第三百十六話 システムの核であるエルフを捕獲する
要塞から飛んできたフライングボードのパワードスーツは、上空に待機し全体の状況を見渡していた。次にどんな攻撃が来るか分からないので、俺は肩の魔導砲の狙いを定めている。
俺が鎧の面を開けて、大声で叫んでみる。
「勝敗は決した! 大人しく降りて来い! お前の目的は知っている!」
《判断をつけかねているのでしょう》
そいつは沈黙したまま、上空に留まっていた。
ブーン! とフィリウスの操る飛行ドローンが飛んできて、パワードスーツの近くにホバリングした。パワードスーツが、チラリとをそちらを見る。
「お前達の兵器は、鹵獲して、こちらでも使う事ができている! キメラ・マキナは行動不能にした! このままでは、お前の目的は達成できない!」
俺の話が終わると、そいつはゆっくりと降りた。銃を構えたままだが、恐らくは要塞の中で俺達の戦いを見ていただろう。俺達の鎧が銃で貫通しない事は、理解しているはずだ。そいつが、女のような声で話した。
「貴様は何者だ?」
「隣国の男爵だ。縁あって、この国に助太刀に来た」
「養分風情が、なぜこんな事をしている?」
「お前達とは、散々戦ったからな。もう、どのくらいの力があるのかは知っている」
「……」
《情報を整理しているのでしょう》
そのようだ。
《こちらから、知っている情報を伝えましょう》
「お前は、システムの鍵なのだろう?」
「なぜ……それを?」
「侵略者から守るために、システムを稼働させに来た。人々が守ってきた、地下システム。違うか?」
「……」
「だが、俺達は、それを阻止をするつもりはない」
「なら、何故抵抗する?」
「都市を放棄する、人々を逃がすだけだ。システムを稼働すれば人間が全滅する」
「家畜など、死んだところでどうという事はない」
「お前達がどうでも良くても、俺達は生きる権利がある」
「権利など、超越者は認めておらぬ」
「俺が認めてる」
「……」
《最終日の事も伝えましょう》
「あと、二日ある。それまでには間に合わせる」
「貴様らにその権利はない」
「お前達にもな」
「……」
埒があかない。
《捕えますか》
そうしよう。
《身体強化、龍翔飛脚、瞬発龍撃》
すると、目の前のパワードスーツが言った。
「貴様の体温上昇を確認した。それは、魔力と言うものだろう?」
《どうやら、パワードスーツにも、こちらの同じサーモグラフィ機能があるようです》
次の瞬間、改造エルフのパワードスーツから、ブワッと光る粒子がまき散らされた。
《さっき見ました。範囲系の攻撃予測粒子かもしれません》
俺は、そのまま相手に伝える。
「さっき、キメラ・マキナが使っていたぞ。それは無駄だ」
だがそいつは黙ったまま、動かずに言った。
「囲もうともも無駄だ」
既に風来燕の、レイたち四人、メルナとアーンが周りを囲んでいた。
「それは、どうかな?」
俺が魔導砲を下げ、背中から爆裂斧を掴む。
「あながち、バカでは……ないか……」
ボッ! 俺が急接近したが、立っているパワードスーツには爆裂斧を振らず、数メートル斜め後方の空間に向けて振った。
ガッ! きぃぃぃぃ!
「ぐぅ!」
ズドン! ゴロゴロ! 改造エルフのパワードスーツがくの字に曲がって転がった。すぐに追撃して、高周波ブレードをかまえ、倒れたパワードスーツの腹の上に足を落とす。
ズン! ガッガガ! パワードスーツが火花を散らした。
「な、なぜわかった!」
俺の視界には、エックス線透過の機能があり、更にサーモグラフでの映像が映し出される。コイツは、あの光る粒子を撒いたが、そこに自分のホログラフを投影、ステルス機能を発動させて後方に下がっていたのだ。俺にはそれは全くの無意味、全ての行動を見抜けていた。
「俺には通用しないんだ」
「……そうか……」
「なんだ?」
「キメラ・マキナが破れた理由が分かった。既に、我々は研究されていたのだな」
《勘違いしているようです。これは、あなただけの能力》
「養分と言った人間に、負けた気分はどうだ?」
「なんとも思わん。システムを起動せねば侵略者が来る。お前達も終わるのだ。無駄な事をしているのはお前のほうだ」
「無駄じゃない。侵略者を防いだところで、大陸中に降りたお前達の軍勢が攻めて来る。システムを稼働させて大陸の侵略者を防いだら、またコロニーから降りて来るのだろう?」
「……その知能……どういうことだ? 原始人が……」
「お前らのAIより優秀だというだけだ」
「……」
メルナが来たが、俺はひとまず闇魔法を待たせる。
「お前を使って、システムを起動させればどうなるか知っているか?」
「知らない。私は、あれを起動させるためだけにいる」
「そうか。俺達は、超越者の羅針盤を持っている」
「……まさか、隣の国は失敗したのか?」
「いや。システムは起動した」
「なら……ここが最後だな……」
「その通りだ」
「私を使って早く起動させろ」
「まずは、避難だ」
「いずれにせよ。仲間が、大挙してやって来るのだぞ? そうすれば、養分共の自由など無くなる」
「それはどうかな?」
「無駄だ」
そこで俺は、メルナに言う。
「眠らせろ」
「うん」
闇魔法でストンと落ちた。俺が直ぐに、パワードスーツのパネルに触れて、兜の部分を外す。
プシュッ!
「ん?」
「えっ?」
そこから出てきた顔は、エクバドル王国で会った、あの改造エルフと全く同じだった。
「同じだ」
「本当だ」
《これは、クローンである可能性が高いです》
クローン?
《すべて同じ個体である可能性です》
作られたエルフか。サイバネティック・ヒューマンか?
《生体反応はありますので、生物ではあります。ですがサイバネティック・ヒューマンではありません。ただ、骨格と皮膚、髪質、目の色と顔の位置。全て一致しています》
アイドナが前に見た、改造エルフの映像を映し出し、目の前のエルフとマッチさせる。
《99.9% 同一個体と言っても良いでしょう》
どうやら、意図して作られたようだな。
《これが大陸にばら撒かれたのです》
全て、管理されているという事か……。
そしてヘルシャフトとアンヘルを、四つ足のドローンに乗せた仲間達が集まって来た。
「抑えたようだな、コハク」
「ああ。まずは、神殿都市に行って説明をせねばならん」
「わかった。皆! 怪我人を担いで、都市に向かうぞ」
意識を失った奴らもいるようで、それぞれが肩を貸して歩いている。
「ワイアンヌ! 治癒薬を!」
だがオーバースが手で制する。
「いや、そこまで大怪我した者はいない。それより、全てあの都市で使うべきだろう」
「わかった」
そうして俺達は、全ての怪我人を連れて、神殿都市の門をたたくのだった。




