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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第三百三十九話 敵の情報とわずかな休息

 ミスリルの網にくるまれた金のパワードスーツは、言葉を発する事が無かった。ただ黙って、ダンジョン牢獄で結界に囲まれている。だが、このままでは埒があかない。


「さて、そろそろ、顔を見せてもらおうか」


 そう言って近づいて行くと、そのパワードスーツはエルフ語で話し始める。俺とマージしか話が分からないと思っていたら、ヴァイゼルがぽつりと言う。


「皆が分かった方が良いじゃろうか?」


「どういうことだ?」


「こんな事もあろうかと、帝都の禁書庫から禁断の所を盗みましてな……」


「なるほど、ウィルリッヒには黙っておこう」


「助かりますのじゃ。古代語を言葉として聞けるようにする魔法があるのですじゃ」


「なるほど。じゃあやってみてくれ」


 ヴァイゼルは、鎧から小さな本を取り出した。それをパラパラとめくり、魔法の詠唱をはじめた。


「終わったのですじゃ」


「変わったようには見えないが」


「あとは、話し出せばわかるでしょうな」


「なるほど」


 俺がしゃがみ込み、金のパワードスーツに触れた時だった。


「無駄だ」


 口を開いた。


「無駄?」


「勝手にマキナ・ユニットを開ける事は出来ん」


「ああ、心配しなくてもいい。認証が無いと開かないんだろう?」


「そうだ」


 俺は外部の一部を開けて、モニターパネルを操作していく。


 ピッピピピ!


 バシュー! と空気を吐き出すように、パワードスーツがパージされた。


「バカな!認証コードを知っているのは、コロニーメインシステムみのはずだぞ!?」


「だから、心配しなくてもいいと言った」


「貴様……養分の分際で何故このような事を」


「お前が知る必要はない」


 俺はヴァイゼルに向かって言う。


「ミスリル網の結界を緩めてくれ」


「わかったのじゃ」


 バシュッ。と緩んだところで、俺は緑色の髪をしたエルフの首根っこを掴んで引きずり出す。


「うっ!」


 ドサリ。


 白い服を着ていて、いかにも高貴そうな雰囲気をしている。自由にした途端に、突然俺に飛びかかってきた。しかし完全な身体強化と、高機動魔装甲によってびくともしない。


「エルフは優れていると思ったか?」


「なぜ、この技術を持っているんだ!」


「質問はこちらからだけだ」


「……」


 周りを三将軍が囲み、俺が質問を始める。


「お前はコロニーから降下して来たんだな」


「そ、そんな事を知っているのか?」


「お前の仲間達が、大量に降りて来たからな」


 すると、エルフは暗い目をして言う。


「お前達が……仲間を全員殺した」


「逆に聞くが、そうしなかった場合、お前達はどうするだろうな?」


「……」


 俺は、すぐに質問を変えた。


「あそこの領地で何をしていた」


「……家畜に教えることはない」


「なら殺すが」


「殺されても話す事はない。それは、仲間達の安全にかかわる事だ」


《志が高いようです。キメラ・マキナのように、黒曜のヴェリタスは効かないかもしれません》


 俺は、おもむろにレーザー剣を取り出した。あえてエルフの前に出して、レーザーを射出してみせる。


「それは……」


「これの所有権は俺にある」


「馬鹿な!……それは生体……」


 そこで、エルフは口を閉じた。だが、もはやアイドナが解析している事だった。


「キメラ・マキナの生体とリンクしている。だから、他の人間には操作できないと言いたいんだろう?」


「……」


「管理者権限ごと上書きして、俺が操作できるようにした」


「そんな……下等生物が……なぜ……」


 シュオン! レーザー剣を、そいつの鼻先に向ける。


「下等生物……に、一方的に蹂躙された気分はどうだ?」


「まさか……地上は……我々が思うよりも、文明が発達していたのか?」


「さてな」

 

 シュン! とレーザー剣を引っ込める。そしてさらに言う。


「我々の鎧は、お前らのマキナ・ユニットよりも性能が良い」


「そんな……」


「以前に回収した、マキナユニットの技術を参考に、新たな技術とこの星の魔法を加えて、全く違うものに生まれ変わった。お前達の銃器は俺達には効かない。それにお前達は、フライングボードに乗らねば飛べないが、これは単独飛行を可能としている」


 エルフはただ絶句していた。俺達の技術力に対し、理解が追い付いていないのだろう。


「もう一度聞く。あの領地で何をしていた」


「同じだ。殺されても言わん」


 やはり埒が明かなかった。


《この者は、ある程度の地位があるのでしょう。その発言で、広く被害が出る事を本気で拒んでいます》


 そこで俺はすぐに質問を変えた。


「侵略者はどうした?」


「なぜ……それを……」


「既に情報を得ている。お前達は、その侵略者と戦うために、あるものを探している」


「そ……」


 エルフは咄嗟に目を伏せる。いきなり真実を告げられて、動揺しているようだった。


「その上で聞くが、侵略者とは戦っているのか?」


 苦渋に歪んだ顔で、俺を睨みつけるように見る。


「それを聞いてどうする?」


「対策をうって、侵略者も倒さねばならん」


「侵略者を……?」


「侵略者には会ったのか? 強さはどうだった?」


「知らん」


「知らん?」


「それは本当に知らない。私は見ていないし、誰も遭遇していない」


 ようやく情報が出てきた。


《真実です》


 そうか……。


 それからもいろいろと聞いてみるが、一つも口を割らなかった。仕方がないので、コイツも連れ帰って地下牢獄に入れるしかないだろう。


「ヴァイゼル。闇魔法を」


「うむ」


 シュゥゥゥゥ! エルフは暗闇に堕ちた。


 そこでマージが言う。


「だけどコハク。キメラ・マキナと違って、こやつは食わねば死ぬ」


「まあ、何かを食わせてみよう。自らの意志で食わずに死ぬのなら仕方がない」


「そうするしかないだろうねえ」


 オーバースが言った。


「しかしみあげたものだ。何の感情も無い敵だとだとばかり思っていたが、上に立つ者の矜持をもって、最後まで口を割らなかった」


「それで、どう見る?」


「さらに怖くなったって事だ。ただ、臆病な警戒心の強いだけの種族ではない」


「そう判断するのか? 並列では無く、縦の構造があるからか?」


「そうだ。コイツは民衆のために死ねるらしい」


「そうか……」


「とりあえず、どうする?」


「また一つ生体動力を手に入れたから、もう一体の高機動魔導装甲の予備を作る」


「なるほどな」


 そして俺達は、むき出しのエルフとパワードスーツを洞窟から連れ出して、飛翔してリンセコート領へと戻ってきた。すぐに新しく作られた結界牢に連れて行き、そのエルフを投獄する。


 フィリウスが俺に向かって言った。


「さっき、オーバース様が言った事から考えても。もう一度、戦略を練り直した方が良い」


「どういうふうに?」


「縦社会だという事は、敵にも王、もしくは管理者や、統治する者がいるという事だ」


「そう言う事か……末端と無限に戦うよりも、やり方はあるという事だな?」


「確かに、志としては怖さを感じるが、敵の弱点を突くことも出来るかもしれないという事だ」


《フィリウスのいう通りでしょう。ただし、その敵の弱点を知るのが難しいです》


 だな。だが、大きな情報ではある。


《はい》


 ほんの些細な情報ではあるが、何も知らなかった時とは違う。敵は理性的で、計画性を持ってこの大地に降りて来たという怖さ。それと縦社会があるという事は、そのトップを攻略すれば、また新しい道が切り開けるという事だ。


 そしてクルエルが言った。


「こいつらが帰って来ないとみるや、救出部隊や増援が来るだろうな。コハクはどのぐらいとみる?」


《敵の余力があれば一日、避ける人員が少なければ三日となります》


「敵が多ければ一日で来るだろう。だが、少なければ三日だ」


 それを聞いて、クルエルが言う。


「ならば、この二十人は大急ぎで休息を取った方が良い。替えが効かないからな」


「わかった。全員! すぐに食事をとり、休息をとってくれ。明朝、日の出前に戦略室に集合」


「「「「了解」」」」


 皆で格納庫に入り、鎧をパージして休憩する事になる。


 ビルスタークが言う。


「では、フィリウス様。私とアランと共に食事を」


「いや……私はヴェルと……」


 それを聞いて、アランが言う。


「彼らは、新婚ですよ」


「そ、それは」


「さっ、いきましょ!」


 そしてフィリウスは、二人に連れられて行ってしまった。


 そしてアーンが言う。


「ウチは、プルシオスに会ってくるっぺ! 待っててっていったっぺ!」


「ああ」


「ワイアンヌも来るっぺ」


「はい」


 二人は、王子たちが寝泊まりしている、宿泊施設へと向かった。


 次にヴァイゼルが言う。


「では、フロスト。わしらは、殿下のところに」


「そうしましょう」


 次々にいなくなり、いつの間にか風来燕もレイたちも居なくなっていた。


 そして俺が言う。


「ヴェル、メルナ。家に帰ろう」


 ヴェルティカが目を輝かせて、大きな声で返事をした。


「はい! 旦那様!」


 そういえば、本当に久しぶりかもしれない。この三人で家に帰るのは。


 メルナが言う。


「お腹減ったー」


「そうねメルナ。メイドにお願いして、美味しいの作ってもらいましょ」


「うん!」


 何か不思議な気分だった。なんと言うか、温かい何かが流れるというのだろうか? 心の奥に熱を帯びた何かが流れるのが分かる。そして俺達は、馬車に乗り込み自分らの家へと向かったのだった。

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