表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/338

第三百十五話 サイバネティック・ヒューマンとのバトル、再び

 煙を上げる要塞の後ろに俺達が隠れていると、銃声が聞こえて来る。


《威嚇です。逃げるのを防ぐ為でしょう》


 俺は、それを皆に告げた。


「威嚇だ。俺達が逃げないように」


 声に皆が頷く。


 俺の視界に、サーモグラフの状態で敵影が見えてくる。


《六体。パワードスーツ・四、キメラ・マキナ・二。改造エルフが見当たりません》


 パラパラと、敵の位置が記される。


 バシュッ。バシュッ。ドン! ドドン!


《榴弾による攻撃です》


「フィリウス!」


「ああ」


 フィリウスが飛行ドローンを飛ばし、敵の上空からポロポロと筒をばら撒いて行く。落ちた順から、次々に煙がまき散らされ視界を奪っていった。


「よし。信号弾を上げるとともに、こちらからも攻撃を開始する」


 皆が頷く。


「ワイアンヌ。次の信号弾!」


「はい」


 シピューーっと、緑色の明かりが撃ちあがる。それと同時に、敵の攻撃が俺達のいる場所に集中した。だが、煙で視界を閉ざしているため、あてずっぽうの攻撃だった。


《今の合図で、オーバース達が戻ります》


 これで、敵を逃がさない。


「出るぞ!」


 完全に青備えの鎧を密封し、俺達は煙の漂う戦場へと飛び出していく。風来燕が左舷に回っていくと、高周波の盾を持ったレイたちが中央で止まり構える。後ろに、メルナとアーン巨大鎧を待機させた。


 俺は単独で、右に走り始める。完全に敵を囲み、逃げ場所を無くしていく。


 ダダダダダ! カカカカカン!


 どうやら、レイたちの高周波の盾が銃弾を受けたようだ。次の瞬間、風来燕が次の信号弾を上げる。


 ピューン! ただの黄色に光る照明弾だが、敵がそちらに向かったようだ。


《上手く翻弄できています》


 キメラ・マキナの位置を。


 煙の中で、二体のキメラマキナの位置を表示させる。ここまで全てアイドナの演算通りに動いており、敵を確実に追い詰めていく。


《武器の形状を確認》


 あれは、巨大なハサミ? と、円盤か?


 ほとんど体を露出させた下着のような恰好の女。銀色の髪をなびかせて、手の上で円盤を回していた。その円盤が光り出すと、手から離れて飛んでいく。


 その先で、火花が散る。


《ブーメランのような武器です。ボルトとガロロが防いでます》


 ボルトとガロロが必死にそれを防ぎ、フィラミウスが岩を飛ばして軌道を逸らす。


《防戦一方です。円盤の動きが速い、身体強化でギリギリ凌いでます》


 その後方から、ベントゥラが銃を撃った。


 バッバッバッ!


《阻止されました》


 やはり敵の武器に対しては、無効にする機能があるか。


 すると、メルナとアーンがいる方向から、ボウと炎が立ち上る。


 新手か?


《飛行ドローンの火炎攻撃です》


 要塞は死んでなかったか。


《そのようです》


 バグゥン!


 赤と黄色の炎のような髪をしてる、巨大なハサミを持っている男が攻撃していた。地面が割れており、どうやらあのハサミのような武器は、エネルギーを放出して物を裁断するらしかった。風来燕の二人は、ギリギリでそれを避けている。そして、パワードスーツが、榴弾砲で風来燕を追い詰めていく。


《敵の攻撃情報は得ました》


 俺はアームカバーから、合図用の魔導筒を取り出した。


 ピシュゥゥウウ! 甲高い音を立てて、紫色の光が上がる。


《空間歪曲加速》


 ドシュン!


 俺はすぐに、下着のような服装を着た女の側に出る。


「なっ……」

 

 だが、その周りにキラキラとした、光る粒子が浮かんでいた。


 パパパパパッ!


 俺の鎧に光る粒子が触れた途端に、フラッシュのように光輝く。俺が高周波ソードを振るった時には、そこに女の姿は無かった。するとガイドマーカーが光り、未来予測演算が発動する。


《回避》 


 俺がいた所を、あのハサミのような道具から放たれたエネルギーが斬る。


《敵も、策を講じていたようです》


 奇襲が失敗したか。


《ですが、彼らの情報は引きだしました》


 そのとき、ビュ! と突風が吹き、煙幕がサッと流された。これで、全員の位置がはっきりとわかる。メルナとアーンの重機ロボットの位置がはっきりすると、二体のパワードスーツが、突撃していく。


 俺が、援護の為そちらに向かおうとした時、光の円盤が俺の行く手を遮る。


「いかせませんわ」


 俺が振り向くと、下着のような女と、ハサミを持った炎のような男が立っていた。


「キッヒッヒッヒ! なんだなんだ! 青いのがまた出てきた」


「笑ってる場合ではありませんわ。あの、大きいの……マキナ・ユニットではありません?」


「たしかに、アンヘルのいう通りかぁ」


 ガギキィィイ! と、アーンの重機ロボがパワードスーツを跳ね飛ばした。


「パワーがあるわ」


 そう言いながら、アンヘルが何か笛のような物を慣らした。次の瞬間に、飛行ドローンがやってきて、ゴオッ! とアーンの巨大鎧に火炎を撒く。一本の腕が真上に盾を持ち上げ、上に火炎がまき散らされ、炎が粘着していた。


《ナパームのようなものです》


「キッヒッヒッヒ! なんだ、攻撃が読まれてるぜ、アンヘル」


「うるさいですわ! ヘルシャフト! とにかく、コイツを倒しますわ!」


「キッヒッヒッヒ! そうだな。こいつら、防御力はあるが、打撃には弱いようだ。遅いし」


《どうやら、オーバース達との戦いで、こちらの情報を分かっているようです》


 そのようだ。攻撃を、避けるしかない。


 光る円盤と、巨大ハサミの連携攻撃が始まった。素粒子AIが未来予測をし、攻撃の全ての軌道と次の攻撃までを俺の視界に映し出して来る。


 シュッ! シュッ! シュッ!


 どの方向からの攻撃も俺には当たらずに、敵の表情がみるみる変わって来る。


「な、なんだ? 一つもあたらねえ!」


「こいつは、今までの奴らと違うようだわ。避けられるはずないのに」


「アンヘル。コイツの足を止めろ」


「わかったわ」


 すると、アンヘルと呼ばれた下着女の、手の周りに五枚ずつの光の円盤が出て来る。両手で合計十枚、それが一斉に俺に向かって飛んできた。超高速で四方から俺に攻撃をし始め、逃げ場所が全て絶たれたように見える。


《未来予測にプラス。無意識回避、超感覚予測、時間知覚最大拡張》


 すると、その寸分の隙も無いような攻撃に、逃げ場所が見えて来る。


「な、なんだぁ! こいつ! 何人にも増えたぞぉぉぉ!」


「おかしいわ!」


 俺が、増えた訳じゃない。高速移動と停止を繰り返して、アンヘルの円盤攻撃をかく乱しているのだ。残像が見えるために、何人も見えているに過ぎない。


「止めろおぉぉ!」


「やってますわ!」


《魔導砲を射出。爆裂斧を投擲し、アンヘルの足を止め、ヘルシャフトを高周波ソード》


 全ての手順を、アイドナが計画し、すぐさま俺が実行した。


 ドン!

 

 ドワーフ製の魔導砲がアンヘルに飛んだと同時に、爆裂斧を外して投げた。その着弾を確認する前に、空間歪曲加速でヘルシャフトに肉薄する。


「うおっ!」


 バシュン! 両腕でハサミを握る腕を斬り落とした。


「ぎゃあ!」


 ガキン!


「きゃぁ!」


 魔導砲を避けたアンヘルが着地したところに、爆裂斧が飛んで弾き飛ばした。それを耳にしながらも、高周波ソードをヘルシャフトの腹に突きさす。


「ぐえぇぇぇ! おい! 助けろ!」


 パワードスーツに指示を出したらしいが、既に二機のパワードスーツは風来燕達に仕留められていた。メルナとアーンを襲っていたパワードスーツも、ビルスタークとアラン、レイたちに破壊されている。


「コハク!」


 そこに、オーバース達の隊がやってきた。


「オーバース! クルエル! オブティスマ! これを押さえていてくれ!」


「「「おう!」」」


 そして俺は、ダッシュで逃げようとしていた、アンヘルに空間歪曲加速で追いつく。


 バシュッ! 


 両足を切ると、ゴロゴロと地面に転がった。


「きゃぁぁぁぁ!」


 ドン! アンヘルの背中に足を降ろして、頭の先に剣を降ろす。


「逃げるな」


「くっ!」


《要塞に熱感知。何かが出てきます》


「メルナ!」


 ドスドスとメルナの重機ロボが来る。


「鎧をパージして、これに闇魔法を」


「うん!」


 重機ロボから出てきたメルナが、アンヘルに闇魔法をかける。


 ストン! と眠りに落ちた。


「オーバース達のところに行って、もう一体も頼む」


「うん」


 俺は、要塞から飛んできたフライングボードを見た。


《改造エルフと同じ形状です》


 鍵だ。


《はい》


 そして俺は高周波ソードを構え、そのフライングボードを迎えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ