表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

327/338

第三百二十六話 山脈を越えて

 夜が明け、雨は小雨になりつつあった。食べて眠った事で、市民達の体力も少しは回復する。


「痕跡を消そう。奴らの目は、ここにまで届くかもしれん」


「分かった。手早くやろう。油断はできない」


 痕跡を無くすために、大きな天幕の建物を崩して茂みなどに隠していく。だが、地面は深くぬかるみ、歩くたびに重い泥が足に纏わりつくようだった。


「大型魔獣の巣の、おかげで助かった」


 本来なら危険なはずの、大型の魔獣の巣は、多くの市民の体力を回復させることになった。


 ウィルリッヒがそう言うと、フロストが答える。


「本来は、こんなに大勢が山に入り込むことはないのでしょうけどね」


「あの光は、魔獣除けなのかな? 結界石みたいな」


 それに俺が、答える。


「何らかの影響はある。魔獣が消えた理由が見つからない」


「だと、この大地の多くの場所が結界石無しでも、魔獣が来ないという事になる」


「そうなるな」


 皆は手を動かしながら、会話を続けていた。


「そうなれば、多くのものが大きく変化する。特に、流通が盛んになるだろう」


「あの光が、消えなければだが」


「なるほど。消える事があるのかな」


「生体動力というコアが、数千年も動いてたことからも、それは無いかもしれない」


「敵だけじゃなく、我々、人にとっても良い事だ」


 それを聞いていた、ボルトが言った。


「ですがね、殿下。そうなると、冒険者ギルドの仕事が大幅になくなります」


「それもそうか。だけど、そうなったらなったで、違う仕事ができるさ」


「ですかね?」


「まずは平和が一番さ」


 そこに出発の準備ができたと、騎士から報告が入る。すぐに歩きだすが、足場が滑りやすく、騎士達も足を取られて転ぶ場面が出てきた。


 ボルトが言う。


「冒険者とは違って、騎士は、こんな山道は慣れていないからな」


「仕方あるまい」


「それにしても、ゴーレムは凄いな。全く滑る事も無く、しっかりと進んでいる」


「制御されているんだ」


「なるほど……」


《足にくさびがあり、高性能のバランサーのおかげで、瞬時に足場を判断しています》


 すると先から、ゴーっという音が聞こえてきた。


 ベントゥラが言う。


「やはり、増水して沢の流れが早くなってるんだ」


 俺達が到着すると、皆が止まっていた。谷の水は茶色く濁り、木々の残骸を押し流す暴力的な勢いだ。


「通れないね」


 ウィルリッヒが言うが、俺が首を振る。


「いや。時間がかかるがやり方はある」


「そうかい?」


 アーンとドワーフらを呼んで、俺が説明をした。


「わかったっぺ!」


 ワイアンヌから、鉄のワイヤーの束を受け取って、その端をオーバースに持ってもらった。


 濁流の轟音が世界を支配する中、俺は静かにワイヤーの端を握り締める。


《龍翔飛脚》


 空気を切り裂くかのように、一瞬で対岸へ跳躍した。着地と同時に、泥が爆発するように舞い上がる


「そちらを大木に絡めて、大勢で押さえてくれ!」


「わかった!」


 三将軍や、風来燕、レイたちがワイヤーを押さえた。


 俺も、木にワイヤーをかけてぐるりと回り込み抑える。


「アーン! 巨大鎧で、こちらに伝って来てくれ!」


「わかったっぺ!」


 アーンがワイヤーを押さえて、沢に降りていく。濁流に晒されながらも、鉄のワイヤーを伝って、無事にこちら岸に辿り着いた。


「そっちを、何本かの大木に渡して括り付けてくれ!」


 こちらでもアーンが、ワイヤーを括りつけ、電線のようにワイヤーをはった。


「いかだを四つ足ゴーレムに渡させる。市民を少しずつ乗せて、こちらに送ってくれ!」


 レイたちが四つ足ドローンにカヌーを固定し、ワイヤーを伝って渡し始めた。こちらでは重機ロボットのアーンが支えて、向こう岸ではメルナの重機ロボットが支えている。これは、瞬時にアイドナが俺に指示を出した事だった。そして、全く危険な感じも無く、全員が渡りきる事に成功する。


「渡りきった……」


「ああ。ゴーレムはうまく使えばこういう事が出来る」


「凄いものだ」


 ウィルリッヒが、興味深々にゴーレムを見ている。


「産業に使えば、もっと発展しそうだね」


「そうやって使っていたが、緊急で戦闘用にしたんだ」


「あ、やっぱりそうか。コハクも目の付けどころがいいね」


 俺達が山を進んでいくと、岩肌がむき出しになっているところに出る。森が切れており、上空からは目視で確認できるだろう。万が一偵察機が来てしまえば、簡単に見つかる。


「迂回するか?」


 オーバースが聞いて来る。


「万が一がある。そうするべきだろう」


 時間はかかるが、敵に見つかる可能性のある行動は避けたかった。俺達は、更に時間のかかる森を迂回する事にする。山を回り込むには、もう一日ほど多くの時間がかかるだろう。


「険しいな」


「この山を越えれば、リンセコートの山に入るだろう。もう少しの辛抱だ」


 俺達はただ黙々と前に進んで、冒険者達が木の実などを集めて市民に配った。山には食べものが多く、そしてベントゥラがクンクンと鼻を鳴らす。


「おっ、あったあった!」


 キノコを採って見せる。


「これは、食える奴だ。そして、体が暖まるぜ。手分けしてさがそう」


 皆がそれを見てキノコを探すと、カゴ数個分にもなった。


「またスープを作ろう」


 魔導の鍋を使い、キノコのスープを作って市民達に配る。すると、市民が喜んでくれた。


「なんか。ポカポカする」

「本当じゃ、元気が出る」

「あったかい!」


 冒険者の知恵だった。休みながらも、また丸一日が過ぎた頃、ようやく俺達の裏山が見えて来る。


「あそこを超えたら、リンセコートだ。ようやく見えて来たぞ!」


 俺の言葉に、皆が安堵の表情を浮かべた。


 フィリウスが言う。


「ヴェルティカは無事だろうか?」


「急ごう」


 そして俺達が山を下りた時、そこに魔獣が現れた。


「クリムボアだ!」


「つかまえろ!」


 今までいなかった魔獣が、突然現れた。


《ここは、光の影響の範囲外のようです》


 なるほどな。どうやら、ここまでは影響が届かないという事か。


《立地的に、どちらからも遠いからかと》


 中間地点と言う事か……。


《魔獣に守られるという、不思議な現象になりました》


 そうだな。


 そして俺達は、リンセコート領の裏山へと到着する。皆が疲弊しきっているが、誰一人かける事無くここまで来た。リンセコートの山を登り始めてしばらくすると、しばらく見た事の無かったものを見た。


 ベントゥラが俺に、そっと耳打ちをする。


「コハク……あれ。皆が騒ぐといけねえからな。そっと見ろ」


 俺が、ベントゥラから言われてそちらに目を向けると、エーテル・ドラコニアと呼ばれる魔獣がいた。それは俺達をじっと見つめるように、こちらを見ている。


「まるで、見守られてるみてえだな」


「そうかもしれないな」


 そして俺達は再び、リンセコートに向けて歩き続けるのだった。そしてようやく、リンセコートの風景が見渡せる丘に到着したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ