第三百四十五話 ヴァイゼルSIDE 魔導砲部隊
ヴァイゼルの視点
西の遠い空では、ドンパチが始まった。コハクが指揮を執り、敵の進路を固定する作戦だ。
あの不思議な男は、まるで全てを見通すかのように指揮をして来た。おおよそ外れた事は無く、不思議と状況がそっちの方に流れていくような気すらした。すると、ウィルリッヒ殿下が声をかけて来る。
「爺」
「なんじゃろ。殿下」
「どうなるだろうね」
「まあ、大局的にはかなり不利ですじゃな。普通に考えたら、見込みはないのですじゃ」
「普通にならね」
「じゃのう。殿下が見込んだあの男、大抵の読みがあたるような気がしますのじゃ」
「そうなんだよね。恐ろしいよ」
「むしろ、敵よりも恐ろしいのやもしれませぬ」
「だから、仲間になって良かっただろう?」
「まあ、殿下の読みも素晴らしいですがな」
そんな話をしていると、自分達の頭上を物凄い光の束が通り過ぎて行った。まるで真っすぐな雷のように光り輝き、大気が歪むような気配さえ感じた。
「凄いな。光の矢を放つのか」
「あれは、大砲です殿下。あの船たちが、一斉に放ったのですじゃ」
ワシにも、予感めいたものが来た。
「そろそろ合図が来るのじゃ! 全員まもなくじゃと心得よ!」
「「「「は!」」」」
国を超えた魔導士達が、物凄く長い金属の砲台の周りに集まっている。
「そろそろじゃな」
「いよいよか」
「全員! 魔法陣を展開し、巨大飛行艇に照準を合わせるのじゃ!」
六基の砲塔の前に、高精度の標準になるような魔法陣が展開される。砲塔の先と、その魔法陣の中心を潜らせれば、真っすぐに飛ぶとコハクが言っておった。
そして、いよいよわしらの視界に、合図ののろしが二つ上がった。
「あの、のろしの間から敵艦隊は進んで来るのじゃ! 狙い合わせ!」
「一番砲塔狙いよーし」「二番砲塔狙いよーし」「三番砲塔狙いよーし」「四番砲塔狙いよーし」「五番砲塔狙いよーし」「六番砲塔狙いよーし」
「うむ」
すると、大型飛行艇がどんどん大きくなってきた。コハクのいう通りに、正確に撃たねばならない。
「一番砲塔! てー!」
砲身に魔力がまとわりついて光り輝き、一番後方の魔導士がレバーを引いた。
バピュン!
「二番砲塔! てー!」
バビュン!
撃たれた魔導貫通弾が、次々に正確に大型飛行艇の鼻先に飛んでいく。
そして一番砲塔の魔導士が言う。
「一番砲装填完了!」
「二番砲装填完了!」
六番砲塔までの装填が完了した。
「観測魔導士!」
「大型飛行艇の前面に空間のゆがみが見られます! 本体には到達していません」
本当だった。コハクのいう通りの事が起きてしもうた。
「ひきつけい!」
更に、飛行艇艦隊が突撃して来る。
「天空魔導士アーン殿の、突貫魔法陣を三重詠唱!」
それぞれにとりついている三人の魔導士達が、砲塔に備わった魔法陣に魔力を流していく。
観測魔導士が言う。
「限界ラインまで、五、四、三、二、一」
「第一砲塔! てー! 」
次の魔導貫通弾の光の量が、三倍以上になって飛び出していった。
どうじゃ……。
バリン!
ドゴオ!
「高威力魔導弾貫通う! 敵大型飛行艇に被弾!」
「なりおった! 第二砲塔から第六砲塔まで順次射撃せよ!」
バビュン! バビュン! バビュン! バビュン! バビュン!
ドン! ドン! ドン! ドン! ドン!
「「「「「おおおおおお!」」」」」
大型飛行艇に次々に大砲があたり、大きな煙を吐き出している。
「観測魔導士!」
「穴が開いております!」
「や、やりおった!」
その時、第一砲塔の魔導士が言う。
「第三次爆雷弾! 装填よーし!」
「コハクのいう通りじゃ! ありったけの魔力を注ぐのじゃ! 魔法薬を手にしろ!」
魔導士達が砲塔に手を触れて、魔力を全部注ぎ込んだ。フラフラになりながら、魔法薬を補充して魔力を充填する。
「私達もやります!」
「あたしも!」
「わたしもです!」
ヴェルティカ嬢、メルナ嬢、フィラミウス嬢が言って、魔力を注ぎ込んだ。
「臨界突破!」
「爆雷弾! てー!」
膨大な魔力を持った爆雷魔法弾が、物凄い勢いで大型飛行艇に飛んで行った。それが煙を噴いた鼻面に直撃した時、物凄い大爆発が起きる。
すると、隣国のプルシオス殿下が叫ぶ。
「魔導シールド全展開!」
木々がなびき、こちらに凄い衝撃波が飛んできた。だがコハクたちが作った、透明なシールドとやらがその衝撃波を防ぐ。この都市は全くの無風状態だった。木々がシールドにぶつかって地面に落ちていく。
そして、見た。大型飛行艇が、高度を墜としていくのを。
「や、やったのじゃ……」
すると、ヴェルティカ嬢が言う。
「やりましたわ! ヴァイゼル様!」
「やったのじゃ!!!」
「「「「「「おおおおおお!」」」」」
そこで、ウィルリッヒ殿下が叫ぶ。
「まだだ! 気を抜くな! 次弾装填!」
「「「「「は!」」」」」
力を抜いてしもうた。するとウィルリッヒ殿下が指揮を変わる。
「一番、二番、三番! 落ちた大型飛行艇に照準合わせ!」
ガラリがらりと砲塔が水平より下を向く。
そして、プルシオス殿下が言う。
「シールド全解除! 砲撃の射線をあけろ!」
「てー!」
パシュン! バシュン!
次々に命中して爆発していく砲撃。
すると四番、五番、六番砲塔の魔導士達が言う。
「雷魔法弾装填完了!」
「よし! 狙うは小型飛行艇団!」
「狙いよーし!」
「狙いよーし!」
「狙いよーし!」
「四番、五番、六番砲塔。てー!」
雷に包まれた魔法弾が、群れを成す小型艇に向かって飛んでいく。するとその雷弾が通り過ぎたあと、小型艇が体制を崩して落下していった。
「ほ、本当じゃ! 落ちた」
それに対し、ウィルリッヒ殿下が言う。
「コハク曰く、電子制御の機器が機能停止すると言っていた。その影響らしい」
「言った……とおりじゃった……」
やはり、彼は違う世界から来たので間違いない。敵の弱点を知り尽くしての攻撃じゃった。
「魔導士長! 一番、二番、三番、四番、五番、六番。最後の弾頭です」
「い、言われた通り全弾撃ち尽くすのじゃ!」
次々に放たれる雷魔導弾が、小型艇を無力化していく。既に半数以上が、地面に落下していた。
ウィルリッヒ殿下が言う。
「合図を上げよ!」
パピューン! と言う音と共に、赤い信号弾が上空に上がる。こちらの用意した魔導弾が、空になったと言う合図じゃった。
すると、ウィルリッヒ殿下が言う。
「では! 全員! 青備えと共に、防衛陣形に移る! 魔導砲を放棄して、シールドの外へ!」
「「「「は!」」」」
ウィルリッヒ殿下がワシに行った。
「老体に鞭打って悪いが、爺の魔装機動小隊には前線への伝令を頼みたい」
「分かったのじゃ!」
「全兵士、玉砕覚悟。全軍の力が必要になった時は、伝令求む」
「確かに承りました」
そしてわしとヴェルティカ嬢、メルナ嬢、フィラミウス嬢が上空に浮かんだ。二人の殿下と魔導士は、次の準備に入っている。
「では、魔装機動小隊。魔導隊。行くとするかの」
「「「はい!」」」
「高速飛翔!」
「「「高速飛翔!」」」
ワシはいたいけな娘たちと共に、いまだドンパチが収まらぬ戦闘空域に突撃するのじゃった。




