表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バグの遺伝子 ~AIの奴隷だった俺は異世界で辺境伯令嬢に買われ、AIチートを駆使して覇王になる~  作者: 緑豆空
第二章 男爵編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

315/338

第三百十四話 神殿都市の中でリンデンブルグの三傑と邂逅

 緊迫した状況、仲間達が戦っている。俺達は、オーバースからの合図を待っていた。


 パシュゥゥゥ! パン!


 青い輝きが空に上がる。


「行くぞ!」


 二機の大型重機ロボットが、ビルスタークとアランを乗せて下っていく。四つ足ドローンにまたがり、レイたち四人がそれについて行った。


「今だ!」


 俺とフィリウス、ワイアンヌ、風来燕の四人がフライングボードに乗り、都市に向かって降りていく。


「市壁の上に!」


 俺達を乗せたフライングボードが、市壁の上に差し掛かり、そこに飛び降りた。すぐにワイアンヌが、鉄のワイヤーを取り出し、壁の縁にかけて垂れ下げる。


「登ってこい!」


 市壁の下に、四機の四つ足のドローンが待機していた。鉄のワイヤーを、ドローンに巻き付けて伝い、レイたちが市壁を駆けあがってくる。重機ロボットは、壁にズボズボと足を突っ込んで登って来た。


《あの二人は、すっかり使いこなしているようです》


 そのようだ。おかげで、格段に機動力が上がったな。


 全員が揃ったところで、神殿都市の内部を見渡す。


「魔導士隊が、南側に集中しているな。向こう側の壁が光っている、あれは結界だ」


「敵の進入を防いでいたのかもな」


「降りるぞ」


 俺達はワイヤーを引き上げ、反対側にワイヤーを垂らして降りていく。都市には人間がいるようだが、それには構わずに神殿都市を走った。


「ウィルリッヒが、どこかにいるはずだ」


 マージが言う。


「ヴァイゼルも、市壁の南側にいるはずさね」


「よし」


 俺達は、高速で南側に向けて移動した。先に進むにつれ、都市の南側の建物がほとんど破損しており、瓦礫があちこちに積み上げられている。あちこちに鎧を着た人間や、ローブを着た人間が倒れている。


「侵入されたか?」


「エクバドル王都と同じだな、空飛ぶ奴から焼かれたんだ」


 散り散りになった騎士の、最後尾が見えてきた。


 ガシュンガシュン! とメルナとアーンの、重機ロボットの音が鳴る。


「て、敵だ! 後方から敵!」

「陣形を! 整えろ!!」


 俺が両手を上げると、仲間達が同じように手を上げる。


「敵ではない! 我は、エクバドル国のコハク・リンセコートである!」


「なっ!」


「今、外で戦っているのは! エクバドルの王宮から援軍に来た部隊だ!」


 俺達が止まると、騎士の中から一人が出て来る。


「そのような、鉄の騎士や、鉄の四つ足は! 敵の物だ!」


「これは! 敵から奪ったものだ! ウィルリッヒ・フォン・リンデンブルグ殿下にお目通りを願う!」


「「「「「……」」」」」


 かなり混乱しているようで、誰も身動きを取る事が出来ないでいる。


「一刻を争う! 我が国の騎士が戦っている!!」


 すると、ようやく一人の騎士が言う。


「しばしまて!」


 すぐに駆けて行ったが、ここから正門までは距離があるだろう。早くしなければ、被害が出てしまう。


「早く……」


 フィリウスがこぶしを握り、今にも飛び出しそうだった。


「ワイアンヌ! 外の部隊に、退却の合図を上げろ!」


 キュゥゥゥゥと、魔道具から光が上がりそれが空中で赤色に輝く。それに騎士達がざわめいているが、その中から先ほど走って行った騎士が戻ってきた。


「来てください!」


 その騎士について、更に先に進む。


「壁が、ボロボロだな」


 ボルトが言う通り、市壁のあちこちに穴が開き、裂け目が出来ているところがある。


「あそこから攻撃されたか?」


 更に多くの騎士と、魔導士達が集まっているところにでた。その中央あたりに、櫓が組まれている。


「櫓の中へ!」


 俺とフィリウスが急ぎ中に入ると、そこにウィルリッヒがいた。兜は脱いでおり、力なく座っている。立ち上がる事が出来ないようで、座ったままこちらを振り向いた。


「まさかね……コハク卿……来てくれるとはね……」


「遅くなった」


「とんでもない……もう、終わりだと思ってたよ」


 青備えは着ているが、頭から血を流しており、深く疲労した顔をしていた。


「大丈夫なのか」


「この鎧……凄いよ。あの、銃とやらを防ぐ。だけど、強い打撃はやはり中に来る」


「治癒薬は」


「もう、すっかり使い果たしたよ」


 俺はワイアンヌを呼ぶ。


「治癒薬を」


「はい」


 その瓶の蓋を開けて、ウィルリッヒにかける。音を立てて傷が治り、顔に血色が戻ってきた。


「すまない。もう、3日は寝ていない」


「フロストとヴァイゼルは?」


「何とか、魔導士部隊を使って、進入されては撃退してを繰り返しているが、敵は未だ無傷だ」


「わかった。もう、休んでくれ」


「そ、そう言う訳には、ゴホゴホゴホ!」


「まだ、生きてもらわねば困る事がある」


「……わかったよ」


 俺はその櫓を出て、一気に市壁の裂け目のあたりに来た。するとそこに、ボロボロになった騎士達と、魔導士達が集まっている。


「フロスト・スラ―ベルは居るか!」


 騎士達が振り向いた。騎士達をかきわけていくと、そこに青備えを着たフロストが座り込んでいた。


「フロスト!」


「まさか……来てくれた……のか……コハク卿」


「ワイアンヌ! 治癒薬だ!」


「はい!」


 俺はすぐに、フロストに治癒薬をふりかける。治癒薬は光り輝きながら、体を直していく。


「蘇生魔法をかけてもらう代わりに、結界に集中してもらっている。魔導士達も……もう限界だろう」


「わかった」


 市壁の先に行くと、ヴァイゼルが魔導士達と共に、必死に結界をはっていた。


「ヴァイゼル!」


「……まさか……コハク様ですかな……」


「そうだ」


「どうりで、外からの攻撃が止んだと思いました……わい……。


 バサッ! と、ヴァイゼルが崩れ落ちた。


「大丈夫か!」


 すると、魔導士の一人が言う。


「ヴァイゼルさまはもう、五日も寝ておりません。ほとんど魔力も残ってないのです」


「ワイアンヌ。魔法薬と治癒薬を」


 そしてヴァイゼルにかけてやるが、目を開かない。


「ヴァイゼル!」


 魔導士達が俺の叫びに、騒然となり集中力を研ぎらせた。


「ヴぁ、ヴァイゼルさま!!」


「あ。ああ……皆も、もう結界はるの……止めていいのじゃ……」


「えっ!」


 死んだかと思った。


《心臓は動いてました》


「わしらの役目は……ここまでじゃ……救世主が来たのじゃからな」


「救世主……」


「そう……じゃ……」


 ガクッ!


「魔導士長様!」


「グゴー! グガー!」


「ね、寝てる」


 それを見た魔導士達が、次々へたへたと座り込み始める。俺が、魔導士と騎士達に叫んだ。


「我は! コハク・リンセコート! 皆! よく耐えた! あとは休んでくれ!」


 騎士達も倒れ込む者が出て来て、どうやら精神力で立っていたらしい。


 俺が仲間達に言う。


「仲間達が逃げきれたか分からん。すぐに出る」


「「「「は!」」」」

「「「「おう!」」」」

「「よし!」」


 俺達は、そこを離れ門に行く。


「メルナ! アーン! 門を持ち上げろ!」


「うん」

「わかったっぺ!」


 大型重機ロボットが、門を押し上げた。俺達が、その門を潜り外に出て行く。重機ロボが通過すると、ズズーンという音と共に門が締まる。するとその正面を塞ぐかのように、突入ポッドが鎮座している。


「こんなところに要塞か」


「まったく、邪魔なこった」


「足を上げたままだ。破壊するなら今だ」


「だな」


「メルナ! アーン! 大型高周波ソードで足を一つ切れ!」


 二機の重機ロボットが、大きな高周波ソードをぐるぐると振り回して足を切りつける。


 ガギン! と足が折れると、バランスを崩した要塞がこちらに傾いた。


「鉄杭!」


 次に重機ロボットが、要塞の装甲に向けてパイルバンカーを打ち込む。


 ズボン! ズボン!


「刺さった!」


「火炎!」


 要塞に突っ込まれたパイルバンカーから、魔導の炎を噴射させる。


「鉄杭を抜け!」


 ズボッ! と、抜かれると鉄に穴が空いた。


「魔導砲!」


 その穴に、レイたちが魔導砲を突っこむ。


「全弾撃ち尽くせ!」


 ボン! ボゴン! ボゴン! ボゴン!


 内部爆発の影響で、鉄の装甲がボコボコと歪む。


《音で敵が気づきました。こちらに来ます》


「敵が気づいたぞ! 迎え撃つ!」


 俺達は武器を構え、モウモウと煙を噴き出す要塞の後ろで、敵がやって来るのを待ち構えるのだった。どうやらオーバースの陽動が成功し、俺達の動きに気がついてなかったようだ。奇襲の第一弾は成功し、要塞を完全に足止めする事が出来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ