第三百四十話 リンセコート要塞都市
リンセコート国の周辺に、魔導強化防壁が完成した。敵の要塞の素材とミスリル鋼を合わせて、炭素を含有して生成した壁である。耐衝撃、防火、レーザーも弾く仕様で、結界魔法陣が彫られている。
プルシオスとウィルリッヒが言う。
「本来なら、国中のお金をかき集めても作れないものだ」
「そうだね。交易の盛んなリンデンブルグでも無理かな」
「それを……自前で作れちゃうんだからね」
黒い壁を見上げながら、二人の王子が感嘆の声を上げる。
だが、ウィルリッヒが言う。
「だけど、門もないし、何カ所も開いている。あと、どのくらいで完成するんだい?」
「これで完成だ」
「「えっ!」」
「問題ない。これで守れる」
プルシオスが言う。
「いや、まってくれよ。そしたら、何カ所が空いている隙間から敵が入って来るだろう」
「まあ、普段はな。だが、臨戦態勢になった時は、そこにシールドと言うものがはられる」
ウィルリッヒが聞いて来た。
「シールドとは?」
「物理的な材質を使わない、堅牢な壁の事だ」
「それが、あの隙間に?」
「そうだ。むしろそのシールドを守るための、物理的な市壁なんだ」
「「へえー」」
二人の王子は、ただただ感心していた。アイドナは王都や神殿都市の生体動力の発動を確認した上で、敵の技術を発展させつつ、防御シールドを開発したのだ。
「空からも入れない」
「凄いものだ」
プルシオスが、市壁の上を指さして言う。
「そしてあれが、大砲なのかい?」
「大砲と言えば大砲だが、高出力の魔導砲と行った方が正しい。爆裂魔法と貫通魔法を付与した砲弾を、魔力の力で高速射出する」
「へえ……」
アイドナのデータにある、前世の遺産だ。レールガンと言うものを、更に魔導で強化した砲台だった。火薬を使っていないので、あれを攻撃されて破壊されても、爆発したりはしない。
「後はあれ」
そこには、アンテナのような物がある。
「あれなに?」
「生体動力を感知する、魔導レーダーと言うものだ。ここまで敵の飛空艇やパワードスーツが来た時に、我々に知らせてくれるという機器だ」
「ほう」
「リンセコート周辺に、あれと同じものを幾つも設置してある」
「そうなんだ?」
「それが反応すれば、全ての位置で確認できるようになっている」
「凄いね……そんな事ができるんだ」
「俺の知識と、アーンの天工鍛冶師の技術、マージの魔導の知識と、ワイアンヌが世界を回って得た素材の知識、ヴァイゼルの通知魔法の知識が合わさった結果だ」
「凄い能力が集まったという訳だ」
「そう言う事だ。一つでも欠けたら出来なかった」
すると二人の王子は、腕組みをして言う。
「あまり、国の交わりが無いからね。国同士で、技術の交流などした事が無いし」
「それは仕方がない。だって、国の至宝だからね。それは、交渉の道具にもなるだろうし」
二人の意見を聞いてて、何故この世界が発展しないのかが分って来た。技術や知識は武器になるから、それを国外に出す事を禁じていたのだ。そのせいで、文明の発展が遅れたとも考えられる。
俺が付け足して言う。
「そしてもう一つ、爆発的に周囲に増えた魔獣は、入って来れないようになっている」
「そうなんだ」
「ああ」
それも敵の技術を参考にして、魔獣を遠ざけないが、入っては来れない結界を作ったのだ。
「まあ、普通の人間も、足を踏み入れる事は叶わない土地になる」
「禁断の聖地……と言う訳か」
そして、ウィルリッヒが指をさした。
「あの、畑の透明な天幕は、全て農業用なんだろう?」
「そうだ」
農業用地には魔導技術で生成した、魔獣の皮で生成された幕で作った温室が、どこまでも続いていた。これは全て、ドワーフに依頼して作ったものだ。
「あれで、天候に左右されずに作物が作れると」
「そう言う事だ。今は、まだ気候が良いので、あれはほとんど必要ない」
流通が無いので、完全自給自足がカギになる。もとより、この領地は自給自足だったが、爆発的に人口が増えたので、食の確保が必要になったのだ。
ウィルリッヒがため息をつく。
「本当に、コハクを敵にしなくてよかったよ」
プルシオスも頷いた。
「ああ。王になってもらって良かった。どこの国が来ても、絶対に勝てない」
「そういうものか」
「「そういうものだ」」
「だが、まだまだ発展途中だ。これから、もっとその拠点を広げ、迎撃のシステムを作り上げていく」
王子二人は身震いしながら頷く。
「そして……あの、高機動魔装大隊。あれだけで、一国を滅ぼせるだろうね」
だが、俺は首を振る。
「人間と戦うなど意味がない。俺達が戦うべきは、空から来た敵だけだ」
「そうだね。共通の敵がいる」
「ああ」
二人の王子に、都市の説明をしている時だった。
キュイキュイキュイ! と音がなる。
「な、なんだ!」
プルシオスが驚き、俺が説明をする。
「通知だ。どうやら、シュトローマン伯爵領で次の爆弾が破裂したらしい」
「なるほど!」
俺は二人の王子をそこに置いて、格納庫に走る。すると、高機動魔装大隊のメンバーが集まっていた。
「コハク! 敵さんのお出ましだぜ」
「ああ」
そ俺達が魔導装甲を着ると、入り口が開いた。
「やるっぺよ!」
「そうね!」
そして俺は、皆に命じた。
「浮遊! 目的はシュトローマン伯爵領」
「「「「「了!」」」」」
近代化してきたリンセコート領を後にして、俺達は再び戦いの地へと飛ぶのだった。




