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バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

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第三百三十四話 超文明に対抗するための大戦略会議

 都市防衛の機能を強化するとともに、敵に対応できる兵器の開発を急いだ。ウィルリッヒのいう通り、国民に目標までの道しるべを示したら、皆が同じ方向を向いて協力し合うようになる。市民から選出された兵士候補は、農業や生産の仕事をしつつ、交代制で軍事訓練に参加するようになった。また、大工や鍛冶や仕立て屋は、武器や防具の生産のために工場で働くようになる。


 そして俺達は、これからの作戦について話し合う事にした。


 俺が言う。


「流石はウィルリッヒだ。すべての市民が、敵を倒すという目的に向かって動き出している」


「それは、コハク陛下が、あの兵器の凄さを見せたからさ」


 そこで俺が言った。


「俺の事は、コハクでいい。敬称も何もいらない」


「では、コハク。これからどうなるかな?」


 俺が、集まった主要メンバーに話を始める。


「まずは、これまでの状況から考える」


 皆が集中して俺を見た。


「壊滅したのは、恐らく全ての国の首都になる。あの光に包まれて、逃げられなかった奴らは、死んだわけでは無いかもしれない。恐らくは、何通りかの可能性が考えられる」


 オーバースが言う。


「死んだわけでは無いのか?」


「死んだ……かもしれない。だが敵の仕組みの構造上、どこかに飛ばされた可能性が高い」


「どこかに飛ばされた?」


「そうだ。以前、王都やパルダーシュに、突然魔獣達が現れた事があっただろう?」


「ああ」


「魔獣を何らかの技術で、突然送り付ける事が出来るという事は、その反対もあるという事」


「確かにな」


「急にあの光が起きた都市の人間は、どこかに送られた可能性がある」


 すると、プルシオスが聞く。


「どこにだろうね?」


 俺は、アイドナが推測していた場所を言う。


「空の上だ。空の上に浮かぶ、星の代わりの場所に送られた可能性がある」


「……養分としてかな……」


「そういう事かもしれない。もしくは、キメラ・マキナと呼ばれる戦闘用の人間を作る為かもしれない。そのエネルギーとして、人間が使用された可能性がある」


「……」


 皆が嫌な顔をする。だが、アイドナはその確率が高いと言っていた。


「そしてこれまでの、敵の攻め方から推測するこれからのことだ」


 全員が頷く。


「まず最初に、パルダーシュ辺境伯領が襲われた。突然、魔獣が現れて、一夜のうちに都市を滅ぼした。それは皆が知っている事だ」


 皆が頷く。さらに、黒曜のヴェリタスで人が変わったラングバイに聞く。


「ラングバイに聞きたい。あの敵が来た時、どんな状況だった?」


 初めて、驚くべき事実を知る事となる。


「都市が、魔獣に囲まれました。そこに未知の敵と、機動鎧を着た者達が現れました。自分達であれば、あの魔獣を追い払う事が出来ると。さもなくば、ただ滅びるしかないだろうと」


《推測の通りです》


 ああ。


「それで、あの軍門に下ったという事で良いんだな?」


「はい。申し訳ありません。あのときは、ああするしかなかった」


「だけど、結局捨てられてしまったと」


「はい」


 それを聞いてアイドナが、すべての事に合理的な思考があると俺に伝える。


 俺は、それを皆に言う。


「まず、辺境伯領を壊滅させた。もしくは、懐柔して取り込み破滅させた。その後で、首都を攻め込み国としての機能をマヒさせる。それから、あの光を発動させ、人間を他の場所に送り込んだ可能性がある」


 それを聞いて、ウィルリッヒが言った。


「その状況下でコハクの周辺の人らや、コハクに知恵をもらった僕らが生き残った」


「そう言う事になる」


 するとヴァイゼルが、髭を撫でつけながら言った。


「いやはや、ウィルリッヒ殿下の読み通りでしたな」


「ここまでのことは、想定してはいないさ」


「じゃが、コハクがその中心になると見抜いていた」


「まあ、リンデンブルグにも、いろいろな書物くらいはある。予言書とまではいかなくても、それが想像されるような文献はあったからね。そこにコハクの出現は、正直驚いたよ」


 ウィルリッヒの言葉に、マージが笑う。


「はっはっは! あっぱれだねえ! あたしと全く同じ答えに辿り着く人間が、いるとはねえ。それが、まだこんな若造とはまた驚きさね。それに、預言書では無く、あの文明があらかじめ予測していた物が、書物になって預言書として残ったというのが、今の状況から考えて正しい捉え方だろうね」


「大賢者様にそう言われると、こそばゆいですね」


「謙遜するでないわ」


「いやいや。そんな大したものではないですよ」


 俺が、ウィルリッヒに聞く。


「なぜ、リンデンブルグは首都じゃなく、神殿都市にシステムがあったのか」


「いや、昔はね神殿都市が帝都だったんだよ。だけど、あんなダンジョンがあったんじゃ危ないからね、何百年か前に遷都して、今の場所になった」


「そう言う事か……」


 だんだんと、点と点が繋がって来た。


「とにかく、リンデンブルグはコハクのおかげで、多くの民が逃げる事が出来た」


「敵は、人間の社会構造を良く知っている事も分かった」


「そのようだね」


「辺境領のような大都市を壊し、国の機能を破壊してから首都に攻め込むのは、非常に合理的だからな。一応は人間を警戒しての行動だと分るし、対応できない国は、あっという間に崩壊していった事だろう。ゴルドス国もな」


 皆が頷く。


「それに、少しだけ残った星の人の技術が、結界石にも見て取れる。あれは魔獣除けとして使われるが、いま光っている首都の周りにも魔獣は寄り付かなくなっている。恐らくは似たような構造が働いていて、それが今も利用されていると考えていい」


 その言葉を受けて、マージが言った。


「凄いねコハク。良くそこまでたどり着いたものさね」


「すべてが偶然じゃないからな。なるべくしてなるものだ」


「まあ……そうだね」


 そして俺は、ポケットからあの端末を出した。


「これが無いと、金盤を正確に稼働させることが難しい。そして金盤はかなり重要な位置を締めている。だから、今ごろ敵は躍起になって探しているだろう」


 皆は静まり返った。これが、特に重要なものであると知っているからだ。


「辺境伯領、王都を潰したあと、本来は侵略者とやらと戦う予定だったのだろうが金盤が無いとなれば、敵は必死にそれを探し続けるはずだ。となれば、次に探すのはまだ滅びてない伯爵領の可能性が高い」


 それを聞いて、ウィルリッヒが目を見開いて言う。


「まさか……それを想定して、あのシュトローマン伯爵領の要塞を分解して持って来たのかい?」


「そうだ」


「……まったく、鳥肌が立つね。コハクは」


 いや……俺と言うより、アイドナの未来予測演算の結果なのだが。


「敵は、じきにシュトローマン領にやって来るだろう。ここに国を作っているとは思わないだろうから、男爵領や準男爵領は後回しになると想定される」


「なるほど……」


 ここまで何も考えず発言をした事が無かったが、王になった事で自由に全て話す事が出来るようになった。貴族の上下関係も王族のしがらみも無い今なら、アイドナが推測した全てを打ち明けてもいい。


「だが、このままここに引き籠ってもいられない。敵はいずれ、時間をかけても辿り着いて来るだろう。それに対して、俺達はここで待つような事はしない」


 すると、シュトローマンが手を上げた。


「もしかすると、我が領地だった場所に、敵が来ると言う事でしょうか」


「そう言う事になる」


 それを聞いて、オーバースが言った。


「分って来たぞ」


 クルエルもオブティスマも頷いた。


「そうか……」

「なるほど」


 そして、俺が言った。


「シュトローマン伯爵の都市に、大量に罠を仕掛ける」


「そう言う事か」


「そして、先発隊に情報を持ち帰らせないように、始末しようと考えている」


「始末……」


「だが、まずは、この領地の防衛力を最大限に高めなければならない」


 皆も俺が考えている事に、納得しているようだった。


「こちらから攻撃を仕掛けると?」


「俺達が力を合わせて、あちこちで大型魔獣を捕獲しシュトローマン伯爵領に放つ。既に小型魔獣の巣になっていたから、あそこに魔獣の居住区を作り出す」


 皆がざわついた。そして、プルシオスが言う。


「魔獣を……味方にするという事かい?」


「言う事は効かんだろうから、罠と共に奴らに打撃を与える。後は、高機動部隊の設立を考えている」


「高機動部隊?」


「ああ。敵地に高速で現れて殲滅する部隊だ」


 皆が唖然とした。


 オーバースが聞いて来る。


「そんな事が可能なのか?」


 既にあの要塞で回収してきた技術に、それらが大量に残っていた。既に、俺が解析を終わらせている。それをもって、俺達の最新装備を作る事になる」


「最新装備……」


「実際に現物を見た方が早いだろうが、俺はこれからそれの開発に入る。それまでに、攻撃部隊と防衛部隊の強化を急ぐ必要がある」


「なるほど。わかった」


 そして俺は、ワイアンヌと一緒に書き記した、説明図の羊皮紙をテーブルに広げて行った。そこには、新兵器の詳細が記されていて、それを見た皆は驚愕の表情を浮かべた。


 ウィルリッヒが聞いて来る。


「コハク。これは……こんなことが、可能なのかい?」


 俺は頷いた。


「可能だ。これが完成した暁には、俺達にも勝算が出て来るだろう」


「はは……凄いね。想像もつかないよ」


「俺とアーン、メルナ、マージ、ワイアンヌが集中して兵器を開発する間、国の事、民の事、軍隊の事、建設の事を全てみんなにお願いしたいんだ。その役割も、これから全て発表する」


 皆が更に引き締まった顔をした。


 俺は、皆にその目的と役割を全て伝え、全員がそれを了承したのだった。


「では! 人類の未来のために!」


「「「「「人類の未来のために!!」」」」」


 ここに、俺達の反撃の産声が生まれた。自由を絶対に奪われるわけにはいかない。俺は生存のために、最大限に能力を発揮して、戦いの準備を始めるのだった。 

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