第三百四十二話 口を割らぬエルフと敵の偵察機の撃墜
捕えたエルフは、衰弱しきっていた。なぜなら、俺が水や食料を与えても一切口にしなかったからだ。ただ俺達を、じっと見つめているだけ。
「何も食べなければ死ぬぞ」
「それでもいい。仲間達が危険にさらされなければ」
俺達は顔を見合わせる。こいつは、ずっとこの調子だった。
《ならば、少し情報を流してはどうでしょう》
「お前達の仲間が、助けに来ると思っているのか?」
「それは分からない。だが、むしろ来なければいいと思っている」
「なぜだ?」
「それは、お前達が我々にとって危険だからだ」
「家畜を恐れるのか?」
だが、そこで首を振る。
「いや。お前達はただの家畜ではない。高等生物であると、認めねばなるまい」
「ほう……」
こいつは、俺達の事を、ただ見下すだけでは無かった。
《冷静な判断がで出来ているようです》
話は通じる訳か。
「ならば、我々の生存する権利を認めて、お前達は軍を引くように仲間に言え」
すると、そいつが薄っすら笑ったような気がした。そのうえで、エルフが言う。
「私がそうしようと言って、仲間が理解するとでも? お前は、家畜やペットが平等だと言って来たら、それを理解して対等に暮らそうとするのか?」
「ならんな」
「それが分かったのなら、さっさと殺せ」
「いや。恐らくお前は、奴らにとって特別な存在だ」
そういうと、エルフの眉毛がピクリと動いた。
「そんなことはない」
「なら。なぜお前の鎧は特別な素材で作られている?」
「家系だ」
「家系?」
「そうだ。それほど、特別なものじゃない。代々家に伝わってきたものだ」
「古いのか?」
「そうだ」
……まてよ。金盤に金色のパワードスーツ……。何か関係があるのか?
《関係性がある確率は八十パーセント以上》
調べてみる必要がありそうだ。
《そのようです》
が言う。
「できれば、お前を無事に帰したいと思っているんだがな。どうしても、食料を食うつもりはないか」
「ああ」
「そうか……」
《では、あれを》
仕方ないな。
「闇魔法を」
「ふむ」
ヴァイゼルが眠らせた。そして、聞いて来る。
「このままでは、死によるじゃろうな」
「いや。方法は考えてある。もう、それはここに持ってきた」
俺の言葉に、ヴェルティカとワイアンヌが来る。
「すっごく煮たてた溶けるほどの肉と芋よ。一応味付けもして、ばあや特製の強壮剤を含ませてあるわ」
「ヴァイゼル。これを粉々にして液体に出来るか?」
「粉砕すればよいのじゃな」
「ああ」
持ってきた肉と芋のトロトロスープを、ヴァイゼルの魔法がどろどろの液体にする。
「これでええのか?」
「いい。ワイアンヌ」
「はい」
ワイアンヌが、持って来たのは。昆虫魔獣の、吸収管だ。人間や他の魔獣の体液を吸い込む管である。それを、闇魔法で眠ったエルフの口からスルスルと入れてやる。
「流そう」
その管から、どろどろの液体を流し込んでやった。全部流し込むと、エルフの頬が赤みがかって来る。
「こうやっていれば、死ぬことはない」
「哀れじゃのう……死ぬことも選べんとは」
それを聞いて、ヴェルティカが持っているマージがバックの中から言う。
「自分で死ねないのは、あたしと同じさね。そろそろ誰か燃やしてくれんかね」
「ばあや! 何を言うの! そんな事言わないで」
「お、怒るでないヴェル。冗談さね」
「言っていい事と悪いことがあるの!」
「わかった」
俺は、エルフを指さして言った。
「これは、何かの切り札になるかもしれないからな」
「じゃな」
エルフの尋問では得られるものが無く、金色のパワードスーツと金盤に何らかの関係性がある可能性だけが分かった。牢獄から出ると、ドワーフたちが作り上げた魔導レールガンを運んでいるところだった。メルナとアーンの重機ロボが、それの手伝いをしている。
「もう一基できたのか?」
「だっぺ! 何本あってもいいっぺ!」
「そうだな」
地面からひょこりと、アーンの父親が出てきた。
「お館様!」
「地下通路の建設も進んでるようだな」
「市民の逃げ場と、敵を迎撃するように張り巡らせているっぺ!」
「ああ。それでいい」
俺はそのままヴェルティカ、ヴァイゼル、ワイアンヌと共に、魔導装甲のおかれている格納庫に入る。
「金色の鎧には何があるの? コハク」
「わからんが、どうやら古い物らしい」
「ふむ。金盤と一緒ですじゃ」
アイドナがパチパチとパネルを弾く。
これと言って違いはないようだが。
《いえ。これのコードナンバーが分かりました》
コードナンバー?
《MU03》
ゼロサン。
《三号機です》
もしかすると、三番目に作られたという意味だろうか?
《可能性は高いです》
金盤と同じで、劣化が全くないようだ。
《金属の成分が分かりませんが、劣化はしないようです》
そうか……。
《金盤と同素材である可能性が高いです》
確かに見た目、肌触り、共にそう言う感じではある。だが、だからと言ってなんだと言うのか。
だがアイドナが言った。
《これは、純粋な金属ではないかもしれません》
純粋な金属ではない?
《何らかの生成で生み出された可能性が高い。やはり、高度な技術によるものです》
他のパワードスーツとは違う?
《恐らく、他はレプリカ》
これが、オリジナルということか。
《はい》
どうとらえる?
《超越者と呼ばれる者に関係しているかと》
他には?
《金盤と一緒に稼働させれば、なにかわかるかもしれません》
なるほど。
ヴェルティカが俺に声をかけた。
「考え事してるけど、何か気が付いた?」
「恐らく、これは金盤と関係している」
「そうなんだ」
そんな話をしていると、外に魔導装甲が降り立った。哨戒行動から帰ってきた、レイとビストだった。
「お館様!!」
「どうした?」
「小型機が、こちらに向かってきます。偵察かと思われます」
「とうとう、来たか」
「いかがなさいますか?」
「破壊するさ」
それを聞いたヴァイゼルが言う。
「いよいよ、呼び込む時が来たのじゃな」
「時間の問題だったからな」
「ですな」
俺がレイたちに言う。
「撃墜する。ついてこい」
「「は!」」
すぐに魔導装甲を装着し、俺はレイとビストを率いて飛んだ。すぐに、小さな飛行艇が見えて来る。
「先に行く。パワードスーツが逃げたら殺せ」
「「は!」」
ドン!
俺は二人を置き去りにして、魔導砲を構えて突撃した。
バシュッ!
突然の攻撃に、避ける事も無く飛行艇のコクピットに爆裂弾が飛び込んだ。
ボン!
煙を出した所に飛びこんで、そこで慌てているパワードスーツの間に立つ。
「な!」
超高周波ブレードで一機を胴体から着ると、血を噴き出させて転げた。
「くそ!」
もう一体が銃を構えたところで、俺はそれを掴み、超高周波ブレードを胸に差し込んだ。
「ガッ!」
すると、後部ハッチが開く音が聞こえる。
《後方から脱出する模様です》
レイとビストに任せる。キメラ・マキナを。
そして隣部屋に入ると、フードに入ったままのキメラ・マキナ二体がいる。暴れられても面倒なので、目覚める前に高周波ブレードで真っ二つにした。
《脱出を。地上に激突します》
ドシュッ!
地上で大爆発を起こした飛行艇から、一気に上空へと脱出する。そこにレイとビストが来た。
「二体は?」
「始末しました」
「全隊を集めて、飛行艇の残骸とパワードスーツを回収する。跡形も無くな」
「「は!」」
証拠隠滅のために、破片は残さず回収する必要があった。しばらくすると、クルエルとオブティスマ、ボルト、アラン、フィラミウスが駆けつける。
「急いで破片を回収して帰投する!」
「「「「了!」」」」
「フィラミウス。火を消してくれ」
「はい」
水魔法で火を消し、俺達は全員で破片を回収した。
「帰投する」
これで、消息を絶った飛行艇を探しに来るだろう。軍勢を待ち受けるための準備を急がねばならない。俺達はその事を胸に、リンセコートに向かって飛ぶのだった。




