈夫か!」
「落とされたのは、義手の方だ。問題ない」
「そうか。とにかく、後退だ」
「わかった」
都市の前に浮かび後方を見れば、軍勢がまるで黒い波となり襲い掛かって来ていた。俺達の真下には、青備えとミスリルの鎧を着た味方の軍団がいる。
「着陸!」
着陸すると、ウィルリッヒとプルシオスが来る。
「どうだい?」
「飛行艇は機能停止したが、物凄い数の軍勢がやって来る。都市の中に戻り、シールドをはって迎え撃つしかあるまい」
「わかった!」
全員がシールド都市の内部に戻り、敵の襲撃に備える。だが敵のシールドも、これと同じ原理だった。アイドナが、向こうの技術を解析した作ったのだから間違いない。敵にも破る方法があるかもしれない。
俺が皆に言う。
「敵にはまだ未知の兵器がある。ドワーフ! 出来上がった弾頭はあるか?」
「あるっぺ!」
「とにかく集めろ。魔導砲で撃ってみる」
「わかったっぺ!」
ドワーフたちが弾頭を運び、俺達はすぐに市壁を上に登った。皆が集まり、西の地平を見る。
「凄い数だ」
「まるで、黒い波だ」
「あれほどとは……」
そこに、ドワーフたちが弾頭を持ってくる。
「えっほ、えっほ、えっほ!」
「よし! アーン! 魔法陣を掘れ」
「わかったっぺ! 何にするっぺか?」
「爆裂魔法陣だ」
「わかったっぺ!」
砲弾に、次々に掘られて行く爆裂魔法陣。それを次々に装填して、魔導士達が魔力を注ぎ込んでいく。全てが掘り終わったところで、俺はメルナとアーンに言う。
「大型鎧を装着!」
「うん」
「わかったっぺ!」
そこで、ヴァイゼルが言った。
「前砲塔、力は充填したのじゃ!」
「撃つ」
俺が言うと、プルシオスが声を出した。
「シールドを開けよ!」
既に、射撃の連携は出来ているようだった。
ウィルリッヒが言う。
「弾は今ある奴だけだ。外すなよ」
魔導士が聞き返してくる。
「黒い波は大きい。どこを狙えば?」
俺がそれに答える。
「中央だ! ばらして撃て!」
「「「「「「は!」」」」」」
ウィルリッヒが叫ぶ。
「第一砲塔! てー!」
ドン! ゴゴゴゴ! 着弾と同時に爆発を起こし、パワードスーツやキメラ・マキナ達を吹き飛ばす。すると敵軍は、一気に左右に散り始めた。
「散らばる前に撃ち尽くせ!」
「全弾! てー!」
ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!
散らばる前の敵軍に、次々に着弾していく爆裂弾。だが散らばった後では、大きな被害をもたらす事は出来なかった。
「シールド展開!」
プルシオスの声と共に、再び都市にシールドがはられる。すると、観測していた魔導士が叫んだ。
「何か来ます!」
見ればそれは、飛行ドローンだった。
「偵察だ! 飛行ゴーレムだ」た
それらは高速飛行していたが、次々にシールドにぶつかって爆発していく。後続のドローンが停止し、こちらの様子を伺うようにホバリングしていた。
「墜とすぞ。魔装機動大隊で出る! シールドを外せ!」
「シールド外せ!」
俺達がそのまま飛び出し、魔導砲や礫を駆使しながら飛行ドローンを破壊していく。
「全機撃破したぜ!」
「戻れ!」
全員が戻り、すぐにシールドを展開した。
「敵! 進軍をやめました」
「こちらの、砲塔を見たからだ。まだ、こちらに弾があると思っているだろう」
それを聞き、オーバースが言った。
「いずれバレるだろうな」
「時間稼ぎは出来る」
今度は、フロストが言う。
「だが、あれだけの、キメラ・マキナがいるとなると……マズいな」
「そうじゃのう。神殿都市では、たった二匹に手こずったのじゃ」
ベントゥラとガロロ、ボルトが俺に聞いて来る。
「数千……下手をすれば数万だぜ」
「起動鎧も、信じられないほどいたわい」
「馬もいないのに、馬車も動いていたみたいだぞ」
そこで俺が言う。
「そして、金の鎧がいた。あの、オブティスマの腕を墜とした奴だ」
「金の鎧か……」
「恐らくは捕えたエルフの仲間だ」
「あれか……」
「あれを、取り返しに来た可能性がある」
そこに、メルナとアーンの、二機の巨大鎧が上がってきてマージが言った。
「よほど、大事なんだろうねえ。あれが」
「どういうことだ……」
「分からないが、あれを起こしたほうがいいさね」
「あのエルフを起こすしかないか」
「だろうねえ」
「ヴァイゼル! フィリウス! ビルスターク! アラン! 俺と来い」
「わかったのじゃ!」
「ああ」
「「了」」
そして俺達は、急いで結界牢に向かうのだった。




