第三百三十八話 敵部隊の瞬殺
高機動魔導装甲を使用したことによる、様々な戦術を検討する話し合いをしていた。俺の高等戦術を、皆の能力に照らし合わせている。
「魔導装甲の不備に対応するため、アーンとワイアンヌは、どの作戦にも必須になるだろう」
俺が言うと、ベントゥラが肯定する。
「だな。修理屋がいねえとどうしようもねえ」
「ああ。俺とフロストは単騎で攪乱。その為、通常の三倍の速度が出るようになっている」
「了解だコハク。私の鎧は、一点突破用と捉えていいんだな?」
「そのとおりだ」
次にヴァイゼルに言う。
「後方支援として、ヴァイゼルを隊長とした、膨大な魔力を持つメルナと、魔法を使えるヴェルティカ、魔法戦闘を得意とするフィラミウスの魔法部隊を作る」
「わかったのじゃ」
そこで、マージが言う。
「メルナは、まだ魔法の精度が甘い。魔力の上手い使い方を指導しておくれ」
「わかりました。プレディア様」
次に、オーバースを見る。
「オーバースとクルエルとオブティスマは、同じ軍隊だけあって息が合っている。三位一体の攻撃を主とした強襲が向いている」
「わかった。若い頃から苦楽を共にしてきた仲間だ、そいつは任せてくれ」
「ああ。かなり戦術の幅が広がる」
そして次に、フィリウスに言う。
「フィリウスは、俺が戦闘中の司令塔として機能してほしい。ビルスタークとアランが、その護衛をつかさどってくれ」
「了解だ」
「そうしよう」
「わかった」
次にレイ、ビスト、サムス、ジロンに言う。
「四人は、盾を装備している。オブティスマ隊が前線を押し上げたら、そこで前線を維持する役割だ」
「「「「は!」」」」
最後に風来燕の、ボルト、ベントゥラ、ガロロに言う。
「魔獣との戦いに長けている三人は、敵の死角から奇襲をかける遊撃隊だ。戦場を攪乱して、敵の陣形を崩す部隊になる。三人の魔導鎧には、様々なギミックをセットしてある」
「おうよ。せいぜいかき回してやるぜ」
「うむ。そうじゃな!」
「目くらましは専売特許だぜ」
俺が頷いた。
軽い昼食を取りながらの話し合いだったが、皆は自分らの動きを盤上で確認している。
その時、ヴァイゼルが言う。
「おっ! 光おったのじゃ!」
皆がと、部屋の端っこに置いてある水晶を見た。その水晶は赤く点滅し、小さくブルブル震えている。それはシュトローマン伯爵領に仕掛けた、魔装爆弾が爆発した合図だった。
「来たか……」
「そのようじゃ」
「全員! 高機動魔導装甲着用!」
ザッ! と部屋からでて、皆が装甲の格納庫に飛び込んだ。先に着た者が、後のものを手伝う。
「武装装備!」
各自が武装を取り付けて、次々に外へと飛び出して行く。全員が揃ったところで、俺が全員に言った。
「各自! 自分達の動きを!」
「「「「了解」」」」
「飛翔!」
皆が空に舞い上がり、隊列を組んだ。
「最高速!」
ドン!
高機動魔装大隊が、急加速してシュトローマン伯爵領に飛ぶ。森と草原と次々に飛ばし、あっというまにシュトローマン伯爵領が見えて来た。
「煙が上がっているな」
「ひっかかってくれたのじゃ」
アイドナがガイドマーカーを提示し、南側に着陸している飛行艇を光らせる。
《通信と逃げ場を防ぎます。あれの破壊を優先してください》
俺は、すぐに全員に告げる。
「南門前に敵の飛翔艇がある。先にあれを破壊する」
全員が飛行経路をそちらに映し、すぐに次の指示を出す。
「俺とフロスト、オーバース、クルエル、オブティスマが穴を開ける! レイたち四人と風来燕が穴に、魔導爆雷を放り込んでいけ」
「「「「おう」」」」
俺のガイドマーカーに、コクピットの位置が指定されていた。
「フロスト! 続け!」
「了!」
《金剛不壊、剛龍降臨》
俺が金色に光ったそのままの勢いで、コクピットのガラスを破壊して中に飛び込んだ。
ガガーーーン!
後ろからフロストも入ってきて、俺がフロストに言う。
「機器をすべて破壊!」
「了!」
ガズン! ブシャア! ズバァ!
二人で、そこにある機械を片っ端から壊して行く。
「離脱!」
ドシュ!
俺達が外に飛び出すと、入れ違いにレイたちがそこに爆雷を投入した。オーバースと風来燕達も連携で爆雷を放り込み、俺が全員に指示を出す。
「上昇! 距離を取れ!」
ドシュゥゥゥゥ!
あっという間だった。俺達が高度を取った時、下にある飛空艇が大爆発を起こす
ズッズゥゥゥゥン!
すぐにアイドナが、市内にいるパワードスーツと、キメラ・マキナの位置を割り出した。
《パワードスーツ七、キメラ・マキナ二。排除します》
俺の視界に、ガイドマーカーで敵の位置が記された。
「敵! 爆発音を聞きつけて、シュトローマン邸より南に移動中。各自殲滅行動に移れ」
次々に、都市に向かって降下していった。
「フロスト。仇討ちだ。好きに暴れろ」
「了」
ドン!
二人は一気に、二体のキメラ・マキナに向かって突撃した。他の仲間達は、阿吽の呼吸で俺達がその二体を相手にすると分っている。
「最高速」
シュオオオオオ! ドン! ドン!
俺とフロストが剣を前にして突撃し、キメラ・マキナを一瞬で同時に四散させる。恐らく、自分達に何が起きたのかも分からないだろう。
ドン! バシュ! ドシュ!
あっという間にエルフパワードスーツが、オーバースと風来燕達から、まるでバターでも斬るように、超高周波ソードに斬られて行った。
《一つだけ色違いがいます。捕えてください》
俺はそれをすぐに、全員に告げる。
「金色に光る一体は鹵獲」
ボルトが答えた。
「おうよ!」
風来燕の三人が、一気に金色の機体を取り囲んだ。
ズガガガガガ! そいつが機関銃を撃ってくるが、新装魔導装甲の高周波シールドが弾いている。
バフッ!
ミスリルのワイヤーで織った細いワイヤーの網が、その金のパワードスーツを覆い、魔導の作用で一気に網が縮まり身動きを止めた。暴れようとしているが、結界が貼られているので、銃を撃つ事も出来ないでいる。
「魔獣が来る前に、コイツを拾って離脱」
「「「「了解!」」」」
ヴァイゼルが、金のパワードスーツに浮遊魔法をかけた。浮かんだそれを、レイ、ビスト、サムス、ジロンが四方向を持って上昇する。
《敵反応ゼロ。離脱してください》
「作戦終了! 全員離脱!」
ドン!
飛び去る時に、俺が皆に言う。
「あとは、魔獣のせいにする」
そして皆が笑った。ボルトが言う。
「そんな魔獣がいたら、びっくりするだろうな」
フロストが、興奮冷めやらぬ様子で言った。
「あんなに苦労した敵が、まるでネズミのように容易く」
俺が答える。
「ああ。敵は、この俺達の技術を知らない。文明の発達していない人類しかいないと思っているからな、まさかこんな事になるとは思わないだろう」
そこで、オーバースが言う。
「それにしても、鮮やか過ぎたかもしれんな」
「リスクが無くていい。この戦果は、大きな一歩だ。あとは、そこの金色に沢山聞きたい事がある」
「だな。特別に金色だからな、何か知っているかもしれん」
「一度、例の場所に連れていく。領地に連れて行って、万が一通信されたら困るからな」
それを聞いて、アーンが言う。
「計画通りだっぺ。あの、牢屋を作って正解だっぺな」
「ああ。使える物は何でも使えだ」
そして俺達は、小さなダンジョンを改装した、山中の牢獄へと到着したのだった。




